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神の手のひらの上で踊らされているのだろうか?

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 結婚式が終わった後、ジークヴァルトと一緒に過疎の村を周り、病人の治療をしていた。

 王都や各領地の中心部には医師が沢山いるが、辺境の地の辺境に住んでいる人達はまともな医療など受けられない。
 国中ので村を周るのはなかなか難しいが、転移魔法があればささっと周れる。

 日本でやりたかったけど、この世界でやり始めて、日本よりもこの世界の方がこれを必要としていることがよくわかった。

 行った先で医療以外にも私やジークヴァルトができることはやり、できないことはできる人を呼んでやってもらう。

だが、どこに行っても聖女様ともてはやされてしまうのがちょっと嫌だな。

 今日は土属性の魔法で、土地改良をやってみた。お礼に野菜や果物をもらった。こんな生活も悪くないかもしれないと思い始めている。


 ヴェルミーナから伝書バードが届いた。
アイリーンの父母と元国王夫妻が待ち切れずヴェルミーナの屋敷に来るという。

 会いたい気持ちと姿形が違う私をアイリーンと思えるのかという気持ちが葛藤する。

「会ってみたらいいんじゃないか。思い残した気持ちを伝えるために神はアイリ殿をこの世界に戻したのだろう?」

「うん。それはそうなんだろうけど。なんだか変な気持ちなのよ」

「変な気持ち?」

「私はあの時いろんな気持ちが混じり合っていたの。もちろんいちばんは恨み私を陥れたあの女への恨み、そしてあんな女に引っかかった馬鹿王太子への恨み。まだ死にたくなんかなかったもの。ただ婚約を解消すればいい事じゃない。私はあんな人嫌いだったから、喜んで婚約解消を受け入れたわよ。なのに自分達に非がないように、私を陥れた。権力って馬鹿が持ってはダメなのよね」

「そうだな……」

「処刑されるまですぐだったから、親しい人に全く会わせてもらえず、何も伝えられないままだったのも心残りだったの。私が亡くなった後のことも心配だった。私が心に色んな思いを残して死んだから神が転生させたのか? それとも初めから今のこの状態にするためにあの断罪劇や処刑があったのかしらね」

「神の腹の中は私にはわからんが、私は今この世界でアイリ殿と巡り会えたことを神に感謝している。私もひょっとするとその頃のアイリーン殿の関係者でアイリーン殿が転生したアイリ殿を迎えるためにこの国に転生していたのかもしれないな。そう思うとなんだか愉快になる」

 ジークヴァルトが転生?

 あの頃私の側にいた、ジークヴァルトのような人?

 まさか。アイリーンだった頃、私には従者がいた。彼がジークヴァルト?

 そんなことあるはずないけど、そう思うと嬉しい。

「ジークは前世の記憶は?」

「ない。私にはそんなものはないが、アイリ殿の事ははじめて会った時から大事に思えていた。私は凡人だ。大それた事はできないし、前世の記憶もない。だが、もし前世があったなら、前世もアイリーン殿とともにありたいと思っていた。今もそう思っている」

 ジークヴァルトの言葉に私は温かいものが身体の中に流れているのを感じた。そしてジークヴァルトがアイリーンだった頃の私をずっと支えてくれていた従者のエアハルトであると確信した。



*諸事情により、明日の朝の投稿はお休みいたします。なんとか明日中に1話お届けできるようにがんばります。

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