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終わりと始まり
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元ペルマックス侯爵もプリシラも捕まり、それぞれの刑も決まった。
元ペルマックス侯爵はすでに離縁されていたので、ペルマックス侯爵家もセレジスト男爵家もお咎め無しとなった。
ガランタミン国は国絡みのか悪事が暴かれ、アルプラゾラム王国が介入し、国王並びに王族は処刑や幽閉など処分され、アルプラゾラム王国の属国となった。
『ミオリア、ミオリア』
この声はミランダ。
『終わったわね。色々ありがとう』
「どういたしまして。でも今度はプリシラが復讐しにこない?」
『大丈夫よ。神は被害者の望みは聞くけど加害者の望みは叶えてくれないの。それにプリシラは地獄行きだから神には会えないわ』
ミランダはクスクス笑う。
『ミオリアはこれからアルプラゾラム王国に行くのでしょう? あちらには我がノルバスク家の末裔がいるから頼りなさいよ。もうみんな100年前の記憶はだんだんフェードアウトするけど、ノルバスク家にとってミオリアは大事な存在みたいな感覚は残ってるからね』
そうなのか?
「感覚としては残るの?」
『そうよ。好き嫌いとか、合う合わないとかね』
そういうものなのか。
『もう会うこともないと思うけど、ミオリアは私の分も幸せになってね。絶対誰かを好きになって愛し愛されてね。それが私の願い。私も恋をして、愛し愛されかったわ。じゃあね。本当にありがとう』
ミランダはニコニコと微笑み、手を振りながら消えていった。
学園ではまた、みんなでランチを摂るようになった。
復学したマヌエラも一緒だ。
マヌエラとラートガー殿下は仲睦まじい。ふたりはもうヘンドリック殿下の記憶もアルマの記憶も消えてしまっているようだ。
「皆さん、父と義妹がご迷惑をかけてしまい本当に申し訳ありません。私はラート様の婚約者をご辞退したのですが、了承してもらえなくて……」
マヌエラは申し訳なさそうにしている。
「了承などするわけがないだろう。あの男はすでに離縁しペルマックス侯爵家とは何の関係もない。しかも義母上に長年に渡り、毒を盛っていたとは許せない。私はマヌエラ以外娶る気はないよ」
ラートガー殿下は今回の件で一皮剥けたようだ。
ペルマックス侯爵家の後継は殿下とマヌエラの第2子以降の誰かになるそうだ。
ディアナとコンラート様は相変わらずケンカしながら仲がいい。
いずれこの国の暗部のトップとして君臨するのだろう。
「ミミ、私はミミのことが好きだ。私と婚約してもらえないか」
リーンハルト様に求婚された。
「リーンハルト様のお気持ちは嬉しいです。でも今はまだリーンハルト様はブラッドリー・ノルバスクの記憶があるでしょう? 私のこともミオリアとしてみているのか、ミランダとして見ているのかわからないですよね。だからリーンハルト様の中からブラッドリー兄様の記憶が消えて、私をミオリア・リスミーとして見てくれるようになってもまだ私を好ましく思ってくださるなら、その時にもう一度求婚してくださいませ。でもOKするかどうかはわからないですよ」
私は思っている事を言ってみた。だってそうでしょう?
「わかった。ブラッドリーの記憶は徐々に薄くなっている。きっとそのうち全て忘れてしまうだろう。それまでは今まで通り友として一緒にいてくれないか」
リーンハルト様は私に手を差し出した。
「わかりました。でも条件があります」
「条件?」
「はい。私のことをミミと呼ぶのはやめて下さい。ミミはブラッドリー兄様がミランダに付けた愛称です。私はミランダではありません。ミオリアです。私もリーンハルト様のことをリー様とお呼びするのはやめますね」
「わかった。ではミオと呼んでもいいか? 私のことは、そうだなぁ、リーンと呼んでくれるか?」
「はい。承知いたしました」
私はリーンハルト様の手を取った。
それから、ミランダの言うとおり私達は100年前の生まれ変わった人物の記憶がフェードアウトしていった。私はミランダのことを日記に書いていたのだが、その日記も消えてしまった。本当にもう終わったのだな。
「ミオリア、アルプラゾラムに留学するの?」
学園に着くなりディアナが走ってきた。
「ええ、前から陛下に打診されていたみたいなの。先に行っていたカミルと入れ替わりで今度は私が行くことになったの。鑑定魔法や攻撃魔法、あと魔法医療、魔法薬を学んで資格を取得してくるわ」
「転移魔法で行くんでしょ?」
「そうよ」
「じゃあ、すぐに戻ってこれるわね。私も遊びに行くわ。伝書バードも飛ばすわ」
ディアナが来ると言うと何か調べに来るのかと思ってしまう。
あの件以来、ディアナのイメージはすっかり変わってしまった。でもより一層信頼感は増した。親友に変わりはない。
「リーンハルト様もくっついてくるのかしらね?」
ディアナは面白そうにクスクス笑っている。
「どうかしらね? 私の預かり先はリーンハルト様のお母様のご実家らしいの。カミルもそうだったみたい。とても良い人達と言っていたから楽しみだわ」
私は来週にはアルプラゾラム王国に向けて出立する。
と言っても転移魔法だから一瞬だ。
アルプラゾラム王国で魔法を学ぶのは今からワクワクする。
ミランダにはああ言われたが、私はまだまだ恋や愛よりやりたいことがいっぱいだ。
アルプラゾラム王国……楽しみだわ。
*次回からは舞台はアルプラゾラム王国になります。
元ペルマックス侯爵はすでに離縁されていたので、ペルマックス侯爵家もセレジスト男爵家もお咎め無しとなった。
ガランタミン国は国絡みのか悪事が暴かれ、アルプラゾラム王国が介入し、国王並びに王族は処刑や幽閉など処分され、アルプラゾラム王国の属国となった。
『ミオリア、ミオリア』
この声はミランダ。
『終わったわね。色々ありがとう』
「どういたしまして。でも今度はプリシラが復讐しにこない?」
『大丈夫よ。神は被害者の望みは聞くけど加害者の望みは叶えてくれないの。それにプリシラは地獄行きだから神には会えないわ』
ミランダはクスクス笑う。
『ミオリアはこれからアルプラゾラム王国に行くのでしょう? あちらには我がノルバスク家の末裔がいるから頼りなさいよ。もうみんな100年前の記憶はだんだんフェードアウトするけど、ノルバスク家にとってミオリアは大事な存在みたいな感覚は残ってるからね』
そうなのか?
「感覚としては残るの?」
『そうよ。好き嫌いとか、合う合わないとかね』
そういうものなのか。
『もう会うこともないと思うけど、ミオリアは私の分も幸せになってね。絶対誰かを好きになって愛し愛されてね。それが私の願い。私も恋をして、愛し愛されかったわ。じゃあね。本当にありがとう』
ミランダはニコニコと微笑み、手を振りながら消えていった。
学園ではまた、みんなでランチを摂るようになった。
復学したマヌエラも一緒だ。
マヌエラとラートガー殿下は仲睦まじい。ふたりはもうヘンドリック殿下の記憶もアルマの記憶も消えてしまっているようだ。
「皆さん、父と義妹がご迷惑をかけてしまい本当に申し訳ありません。私はラート様の婚約者をご辞退したのですが、了承してもらえなくて……」
マヌエラは申し訳なさそうにしている。
「了承などするわけがないだろう。あの男はすでに離縁しペルマックス侯爵家とは何の関係もない。しかも義母上に長年に渡り、毒を盛っていたとは許せない。私はマヌエラ以外娶る気はないよ」
ラートガー殿下は今回の件で一皮剥けたようだ。
ペルマックス侯爵家の後継は殿下とマヌエラの第2子以降の誰かになるそうだ。
ディアナとコンラート様は相変わらずケンカしながら仲がいい。
いずれこの国の暗部のトップとして君臨するのだろう。
「ミミ、私はミミのことが好きだ。私と婚約してもらえないか」
リーンハルト様に求婚された。
「リーンハルト様のお気持ちは嬉しいです。でも今はまだリーンハルト様はブラッドリー・ノルバスクの記憶があるでしょう? 私のこともミオリアとしてみているのか、ミランダとして見ているのかわからないですよね。だからリーンハルト様の中からブラッドリー兄様の記憶が消えて、私をミオリア・リスミーとして見てくれるようになってもまだ私を好ましく思ってくださるなら、その時にもう一度求婚してくださいませ。でもOKするかどうかはわからないですよ」
私は思っている事を言ってみた。だってそうでしょう?
「わかった。ブラッドリーの記憶は徐々に薄くなっている。きっとそのうち全て忘れてしまうだろう。それまでは今まで通り友として一緒にいてくれないか」
リーンハルト様は私に手を差し出した。
「わかりました。でも条件があります」
「条件?」
「はい。私のことをミミと呼ぶのはやめて下さい。ミミはブラッドリー兄様がミランダに付けた愛称です。私はミランダではありません。ミオリアです。私もリーンハルト様のことをリー様とお呼びするのはやめますね」
「わかった。ではミオと呼んでもいいか? 私のことは、そうだなぁ、リーンと呼んでくれるか?」
「はい。承知いたしました」
私はリーンハルト様の手を取った。
それから、ミランダの言うとおり私達は100年前の生まれ変わった人物の記憶がフェードアウトしていった。私はミランダのことを日記に書いていたのだが、その日記も消えてしまった。本当にもう終わったのだな。
「ミオリア、アルプラゾラムに留学するの?」
学園に着くなりディアナが走ってきた。
「ええ、前から陛下に打診されていたみたいなの。先に行っていたカミルと入れ替わりで今度は私が行くことになったの。鑑定魔法や攻撃魔法、あと魔法医療、魔法薬を学んで資格を取得してくるわ」
「転移魔法で行くんでしょ?」
「そうよ」
「じゃあ、すぐに戻ってこれるわね。私も遊びに行くわ。伝書バードも飛ばすわ」
ディアナが来ると言うと何か調べに来るのかと思ってしまう。
あの件以来、ディアナのイメージはすっかり変わってしまった。でもより一層信頼感は増した。親友に変わりはない。
「リーンハルト様もくっついてくるのかしらね?」
ディアナは面白そうにクスクス笑っている。
「どうかしらね? 私の預かり先はリーンハルト様のお母様のご実家らしいの。カミルもそうだったみたい。とても良い人達と言っていたから楽しみだわ」
私は来週にはアルプラゾラム王国に向けて出立する。
と言っても転移魔法だから一瞬だ。
アルプラゾラム王国で魔法を学ぶのは今からワクワクする。
ミランダにはああ言われたが、私はまだまだ恋や愛よりやりたいことがいっぱいだ。
アルプラゾラム王国……楽しみだわ。
*次回からは舞台はアルプラゾラム王国になります。
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