【完結】巻き戻してとお願いしたつもりだったのに、転生?そんなの頼んでないのですが

金峯蓮華

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13話 お茶会

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 王宮に居候していると面倒くさいことが色々ある。

 今日は以前ヴェルミーナが言っていたお茶会だ。

 私は朝からまたヴェルミーナ自慢の凄腕侍女軍団に磨きあげられる。まだ8歳なのに勘弁してほしい。

 前世のエデルガルトはこんなに外見は磨き上げられなかったな。きっとヴェルミーナがお洒落さんだからだろう。王太后殿下とヴェルミーナは私を着飾らせることを楽しみにしているようだ。まぁ、それも人助けみたいなもんだ。徳を積むつもりで頑張ろう。

 今日のお茶会は、きっとラインハルトやハウル、アロイスの婚約者候補になりたい令嬢やその親がわんさか来るのだろう。参加するの面倒くさいなぁ。

 やはり、ラインハルトが一番人気かしら? でも、なぜみんな王太子妃になんかなりたいのだろうか?

 私は王太子妃教育は受けてはいないけど、ローザリアを見ていたから知っている。王太子妃になるのはとても大変だ。ローザリアは本当によく頑張っていた。

 まぁ、王太子教育はもっと大変なのだが、今して思えばエアハルトが頼りなかったため、賢いローザリアを早くから婚約者にして王太子妃教育だけでなく、王太子教育も受けさせていたような気がする。

 だからアーベルが国王になってもなんとかなるのだろう。

 決してアーベルがダメな訳ではない。

 アーベルは公爵になるはずだった。だから普通の王子教育しかうけていない。私が生きていれば女王補佐をしながらのんびり暮らせるはずだったのに。あれはあれで可哀想だ。

 ぼんやりそんなことを考えていたらお茶会の支度が出来上がった。

「エデル様、できましたよ。今日もめちゃくちゃ可愛いです。外見はまさに天使です」

 メアリーが褒め称える。

「本当だ外見が可愛らし過ぎて泣けてくる」

 ルドルフまで何を言っているのだか。

 しかし、外見はって何よ。ふたりとも酷いけど、私をよく知っている。中身は確かに天使とは程遠いと言われても反論はできない。

 今日の私の装いはパステルピンクのふんわりしたドレスだ。

 自分で言うのもなんだが、前世のエデルは子供の頃から美人だった。だが、背が高く細身であまり女の子らしい感じではなかった。

 騎士団と一緒に鍛錬もしていたので筋肉質だったし、強そうとか、怖そうとか、しっかりしている、頼りになるなどとよく言われたが、可愛いなどとお世辞にも言われたことはない。

 しかし、今のエデルは8歳にしては小さい。小柄で丸く柔らかい感じだ。前世で着たくても着られなかったふわふわフリフリの甘いドレスが着放題だ。

「ねぇ、メアリー。前の私ならこんなドレス似合わないわよね?」

「はい。笑われます」

 メアリー、そこはそんなことないですと嘘でも言ってよ。

「神様のギフトでしょうか? 今度は中身は怖いままで見た目は可愛くしてもらって良かったですね。これで殿方を騙し放題です」

 メアリーの毒舌に返す言葉もない。ルドルフも苦笑している。

「さぁ、参りましょうか? 皆さんお待ちですよ」

 メアリーはにこやかに私を促す。

 まったくもう。私は8歳なのよもう少し優しくしてよ。


「エデル!! 可愛いわ!」

 ヴェルミーナは私をぎゅっと抱きしめる。

「ヴェルだめよ。せっかくのドレスにシワがよるわ」

 そう言って王太后殿下はヴェルミーナから私を奪い取りドレスのスカートを直す。

「もう二人ともエデルを取り合いするのはやめてもらえませんか。エデルは私の婚約者なんですよ」

 ラインハルトも参戦してきたか。

「それは前世の話でしょう。今はまだ婚約者ではありません。私にもチャンスはあるはずです。兄上、負けませんよ」

 ハウルがラインハルトに告げる。

 私はそ~っと部屋を出た。

 あ~面倒くさいわ。

「エデルガルト様、生まれ変わっても大変ですね」

 ヴェルミーナの侍女のカレンが声をかけてくれた。

「本当に面倒くさいわ。こんなことならクラウベルクに来るんじゃなかったわ」

 私は苦笑する。

「まぁまぁ、そうおっしゃらずに。前のエデルガルト様は近寄りがたい感じがありましたが、今のエデルガルト様は可愛くて近寄りやすい感じですよ。まぁ、どちらのエデル様もエデル様ですよ」

 カレンは優しく微笑む。カレンは前の私をよく知っている。

「エデル、行こう!」

 アロイスが飛んできた。

 そうねアロイスのエスコートがいいわね。

「ダメだよ。エデルは私と!」

「いや私だ」

「今日はアロイス様にエスコートをお願いします」

 私は可愛く上目遣いで言ってみた。自分で言ったくせに気持ち悪い。

「仕方ない。アロイス、気をつけろよ」

 ハウルは捨て台詞とともに先に行ってしまった。

「じゃあ今日はアロイスに頼むか。私は護衛につくよ」

 ラインハルトはアロイスの肩をポンと叩いた。

「私達も行きましょう」

 私より少し背が低いアロイスはあざと可愛い笑顔を振り撒く。

 いよいよお茶会だな。


◆◆◆


 今日のお茶会は中庭で行われる。クラウベルク王国の伯爵家以上の貴族の子供達が集まっている。

 やはりどの親も自分の娘と王家の3王子の誰かをなんとか縁続きしたい思惑が見え隠れしている。

 アロイスにエスコートされ、王太后殿下とベルミーナの傍にいる私は悪目立ちしているなぁ。

「こちらはバウムガルテン王国の王女のエデルガルト嬢だ。これから2年間我が国の魔法学校に留学する予定だ。みな同世代だし仲良くしてほしい」

 ギルベルト陛下が紹介してくれた。

「エデルガルト・バウムガルテンでございます。魔法を学びに参りました。皆様お見知りおき下さいませ」

 年季の入ったカーテシーで皆を唸らせる。

 令嬢達の目つきが厳しくなったようだ。

 とりあえず自分の席に座ると、ヴェルミーナが落ち着いた色合いのドレスを着た、スレンダーで大人っぽい令嬢を連れてきた。

「エデル、紹介するわ。エルネスティーネよ」

「エルネスティーネ・ダウムと申します。ティーネとお呼びください。よろしくお願いします」

 ダウム家といえばクラウベルク王国の暗部を取り仕切る家だ。前世でライムントから聞いたことがある。私の護衛をさせるつもりかしら?

「エデルガルト・バウムガルテンです。エデルと呼んでくださいませ」

 貴族の嘘笑顔ではなく普通の笑顔で挨拶をした。

「じゃあ、私は見守り席に行くわ。二人で話してね」

 ヴェルミーナはニコニコしながら見守り席に戻って行った。

 令嬢達はそれぞれお目当ての王子の周りを囲んでいる。

「ティーネ様はラインハルト様やハウル様のところに行かなくてもいいのですか?」

 私はエルネスティーネに聞いてみた。彼女は口角を上げた。

「興味ございません。ラインハルト様やハウル様のことは幼い頃から存じ上げておりますが……」

 少し間が開いた。

「ここだけの話、なんだかぱっとしませんでしょう。私より強くない男は私はいりませんわ」

「ハハハ。ティーネ様面白い」

「エデル様も面白いですわ」

 なんだか意気投合してしまった。


 それから私達はお茶会のお菓子をたらふく食べ、遠くから王子達にまとわりつく令嬢を値踏みし楽しんだ。

 どうやらエルネスティーネは令息方から怖がられているようで誰も寄ってこない。

 エルネスティーネを紹介したのは護衛もだが、虫除けの為だろうか?

 エルネスティーネは私より1歳年上の9歳だそうだが、とても話が合う。ひょっとして29歳の間違いじゃないかと思うくらいだ。

「ティーネ様、ほんとは29歳ではないのですか?」

「まさか。そんなわけないですわ」

 エルネスティーネはふふふと笑う。


 私達はお茶会が終わった後もまた会う約束をした。


***
明日も2話いけるかな?
頑張ってみます。
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