初恋の人探します

金峯蓮華

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中編

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 初恋の人探し。まずは情報を集めねば。とりあえず身内から聞き取り開始!

「お母様、私の初恋の人を覚えてる?」

 まずは母に聞いてみた。母はなかなか顔が広い。

「ハンカチの君ね。今流行りの初恋の人探しをお願いするの? それはやめた方がいいわね」

 母は困り顔をしている。

「探すなら変な業者じゃなく、うちの使用人にお願いすればどうかしら? あの頃お城に出入りしていた子供でしょ? きっと見つけられると思うわ」

「でもあの時は見つからなかったわ。あれから10年以上経つし、手がかりも少ないでしょう?」

 確かにあの時も父に頼んでフレディを探してもらったが見つからなかった。

 母は相変わらず困り顔でふふふと笑った。

「あれは……お父様がやきもちを焼いてちゃんと探さなかったの。可愛いミリーをフレディなんて奴に取られてたまるかってね」

 はぁ~?! なんだそれ! 私はきっと鬼の形相だったのだろう。母はため息をついた。

「そんなに怒らないで。お父様はミリーが大好きだもの仕方ないわ。お祖父様が生きておられたら、何かわかるのにね」

 大好きとか言われてもね~。当時私はまだ5歳くらいだった。探してくれてもいいじゃないの。

「とにかく、私が自分で探してみます。無理ならご縁がなかったとあきらめます」

 それからしばらくの間、私は父と口を利くのをやめた。

 数日後、父から「フレディ探しに協力するから許してくれ」と謝られ、仕方なく許すことにした。

 母の話だと、父はかなり凹んでいたらしい。溺愛する娘に嫌われちゃったら死ぬしかないとほざいていたらしい。母は呆れた顔をしていた。

 父はなかなかできる男らしいが、私がからむとポンコツになるそうだ。そんなことを言われても知らんがなだ。


 早速、父から祖父と一緒に働いていた人がまだ職場にいるからフレディを知らないか、聞いてみようかと言われた。父がイマイチ信用できないので私も同席させてもらうことにした。

 その人は当時も今も祖父や父の補佐をしているという。

「あの頃も今も、色々な人がここにはくるからね。どこかの子息だろうから王立学校に通っているのではないかな? そちらから探してみたらどうだろう?」

 なるほど学校か。私は淑女学校に通っている。淑女学校は貴族の令嬢が通う女子のみの学校。こんなことなら王立学校に通えば良かった。

 フレディは私と同じくらいの年齢だと思う。
でも、デビュタントボウルの時、フレディらしき人はいなかった。だからちょっと年上なのかもしれない。

 たしか、シンシアにひとつ年上のお兄様がいたはず。

 私はシンシアに学校でフレディらしき人がいないかお兄様に聞いてもらうことにした。

「フレディか。子供の頃に大柄なら今も大きいよな? それに王宮にいたとなると、それなりの身分か、親が文官が騎士かもしれない。あいにく、私の学年にはそんなフレディはいない。まぁ、気を落とすな。ちょっとまわりに聞いてみてやるよ」

「こう見えてお兄様は交流が広いから大丈夫よ。アメリアの初恋の人探し、楽しみだわ~」

 シンシアの家は両親は仲が良くないが、そのせいか兄妹の仲はとても良い。シスコンのお兄様は妹のお願いはなんでも聞いてくれるそうだ。私は弟ばかりなので羨ましい。

「でも、夜会なんかで会っているはずじゃない?」

「確かにそうかと思って、出席した夜会では探してるんだけど、まだ遭遇してないのよね」

 私はこっそり、デビュタントや他の夜会でも、フレディらしき人をさがしているのだが、まだ見つからないのだ。


 私の初恋の人探しのことを聞きつけたリリアナがうちにやってきた。

「もぅ、私にだけ内緒なんてひどいわ。私にも協力させて!」

「内緒にしていたわけじゃないのよ。ありがとう。でも情報が少ないの」

「貴族名鑑は? 全貴族が載っているわ」

「うん。見ているんだけど、多すぎてなかなか……」

「協力するわよ!」

 ということで、シンシアも巻き込み、3人で貴族名鑑からフレディを探すことになった。

 フレディという名前は思ったよりたくさんいた。しかし、私と同年齢かもしくは少し上にフレディはいなかった。

「見つからないわね」

 シンシアがため息をつく。 

 フレディ捜索は泥沼化していった。


◇◇◇


「なぁ、ミリー、フレディを本職のに依頼しようか? ここまで見つからないとなると我々では無理だ」

 父の提案に驚いた。

「本職とは胡散臭いハツサガの商会ですか?」

 父は慌てて顔の前で手を振る。

「違う違う。暗部だよ」

「暗部?」

「陛下にちらっと話したら、暗部のディール家に頼んでやろうかっておっしゃってさ」

 父はこう見えて宰相だったりする。そりゃ陛下と世間話するわなぁ。

 でも、娘の初恋の人探しを国の暗部に託すなんて……。

 いや、ないない。断ろう!

「それで、明日王宮に来いと言われた。暗部の担当者と顔合わせらしい。明日は私と一緒に登城するからな」

 え? え? え~!!

「それなに、断れないの。いやそんな。えらいことになったわ」

 私の初恋の人探しはとうとう国王陛下や国の暗部を巻き込むことになってしまった。
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