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ジーク張り切る

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 少しすると夫人が目を覚ました。随分お顔がスッキリされている。

「奥様、ご気分はいかがですか?」

「気分? いいですわ。エネルギーがみなぎっている感じよ」

「では、ご子息の治療を始めましょう」

 私は夫人の手を取り、子息の部屋に向かった。

 子息はベッドで横になっていた。青白い顔をしている。痩せていて頬もこけていた。苦しそうな表情をしている。呼吸も荒い。意識は朦朧としている。

「奥様、ご子息の手を握ってもらえますか」

 夫人が手を握ったと同時に私は回復魔法を発動させた。アロイス殿下の時と同じでような光が出る。

 やはり薬だな。夫人は鑑定した時に光属性を持っていることがわかった。他人より身内の力の方がより効果がでる。だから夫人の力を借りている。

 宰相閣下のご子息、アロイス殿下と同じくらい薬が入っている。ただ婚約者がいなかったので、アロイス殿下のようなやらかしはしてないらしい。薬が抜けたらまた表舞台に戻れるだろう。

 空が白み始めてきた。もくもくの入った袋も結構な数になった。そろそろ終わりだな。

 私はまた箱を出し、袋をここに入れ、処理した。

「ジーク、次に行きましょう」

 ジークは首を振った。

「アイリ殿、食事をして寝て欲しい。次のやつはそれからでいい」

 そういえば食べてないし、寝てなかったわ。

 宰相閣下が近づいてきた。

「聖女殿、お口に合うかどうかわかりませんが、食事を用意しております」

「ありがとう存じます。せっかくなのでいただきますわ」

 魔力をかなり放出したので、食べて復活しとおかないとね。

 私達は食事をして、お茶をいただいた。

 ジークは真面目な顔で私を見つめる。

「アイリ殿、私に身体強化魔法を教えて欲しい」

 身体強化魔法?

「私がかけてあげるわよ」

「そうじゃない。私がアイリ殿にかけたいんだ。アイリ殿はいくら魔力が強いとはいえ、私ほど体力はないはずだ。これからも今日のような無茶をするのだろう。体力強化魔法が使えれば、回復魔法をかけているアイリ殿を体力強化魔法でフォローできる。私はアイリ殿のチカラになりたいし、助けたいのだ」

 そんな事初めて言われたわ。なんだかほっこりする。ジークは癒し系のクマさんだわ。

「ありがとう。うれしいわ。ジークには色んな魔法を伝えたいと思っていたけど、体力強化魔法は考えてなかったわ。そうね。私をフォローしてもらえる魔法を使えるようになってくれたら嬉しいわね」

「あぁ、ゲオルグより、私の方が体力がある。アイリ殿をフォローさせて欲しい」

 あら、ゲオルグと張り合っているのかしら? 

「ゲオルグはアロイス殿下が復活したら、お側に戻るでしょう。それにゲオルグには魔導士としての仕事もあるから。そう私についていられないものね。でも、ジークも辺境伯としての仕事は大丈夫なの?」

「うちは引退した父上もいるし、リュディガーもいる。母上もいる。結界を張り直し、綻びが直ったら、辺境の地も楽になるだろう。私はアイリ殿の唯一の専属護衛騎士だから問題ない」

 なんだか、圧が強いのですが……。

 宰相閣下のお屋敷でお昼過ぎまで仮眠をとらせてもらい、次のお屋敷に行く事になった。
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