【完結】巻き戻してとお願いしたつもりだったのに、転生?そんなの頼んでないのですが

金峯蓮華

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10話 再会しました

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 その日のディナーはギルベルト陛下の家族と一緒だった。

 ギルベルト陛下は王宮にいる時はできるだけ家族で食事を一緒に食べるらしい。陛下は家族を大事にしているのだな。

 私はディナー用のドレスに着替えてダイニングルームに向かった。

 ダイニングルーム横のウェイティングルームでみんなは私を待ってくれていたようだ。恐縮してしまう。

「お待たせいたしました。遅くなってすみません」

 とりあえず頭を下げた。

「大丈夫だよ。私達も今来たところだから。エデル、そのドレスとても似合っている。可愛いな」

 ギルベルト陛下に褒められて、ちょっとうれしくなる。

「エデル、うちの子供達を紹介するわね」

 ヴェルミーナが私の前に出た。

「こちらが嫡男のラインハルト10歳、次男のハウル、7歳、三男のアロイス、4歳よ」

「バウムガルテン王国から参りました、エデルガルトと申します。エデルとお呼びください。2年間お世話になります。よろしくお願いします」

 カーテシーで挨拶をした。3人とも綺麗な金髪で碧眼のイケメンだ。ギルベルト殿下と同じなので王家の色なのだろう。

「嫡男のラインハルトです。ライと呼んで下さい」

 ラインハルトは10歳にしては背が高い。ライムントとよく似ているが叔父と甥だからだろう。ヴェルミーナ達は生まれ変わりと言っていたが、私にはよくわからない。

 とりあえず笑っておこう。

 ラインハルトが手を出したので私も手を乗せてみた。

 ラインハルトが私の手に唇を寄せる。

 ピリッ

 身体の中を稲光が走ったような気がした。

 ラインハルトの顔を見ると、目を見開いたまま固まっている。

 どうしたのだろう?

 隣にいた弟はそんなラインハルトを無視し、自己紹介をはじめた。

「次男のハウルだ。ハウって呼んでくれればいい。こんな可愛い令嬢がうちに来てくれるなんて嬉しいなぁ。仲良くしよう」

 少し癖っ毛でウェーブがかかった金髪がオシャレっぽい。ラインハルトと比べると明るく柔らかい雰囲気だ。社交的だな。

「三男のアロイスだよ。アロって呼んでね。一緒に遊ぼうね」

 三男はあざと可愛い感じだな。自分が可愛いことがよくわかっているようだ。

「兄上、固まったままでどうしたのですか? エデルがあまりにも可愛いので見惚れているのですか?」

 ハウルがラインハルトを茶化すが、ラインハルトはまだ固まったままだ。これはやっぱり思い出したな。今、頭の中を前世の記憶が駆け巡っているのだろう。

「ハウル、ライのことはほっといて席につけ。アロも早く」

 ギルベルト陛下がふたりに席につくように促す。

 私とヴェルミーナは顔を見合わせた。ヴェルミーナは私と目を合わせつつ頷き、ラインハルトの肩に手を置いた。

「思い出したの?」

 ラインハルトは身体をビクンとさせ、ヴェルミーナの顔を見上げた。

「義姉上……わ、私は……」

「お帰りなさい。やっと思い出したわね」

 ヴェルミーナは優しく微笑んでいる。

 弟達は何が起きたのかわからないようで母と兄の姿を不思議そうに見ている。

 ラインハルトは私の顔を見た。

「エデル……エデルなのか?」

「うん。ライ、久しぶりね」

 私が微笑むと、ラインハルトは私に駆け寄り縋りついた。

「エデル……エデル……」

 号泣しながら何度も名前を呼ぶ。そして私の頬を触ったり髪をぐしゃぐしゃにする。

 私はラインハルトを抱きしめた。



 もう、食事などする雰囲気ではない。

「とにかく食事にしよう。話は食事の後でお茶でも飲みながらしよう。それでいいなライ?」

 ギルベルト陛下の言葉にラインハルトは頷いたが私から離れようとしない。

「ライ、色々混乱していると思うが、とりあえず落ち着け。エデルは生きている。手を離しても消えたりしたいから、離しなさい」

 ラインハルトの手を取り、私から離しながら言葉を出したのはギルベルト殿下だった。

「そうね。とりあえず食事にしましょう。エデル、今日はエデルの好きなものを沢山作ってもらったのよ」

 私もヴェルミーナに促され椅子に座った。
ラインハルトは離した手を辛そうに見ている。

「ライ、大丈夫?」

 私が声をかけると、ラインハルトは急に立ち上がり、私の傍にきた。

「私はエデルの隣でいただきます」

 ヴェルミーナは呆れたような顔をしてため息をついた。

「仕方ないわね。今日だけよ」

「そうだな。今日だけだぞ」

 ギルベルト陛下も苦笑いをしている。

 ヴェルミーナは私を見て微笑む。

「ごめんねエデル、どうやらライは全部思い出しちゃったみたいね。これからはきっと執着野郎になると思うわ。あいつも粘着質だったものね」

 ライムントが粘着質だった? 確かにいつも傍にはいてくれたけど、そんな記憶はない。

「母上、どういうことですか?」

 ハウルが不思議そうな顔をしてヴェルミーナを見ている。

「そのことは食事が済んでから私が皆に話す。今はとにかく食べよう」

 ギルベルト殿下がハウルに告げた。
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