上 下
20 / 20
おまけ

人生が変わったなぁ。(ロイス・トワレード視点)

しおりを挟む
 5年前、私は我が国の第3王子だったロベルト殿下と一緒にシンバレッド王国に留学していた。

 留学は楽しかった。毎日色んなことがあった。

 しかし、私はかの国の王女に目をつけられてしまった。

 王女はキンバリー帝国の第2王子の婚約者だった。申し訳ないが、王女には全く興味がない。

 ロベルト殿下は私を逃してくれようとした。

「ロイス、明日国から迎えが来ることになった。エレオノーラが外観を変える魔法をかけるから絶対にわからないはずだ」

 エレオノーラ様はキンバリー帝国の皇女だ。ロベルトとは留学先のアカデミーで知り合い恋に落ちた。
 
 エレオノーラ様の兄上の婚約者が王女で偶然ロベルト殿下と一緒にいた私を見て見染めたらしい。

 はっきり言って迷惑だ。私はただの侯爵の子息。キンバリー帝国の皇子の婚約者のシンバレッド王国の王女となんか絡みたくない。

 私には婚約者もいる。勘弁してほしい。

 私は明日の朝。エレオノーラ様の魔法で姿を変え、商団の荷馬車に乗り逃げるつもりだった。

 なのに、ロベルト殿下と打ち合わせが終わり、部屋に帰ろうと廊下を歩いていた時に王女の影に捕まってしまった。

 そこから先は記憶が曖昧だ。

 私が行方不明になったと大騒ぎになり、私を探していたロベルト殿下やエレオノーラ様、シンバレッド王国の国王に見つかった時は、私は媚薬を盛られ、王女と盛っていたらしい。

 王女は正気だったので、王女の犯行だとすぐにわかり、捕らえられたそうだ。シンバレッドの国の者だけなら揉み消すのであろうが、目撃したのは、キンバリー帝国の皇女とカモスタット王国の王子、キンバリー帝国に報告しなくてはならなくなった。

 後は国と国との話し合いらしい。

 私は中和剤を投与されたが、副作用で1週間苦しんだ。もう懲り懲りだ。

 ロベルト殿下がエレオノーラ様と病室にやってきた。

「ロイス、私がのんびりしていたために酷い目にあわせてしまって申し訳なかった。エレオノーラに忘却の魔法をかけてもらったので、身体も心も楽になっていると思うがどうかな?」

 あ~、そういうことか。

 だから急に楽になったんだな。媚薬を盛られたあとの記憶が曖昧なのもそのせいか。

 できればもっと早くかけてほしかったな。

 まぁ、純潔は失ったようだが、私は男だから別に構わない。

 それにしても、なぜ私がそんなに執着されたのか不思議で仕方がない。
 私はマックス殿下のように美男子ではない。並だ。

「お前が反応しなかったからみたいだ。ほかの男はあの王女に声をかけられたらみんなついていったらしいぞ」

 ロベルト殿下はそう言うが、それって逆ハーレムってやつか?
 婚約者は大国の王族なのに貞操は別にいいのか?

 私はシンバレッド王国からどっさり慰謝料をもらった。
 そしてキンバリー帝国からも口止め料をたんまりもらった。

 私はそのお金で医療の盛んなフレーナリー王国に留学し、医療を学んだ。

 普通なら私のような並の見た目の男は言い寄られることもない。
 フレーナリー国ではただひたすら勉強した。
 そして卒業し、医師になり、カモスタット王国に戻ったら、国民はみんな例の王女が王太子殿下の正妃だったことを忘れていた。

「キンバリー帝国がロゼが正妃になった祝いに記憶を消したんだよ。そんな魔法を使う怖い国と揉めたら大変だな。私はおとなしく口をつぐんどくよ」

 王太子殿下ははははと笑っている。

 この人はロゼッタ様が幸せならばオールOKだからな。

「私も口止め料をたんまりもらった時に記憶から消えました」

 私も適当なことを言って笑っておいた。

 しかし、人生なんてどう転ぶかわからない。

 あの時、媚薬を盛られなければ、今頃は普通に文官にでもなっていただろう。

 まさか、医師になるとはなぁ。

 媚薬の中和剤の副作用でかなりしんどかったから、私みたいな人を助けたいと思った。学費もあったし。

 感謝とは言わないが、死者に鞭打つつもりはない。

 今は王宮医師をしている。プライベートでは子供の頃からの婚約者と結婚して幸せに暮らしている。
 
 あの記憶も年と共に風化していくんだろうな。

【了】

*これにて全て終了です。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 次はリュカとヴィーナのお話を書こうと思ってます。

 壮大さはなく、緩い感じのラブコメのつもりですので、読んでやってもいいよとおっしゃってくださる方はお待ちくださいませ。(明日1話いけるかな?)

 ではまたお会いする日を楽しみにしております。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(64件)

Sugar0117
2022.10.15 Sugar0117

テンポ良い作品が得意なのでしょうか♫他の読者の方々の感想も一気に読みまして、ほぼ同じ様な感想が多くてファンになりました!面白いし最後の意外性の結末のまとめも終始ニヤけてしまいます。唯、誤字が多く目につきました。ペーパー化する時は見直しが入るでしょうからスルーしてしまいますが……
次の作品を読むぞ〜!!ドンドン公表して下さいませ(笑)

金峯蓮華
2022.10.15 金峯蓮華

感想ありがとうございます。
誤字多くてすみません。何度も見直してはいるのですが、ダメですね。気をつけます。そろそろ次のお話をと思っています。もう少しお待ちください。

解除
ねんねこ
2022.09.12 ねんねこ

ランキングから来て一気飲みしました。
定番を二重に捻って、無理なく荒唐無稽な設定も使わず、あるべき形に見事に落とし込んだお話で感心しました。
もだもだ熊さんの裏話も分量過不足なく。
一番最初のとばっちり被害者君も、婚約者さんに捨てられずに良かったです。
面白いお話でした。次作も楽しみにしてます。

金峯蓮華
2022.09.12 金峯蓮華

感想ありがとうございます。
励みになります。
新しい連載がはじまってます。よかった読んでみてください。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

解除
みーちゃんママ

「魅力が…」から続けて「婚約破棄された」を楽しく 読みました。面白かった--!

今回は「短編」なので、どんな内容なのかな?と思っていましたが…短編なのに長編並の密度…濃縮ジュースみたい?で、読み応えがありました。

ゴリクマ→筋肉が付きやすい体質…「なかやまきんに君」みたいな外見かな--?と想像してしまった!笑

おまけ話の、まとめ方が上手い!

監禁されていた側近は、どうなった?と思っていたので、お元気そうで良かったです。

元.側近ロイスの外見が、イケメンではない…というのが奥深い…

拉致監禁の 王女目線話がないのも…それは、それで短編の良さだと思いました。
愛の形も、人それぞれ…

金峯蓮華
2022.09.12 金峯蓮華

感想ありがとうございます。
王女視点も面白かったかもしれませんね。
なんだか王女と第2皇子の話はバッドエンドの超シリアスヤンデレ小説になりそうなので、それはまた機会があればかいてみたいです。

ゴリクマはきんに君みたいな体型です。「けものみち」というプロレスラーが異世界に転生する漫画を教えて下さった方がいて、その主人公のビジュアルがイメージぴったりでした。

新しい連載も始めています。よかったら読んでくださいませ。

最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

解除

あなたにおすすめの小説

初恋の人が妹に微笑んでいました

四折 柊
恋愛
 二十歳になってもヴァネッサは婚約者を決めかねていた。理由は初恋の人が忘れられないから――。だからといって告白はできない。もしも気持ちが通じ合ったところでお互い家を継ぐ立場で結婚はできないのだ。せめて彼に恋人か婚約者がいれば、諦めることができたかもしれない。でも彼には浮いた噂一つない。  未練を捨てられないまま過ごすある日、ヴァネッサは街で偶然彼を見かけた。嬉しくなって声をかけようとしたが、彼の隣に女性がいることに気付く。彼とその女性は寄り添い楽しそうに話をしている。ヴァネッサはその姿に衝撃を受け呆然と立ち竦んだ。胸にはじりじりと黒いものが滲んでいく。その女性は明るくて可愛くてみんなから愛される…………自分の妹だったのだ――。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

小倉みち
恋愛
 元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。  激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。  貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。  しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。  ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。  ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。  ――そこで見たものは。  ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。 「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」 「ティアナに悪いから」 「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」  そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。  ショックだった。  ずっと信じてきた夫と親友の不貞。  しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。  私さえいなければ。  私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。  ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。  だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。