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お祖母さんに会いに行く

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 ブランケンハイム、辺境伯邸に到着した。

 ジークヴァルトの家族が迎えてくれる。

「ジークから連絡をもらってすぐに実家に聖女がらみの何かがないか聞いてみたのよ」

 ジークママがハンカチを手に持っていた。

「母も実家に聞いてくれてね。そした祖母が母親の形見でこんなのを持っていたらしいの」

 ジークママが見せてくれてハンカチにはアニメの人気キャラクターの黄色い雷ネズミのイラストが描いてあった。高校1年の時にこのキャラクターのハンカチを持っているということは、前聖女は多分私より10歳くらい年上だろう。日本のある世界とこの世界の時間軸がぐちゃぐちゃで面白い。

 ジークママのお祖母さんはまだ元気で健在のようだ。

 自分も母の話がしたいから遊びに来ると言っていたそうだ。

 前聖女は子沢山でジークママのお祖母さんは12人兄弟の末っ子らしい。

「夫人、お祖母さまに来ていただくのも申し訳ないし、私が伺いましょうか」

「そうね。祖母は腰が悪いし、こちらから出向く方が嬉しいかもしれないわね。今から行く?」

「はい」

「魔法で?」

「はい」

「じゃあ、先触れをだすわね」

 ジークママは伝書バードを飛ばした。伝書バードとは時空をこえて伝言を持って飛ぶ魔道具だ。転移魔法の原理を魔道具にしたものなので、あれを大きくすれば魔力のない人も転移できるのではないかと前世のアイリーンの頃から思っていた。

 私とジークヴァルトはお祖母さんのところまで転移魔法で飛んだ。

 お祖母さんは隣の領地に住んでいる。馬車だと3時間くらいかかるらしい。

「先触れが来たかと思ったらすぐに姿を現すのですものびっくりしましたわ」

 お祖母さんと一緒に住んでいる息子の嫁の現キルヒッシュラーガー侯爵夫人はにこやかに話す。お祖母さんは腰と足の調子が良くないようでさっさと移動できないとのこと。

 私達は出されたお茶を飲みながらお祖母さんが来るのを待っていた。

「お待たせしました。こんな格好でごめんなさいね。ヴェルミーナ・キルヒッシュラーガーですわ」

 車椅子に座っている。どこかでみたような気がするが見たことあるわけないな。

「突然お邪魔して申し訳ございません。アイリ・イワクラと申します」

「アイリ嬢と呼んでもよろしいかしら?」

「もちろんですわ」

 お祖母さんはこてんと小首を傾げている。

「アイリ嬢、お会いするのは初めてですわよね? なんだか知り合いのような気がするの? 知り合いに似ているのかしら?」

「私もです。初めてお会いする気がしません」

「まぁ、お互いにそう思うという事はきっとどこかでお会いしているのね」

 お祖母さんはふふふと上品に笑う。

 私はお祖母さんの母であった前聖女の話を色々と伺った。前聖女はこの世界に召喚されて本当に幸せだったみたいだ。そりゃ帰る魔法なんて考えるわけないな。

「お祖母様、せっかくなので腰と足に回復魔法をかけましょうか?」

「うれしいわ。最近足腰がすっかり弱ってしまってね。私は聖女の娘なのにあまり魔力が強くないの。自分でかけられればいいのにね」

 とりあえず回復魔法をかけようとお祖母さんに寄り添い、魔法を発動した。

 私から光が溢れ出て、お祖母さんの身体を包み込む。

 このエネルギー。やっぱり知ってるわ。

 思い出した。ヴェルだわ。

 この世界は前世と繋がっていたのね。

 お祖母さん……いや、ヴェルとはアイリーンの頃に出会っていたことを回復魔法をかけている途中で思い出した。
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