【完結】巻き戻してとお願いしたつもりだったのに、転生?そんなの頼んでないのですが

金峯蓮華

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7話 3歳になりました

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 今日は私の3歳の誕生日パーティーだ。

 1歳の時よりも今回は護衛騎士や魔導士がやたらたくさんいる。もちろん影もわんさかいるようだ。

 今日は私は白いフリルがひらひらしていて、生地が柔らかく、スカートがふわふわしたドレスを着せられている。スカートには白い花のモチーフがたくさんついている。軽い生地でできたモチーフなので重くはない。

 髪も結構伸びてきたので可愛くハーフアップに結ってもらい、ドレスのモチーフと同じ白い花の髪飾りをつけられた。

 披露パーティーの時に私が着せられそうになった白字に金の刺繍が施された謎のドレスを調べてみたら、小さな毒針が仕込まれていて、あれを着ていたら即死だった。おかしいと気づいて本当によかった。

 犯人は幻影魔法が使える奴だ。この2年の間に幻影魔法や悪意のある魔法を察知できるような魔法を前世の私が鍛えた魔導士達が作り上げた。彼らからは2度と王女を失わないと執念すら感じる。

コンコン

 扉を叩く音がする。

「はい」

 メアリーが返事をする。

 扉が開き、顔を出したのはアーベルだった。

「用意ができたようだね。今日のエデルは格別に可愛いな。不埒な奴らの手に落ちないようにこの魔道具をつけておこう」

 アーベルはポケットから花の形に石を並べたネックレスを取り出して私の首につけた。私につけたネックレス型の魔道具は邪な心を持った奴が私に触れるとかなり強力な電気ショックを受けるらしい。これには、前のように何かあってはいけないというアーベルの気合いを感じる。そんな人に遭遇したくはないが、どうな風になるかちょっと見てみたい気もする。

「まぁ、今日は悪人にはエデルに指一本触れさせるつもりはないがな」

 アーベルは気合い十分だ。

 さすがに3歳ともなると拙くはあるが言葉を話すことができる。

「パパ、ぱーちぃの警護は大丈夫? おじいちゃまのまわりは特に注意ちてね」

「あぁ、父上には幻影魔法に惑わされない眼鏡をかけてもらっている。それに影をはべらして、厄介な奴は近づけないようにしているよ。王太后様も目を光らせている。エデルはずっと私が抱っこいている予定だ」

「また、犯人はわたくちに接触しようとちてくるかも?」

 私は普段は堅い守りの中にいる。魔導士達によって何重にも結界魔法がかけられた場所にいる。私が幼児のうちは危ないのでこうしておくらしい。私は王宮の中の安心安全な場所でのんびり幼児ライフを送っている。

 3歳児ではあるけれど、女王エデルガルトの記憶や知識はそのままあるので、勉強なども特にしなくても脳や身体に染み付いている。今回はその辺りは楽だ。

 そうそう、今、私の側にはあの時の誘拐犯のふたりがいる。この2年の間、ふたりはに鍛えられいっぱしの護衛になった。そして魔法で姿を変え、名前もトーマスとジェフリーに変えた。
「まぁ、トーマスとジェフリーもいるしな」
「しょうね。トーマチュもジェフジーもルドルフにきちゃえられて強くなったもんね」
「あぁ、それにあいつらはあいつらに直接指示した奴のことは覚えている」
「来たらわかりゅといいわにぇ」

 私の幼児言葉に普通に対応しているアーベルはなかなか大した奴だと思う。血の繋がりでわかるのだろうか?

 3歳になるまでにも私は何度か命を狙われた。その都度、優秀な護衛騎士や魔導士、影達が助けてくれている。それはもう感謝しかない。

 今日のパーティーは私の3歳の誕生日パーティーと弟の1歳のお披露目パーティーも兼ねている。去年生まれた弟のルートガーは特に誰かの生まれ変わりというわけではなく何の記憶も無いただの赤ちゃんのようだ。

「エデル、ルーは手がかかる。やっぱり君は姉上の生まれ変わりだけあるなぁ。ルーも誰かすごい人の生まれ変わりならいいのに」

 アーベルはそんな間抜けた事を言う。

「アーベル様、ルーがもし悪い人の生まれ変わりだったらどうするのですか? 普通の子でいいのよ」

 母のローザリアは困り顔だ。

「わたくちもふちゅーのこよ」

「そうね」

 私は母と顔を見合わせて微笑み合う。

 アーベルは元々第2王子だった。それなのに急に王太子になり、急に国王になった。自分でも国王に向いていないことはよくわかっている。

 今は妻のローザリアと母親の王太后、そして父親の元国王に支えられなんとか国王として頑張っている。

 本来の王太子だった嫡男が廃嫡され、頼りの姉も暗殺され、仕方なく国王になった。とばっちりといえばとばっちりなのだ。そう思うと可哀想かもしれない。

 しかし、今は国王なのだしっかりしてもらわないと困る。なってしまった以上やるしかないのだ。

「お父しゃま、しっかりしてくだしゃいまちぇ」

「エデル。やっぱり女王は嫌か?」

「嫌でしゅ。絶対嫌!」

「そうか残念だなぁ。エデルは女王に向いているのに」

 性懲りもないやつだ。私は今度は絶対女王になんかならない。

「ゲオ、行こう」

 私は護衛のゲオルグの手を引っ張り部屋を出た。

 ゲオルグは宰相の末の息子で18歳になる。つい最近、留学していたクラウベルク王国から戻ってきた。

クラウベルク王国では、魔法と剣を学んでいたそうで、今は私の護衛として傍にいてくれている。

 ゲオルグはライムント程ではないが、なかなか優秀な魔導士で、魔法騎士でもある。

「大変ですね。相変わらず陛下はエデル様を女王にしようとしている」

「ほんとにね。わたくちは女王なんかにならないわ」

 生まれ変わりたくなんてなかった。できれば、エアハルトが魅了の魔法にかかる前に時を戻して欲しかった。

 そしたらあいつに魅了の魔法無効の魔道具をつけまくってやる。あのアンボンタンが魔法にかかるから私がこんな目にあうんだ。全くもう。

「エデル様の百面相はいつも面白いです。また、何やらよからぬことを考えているのですか?」

 ゲオルグはくくくと笑っている。

「もう、よからぬことなんちぇ、かんがえてないわ!」

私はゲオルグを睨んだが、まだ笑っている。変なやつだ。

「さぁ、そろそろ行きましょうか。父と合流します。エデル様、気を引き締めてくださいね」

「ゲオもね」

 そろそろパーティーが始まる。


◆◆◆


 会場にはたくさんの貴族が集まっている。爵位が低い順に入場だ。今は伯爵家が入場している。私達王族は最後に入場する。

 入場の合図が来るまでここで待機だ。ここには私と父母、弟、祖父母がいる。祖父は祖母に何やら言い含められているようだ。祖母と目が合った。

「エデル、今日はこの人はあなたに近づけないから安心してね。私がしっかり見張っているわ」

 祖母はウインクをする。

「私はもうヘマはしない。エデルを守る」
祖父は何だか変なスイッチが入っているようだ。

 私も3歳になったし、そろそろ自衛できるくらいの魔法の練習でもしなきゃね。守られてばかりでは動きづらい。


「皆が揃いました。お出ましくださいませ」

 宰相の声がした。

 父を先頭に私達も入場する。

 さぁ、パーティーが始まった。


「皆の者、今日はエデルガルト姫の3歳の祝いとルートガー王子の1歳の披露目の儀に集まってくれて礼を申す。楽しい時間を過ごしてもらえたら嬉しい。このふたりもきっと王国を繁栄させる大きな力になるであろう。皆の者このふたりをよろしく頼む」

 とりあえず王様らしい挨拶はできたようだ。

 アーベルは玉座に座る。

 今日は私の1歳のお披露目パーティーのような立ち挨拶は無しだ。

 王家は座り、貴族達が順番に挨拶に来るようにした。

 この方が守りやすい。私もだが、ルートガーも狙われるかもしれない。

 犯人の目的は国を我がものにする事なのだろうか? それとも私に対する私怨か?
まだよくわからない。

 わかっていることは、国王のアーベルは今のところ、狙われてはいない。

 前回の私の死はミアの自白によって黒幕にまで行きつき、亡き者にしたということだし、実行犯のミアもライムントに殺されたらしい。

 今度は殺されたくないし、国も民達も守らなければならない。

 いったい誰が何のために私を狙っているのだろう?

 あ~、小さい身体がもどかしい。早く大きくならないものか。

 貴族達の退屈な挨拶を眺めながら私のイライラのボルテージは上がりまくっていた。





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