12 / 20
真実
しおりを挟む
「弟を人質に取られているんだ」
テディ様からいきなりそんな衝撃的なことを聞かされた。
人質に取られているのはやはりロベルト殿下だった。
テディ様は難しい顔をして話を続ける。
「私たちが何もしなければ殺されることはない。このことを知っているのはごく一部のものだけだ」
何もしなければが気になる。反対に何をすれば戻ってこれないのだろ?
「3年前、友好国だったシンバレッド王国に弟が留学した」
その話は知っている。私がアカデミーに在籍していた時にシンバレッド王国からも交換留学生が来ていた。学年が違うので接点はなかったが、楽しく過ごし戻られたと聞いている。
「その時に弟と一緒に留学した側近がまずいことになってしまったんだ」
まずいこと?
「王女と深い中になってしまった」
王女? つまり正妃様?
「それは正妃様ですか?」
「……」
俯いたままテディ様は話を続ける。
「当時王女はキンバリー帝国の第2皇子の婚約者だったんだ。キンバリー帝国の皇子の婚約者がカモスタット王国の第3王子の側近と深い中になってしまったとわかり、キンバリー国の皇帝は激怒した」
あかん、話が重すぎる。
「キンバリー帝国が色々調べた結果、王女が我が弟の側近に懸想し、思いを告げたが断られた。それを根に持ち、媚薬を使い側近を我がものにし、監禁していたのを、行方不明になった側近を探していたロベルトや一緒に探していたシンバレッド王国の国王に見つけられた。それで我が国はシンバレッド王国に抗議をし、側近は返してもらったし、慰謝料ももらった。しかし、キンバリー帝国はメンツが立たない。
そこで、ロベルトをキンバリー帝国の皇女の婿にする代わりに、まだ正妃がいない私に、皇帝が頼み込み、娶らされたんだ。頼み込んだといっても断れない命令なんだけどね」
テディさまは自虐的に笑った。
私はなんだか意味がよくわからない。
「意味がわからないのですが、テディ様もロベルト様も関係ないですわよね?」
「うん。ただキンバリー帝国は大きくて軍事力の強い国だ。うちとは友好関係にあるが攻め込まれてはひとたまりもない。ロベルトをすでに、連れてか行かれてしまっていたし、我が国を戦火に晒すわけにもいかない」
確かに帝国は強い。我が国も軍事力はあるが、そんな理由で戦争をし、戦火に晒すわけにはいかない。テディ様のいうことはもっともだ。
しかし、大国のくせにプライドのためにそんなことをするのか?
「シンバレッド王国は何も処分を受けなかったのですか?」
元々の原因を作ったシンバレッド王国はどうなったのだろう?
「帝国に国を乗っ取られたよ」
「乗っ取られた?」
「あぁ、入り込まれて、今は帝国が国を動かしている。表立って発表はされていないがそのうち属国になったと発表されるだろう。シンバレッド王国は軍事力が弱い。王家も平和ボケでのんびりしていた。」
そんな、怖すぎる。
「帝国ではシンバレッドの王女と私がどこかで出会い真実の愛に目覚めた。皇子はふたりの気持ちを尊重し、ふたりを応援し、ふたりの結婚を認めた。我が国ではそんな話は流れていないが、帝国ではそう言う話になっているんだ。王女は体が弱いので婚姻式や夜会など長い時間人前に出ることはできない。結婚式も王宮のチャペルでしたと国民には伝えられた」
あぁ、そうか。そうだった、それで婚姻式をした印象が無かったんだ。
「では、正妃様はここにはいないのですか? いまどこに?」
「多分帝国の第2皇子に監禁されている」
「監禁?」
「第2皇子は自分を裏切った王女が許せなかったようだ。きっと媚薬漬けだろう」
怖い怖い怖すぎる~。
やったことの倍返しされちゃうんだ。
「でも、王太子が来ていたではありませんか?」
「あれは帝国の使者だよ。王太子と偽って参加していたんだ」
見張られているのか。
「さっき、使者にロゼにこのことを話す許可をもらった。この秘密が他にもれれば我が国は帝国から攻められ戦火になる。ロベルトは殺され、国王と私は責をおう。ロゼには話したかった。知らない方がロゼは幸せだと思う。でも私はロゼに嫌われなくない。不信感を払拭したかった。自分が可愛いからロゼをまきこんでしまった。ダメな男だ」
ちょっと待った。それって私が話したらこの国は終わるってこと?
「私が話したらどうするのですか?」
「ロゼが話したのなら仕方ないよ」
いやいや、仕方ないじゃないでしょう?
「私を信用しているということですか?」
「もちろんだ。秘密の続きはまた少しある。結婚して5年経ったら正妃は病死したと発表することになっている。そこで我が国とキンバリー帝国の約束は終わりだ。ロベルトは我が国に戻るもよし、そのままキンバリー帝国の皇女に婿入りするのもありだ。本当なら私は結婚するつもりはなかった。だからキンバリー帝国の話を受け入れたんだ」
テディ様は顔を上げて私の目をじっと見た。
「私には好きな人がいた。でもその人には婚約者がいて、私の思いは届かないと諦めていたんだ」
「そんな方がいらしたのですね。その方は今は?」
「ここにいる。私の目の前に」
へ? 私? 私なの?
テディ様の突然の告白に私は固まってしまった。
国同士の大変な問題より、私を好きだったという告白の方が私には衝撃的だった。
*次で多分最終話になると思います。
番外編でゴリクマ視点入れようか入れまいか迷い中です。
テディ様からいきなりそんな衝撃的なことを聞かされた。
人質に取られているのはやはりロベルト殿下だった。
テディ様は難しい顔をして話を続ける。
「私たちが何もしなければ殺されることはない。このことを知っているのはごく一部のものだけだ」
何もしなければが気になる。反対に何をすれば戻ってこれないのだろ?
「3年前、友好国だったシンバレッド王国に弟が留学した」
その話は知っている。私がアカデミーに在籍していた時にシンバレッド王国からも交換留学生が来ていた。学年が違うので接点はなかったが、楽しく過ごし戻られたと聞いている。
「その時に弟と一緒に留学した側近がまずいことになってしまったんだ」
まずいこと?
「王女と深い中になってしまった」
王女? つまり正妃様?
「それは正妃様ですか?」
「……」
俯いたままテディ様は話を続ける。
「当時王女はキンバリー帝国の第2皇子の婚約者だったんだ。キンバリー帝国の皇子の婚約者がカモスタット王国の第3王子の側近と深い中になってしまったとわかり、キンバリー国の皇帝は激怒した」
あかん、話が重すぎる。
「キンバリー帝国が色々調べた結果、王女が我が弟の側近に懸想し、思いを告げたが断られた。それを根に持ち、媚薬を使い側近を我がものにし、監禁していたのを、行方不明になった側近を探していたロベルトや一緒に探していたシンバレッド王国の国王に見つけられた。それで我が国はシンバレッド王国に抗議をし、側近は返してもらったし、慰謝料ももらった。しかし、キンバリー帝国はメンツが立たない。
そこで、ロベルトをキンバリー帝国の皇女の婿にする代わりに、まだ正妃がいない私に、皇帝が頼み込み、娶らされたんだ。頼み込んだといっても断れない命令なんだけどね」
テディさまは自虐的に笑った。
私はなんだか意味がよくわからない。
「意味がわからないのですが、テディ様もロベルト様も関係ないですわよね?」
「うん。ただキンバリー帝国は大きくて軍事力の強い国だ。うちとは友好関係にあるが攻め込まれてはひとたまりもない。ロベルトをすでに、連れてか行かれてしまっていたし、我が国を戦火に晒すわけにもいかない」
確かに帝国は強い。我が国も軍事力はあるが、そんな理由で戦争をし、戦火に晒すわけにはいかない。テディ様のいうことはもっともだ。
しかし、大国のくせにプライドのためにそんなことをするのか?
「シンバレッド王国は何も処分を受けなかったのですか?」
元々の原因を作ったシンバレッド王国はどうなったのだろう?
「帝国に国を乗っ取られたよ」
「乗っ取られた?」
「あぁ、入り込まれて、今は帝国が国を動かしている。表立って発表はされていないがそのうち属国になったと発表されるだろう。シンバレッド王国は軍事力が弱い。王家も平和ボケでのんびりしていた。」
そんな、怖すぎる。
「帝国ではシンバレッドの王女と私がどこかで出会い真実の愛に目覚めた。皇子はふたりの気持ちを尊重し、ふたりを応援し、ふたりの結婚を認めた。我が国ではそんな話は流れていないが、帝国ではそう言う話になっているんだ。王女は体が弱いので婚姻式や夜会など長い時間人前に出ることはできない。結婚式も王宮のチャペルでしたと国民には伝えられた」
あぁ、そうか。そうだった、それで婚姻式をした印象が無かったんだ。
「では、正妃様はここにはいないのですか? いまどこに?」
「多分帝国の第2皇子に監禁されている」
「監禁?」
「第2皇子は自分を裏切った王女が許せなかったようだ。きっと媚薬漬けだろう」
怖い怖い怖すぎる~。
やったことの倍返しされちゃうんだ。
「でも、王太子が来ていたではありませんか?」
「あれは帝国の使者だよ。王太子と偽って参加していたんだ」
見張られているのか。
「さっき、使者にロゼにこのことを話す許可をもらった。この秘密が他にもれれば我が国は帝国から攻められ戦火になる。ロベルトは殺され、国王と私は責をおう。ロゼには話したかった。知らない方がロゼは幸せだと思う。でも私はロゼに嫌われなくない。不信感を払拭したかった。自分が可愛いからロゼをまきこんでしまった。ダメな男だ」
ちょっと待った。それって私が話したらこの国は終わるってこと?
「私が話したらどうするのですか?」
「ロゼが話したのなら仕方ないよ」
いやいや、仕方ないじゃないでしょう?
「私を信用しているということですか?」
「もちろんだ。秘密の続きはまた少しある。結婚して5年経ったら正妃は病死したと発表することになっている。そこで我が国とキンバリー帝国の約束は終わりだ。ロベルトは我が国に戻るもよし、そのままキンバリー帝国の皇女に婿入りするのもありだ。本当なら私は結婚するつもりはなかった。だからキンバリー帝国の話を受け入れたんだ」
テディ様は顔を上げて私の目をじっと見た。
「私には好きな人がいた。でもその人には婚約者がいて、私の思いは届かないと諦めていたんだ」
「そんな方がいらしたのですね。その方は今は?」
「ここにいる。私の目の前に」
へ? 私? 私なの?
テディ様の突然の告白に私は固まってしまった。
国同士の大変な問題より、私を好きだったという告白の方が私には衝撃的だった。
*次で多分最終話になると思います。
番外編でゴリクマ視点入れようか入れまいか迷い中です。
109
お気に入りに追加
2,338
あなたにおすすめの小説

【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1

その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。

毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。


あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる