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1話 女王なんて嫌だったのよ
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今日は、ここバウムガルテン王国で女王在位1年記念の式典があり、夜には夜会も予定されている。
私はその式典の主役の女王のエデルガルトなのだが、本当の事を言うと、女王になんかなりたくなかった。
国王夫妻の第一子に生まれたが、弟が2人いたため、結婚して王家を離れ、静かに暮らそうと思っていた。
それなのに、王太子だった弟のエアハルトが魅了の魔法にかかり、卒業パーティーで婚約者を断罪し婚約破棄した。
平和ボケで危機感ゼロだった我が国の者は誰もエアハルトが魅了の魔法にかかっていると気が付かなかったし、私も当時はクラウベルク王国に滞在し、花嫁修行中だったので、学園で魅了の魔法が使われていて、そのターゲットがエアハルトだったなんて全く知らなかったのだ。
我が国は50年くらい前に魅了の魔法にかけられた王太子を廃嫡し、王太子の座を第二王子に交代したことがある。それなのにまた同じ轍を踏んでしまった。
我が国はその時に魅了の魔法を禁忌とし、使用した者や協力者は死罪と決め、魅了の魔法に関するものを全て封印し、もう国中に魅了の魔法に関するものが無くなったから大丈夫だろうと高を括っていたのだった。
そんなモノ他国からいくらでも入ってこれるのに。間抜けすぎる。もっと魅了封じと無効化を徹底させるべきだった。
私は危機管理を怠った国王である父を退位させ、これまた危機管理と自己管理が全くできず、魅了の魔法なんぞに引っかかってしまった王太子のエアハルトを廃嫡させた。
そして次男のアーベルが成人すると同時に国王に即位することにして、それまでは私が国王代理を務めることにした。
なぜ代理なのに、今は女王かって?
それはね。
「姉上、私は国王の器ではありません。婚約者のローザリアとも話し合いました。私は今までどおり、姉上の側で王弟として支えることにします。この3年間姉上を見てきましたが、私には姉上のようにはできません」
アーベルの婚約者であるローザリアは元々は以前の王太子であったエアハルトの婚約者であったのだが、魅了の魔法にかかったエアハルトが無実の罪で断罪し婚約破棄を言い渡していた。
それを、私がこっそり匿っていたのだ。
ローザリアは筆頭公爵の令嬢で、幼い頃から王妃となる教育を受けており、とても優秀で、人柄も良く、このまま王太子の婚約者でいてほしいというアーベルのたっての希望でそのままアーベルの婚約者になることとなった。
このふたりならきっとうまく国の舵取りをしてくれるはずだ。半年後にふたりは婚姻する予定になっている。
「何を言っているの? 私は1日も早く国王代理なんか辞めたいの。あなたが頑張りなさいよ。アーベルなら良い国王になれるわ」
「いや無理です。姉上、大臣達からもほらこの通りです。皆、姉上を支持をしています。ここに名前と血判のある人達は私の意見に賛同してくれています」
そこにはこの国の貴族達と王宮で働くほとんどの人の名前と血判があった。
「私がこの3年間で頑張ってこの国を改革してきたのは、あなたが国王になった時に国政をやりやすくするためよ。かなり思い切ったこともしたわ。あとはあなたがローザと力を合わせて国を動かしていけばいいのよ」
「だめです。まだまだ改革は必要です。皆は姉上の女王を願ってます。私は次の会議で姉上の女王就任の決を取りたいと思っています。そこで決まったら諦めて女王になってくださいね」
「会議で決をとるだなんてバカね。我が国は元々男尊女卑の思想がある国、みんな今だって私が国王代理をやっているのを忌々しく思っているのよ。賛成する人なんかいないわね」
私はアーベルの無謀な策を馬鹿にしていた。
私はその式典の主役の女王のエデルガルトなのだが、本当の事を言うと、女王になんかなりたくなかった。
国王夫妻の第一子に生まれたが、弟が2人いたため、結婚して王家を離れ、静かに暮らそうと思っていた。
それなのに、王太子だった弟のエアハルトが魅了の魔法にかかり、卒業パーティーで婚約者を断罪し婚約破棄した。
平和ボケで危機感ゼロだった我が国の者は誰もエアハルトが魅了の魔法にかかっていると気が付かなかったし、私も当時はクラウベルク王国に滞在し、花嫁修行中だったので、学園で魅了の魔法が使われていて、そのターゲットがエアハルトだったなんて全く知らなかったのだ。
我が国は50年くらい前に魅了の魔法にかけられた王太子を廃嫡し、王太子の座を第二王子に交代したことがある。それなのにまた同じ轍を踏んでしまった。
我が国はその時に魅了の魔法を禁忌とし、使用した者や協力者は死罪と決め、魅了の魔法に関するものを全て封印し、もう国中に魅了の魔法に関するものが無くなったから大丈夫だろうと高を括っていたのだった。
そんなモノ他国からいくらでも入ってこれるのに。間抜けすぎる。もっと魅了封じと無効化を徹底させるべきだった。
私は危機管理を怠った国王である父を退位させ、これまた危機管理と自己管理が全くできず、魅了の魔法なんぞに引っかかってしまった王太子のエアハルトを廃嫡させた。
そして次男のアーベルが成人すると同時に国王に即位することにして、それまでは私が国王代理を務めることにした。
なぜ代理なのに、今は女王かって?
それはね。
「姉上、私は国王の器ではありません。婚約者のローザリアとも話し合いました。私は今までどおり、姉上の側で王弟として支えることにします。この3年間姉上を見てきましたが、私には姉上のようにはできません」
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それを、私がこっそり匿っていたのだ。
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「何を言っているの? 私は1日も早く国王代理なんか辞めたいの。あなたが頑張りなさいよ。アーベルなら良い国王になれるわ」
「いや無理です。姉上、大臣達からもほらこの通りです。皆、姉上を支持をしています。ここに名前と血判のある人達は私の意見に賛同してくれています」
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「会議で決をとるだなんてバカね。我が国は元々男尊女卑の思想がある国、みんな今だって私が国王代理をやっているのを忌々しく思っているのよ。賛成する人なんかいないわね」
私はアーベルの無謀な策を馬鹿にしていた。
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