【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華

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今度こそ(ラートガー視点)

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 なんとかミオリア・リスミー嬢と接点を持ちたくて、側近のコンラートにランチの誘いを頼んだ。

 私が前世の記憶が戻ったのは、少し前にリスミー嬢がマヌエラに階段の上から押され、落下する姿を見た時だった。
 人が落下する姿など初めて目にし、足がすくんで動けなかった。

 私の後ろにいたリーンハルトが凄い勢いで走り出し、落下してくるリスミー嬢を抱き止めた。

 その時、私の頭に雷が落ちたような衝撃が走り、頭の中にある映像が流れ込んできた。


「ミランダ・ノルバスク! お前との婚約を破棄する!」

「理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「理由? それは自分が1番わかっているであろう。この可愛いキャロラインを虐め、殺害未遂までした。そんな悪女とは結婚するつもりはない」

「私は何もしておりませんわ。証拠はあるのですか」

「証拠? このキャロラインがそう申しておる」

「それだけですか?」

「それだけとはどういうことだ。キャロラインが嘘を申すと言うのか!」

「証拠が証言だけとは。きちんとお調べ下さいませ!」

「ええい、うるさい! この悪女め! 私はミランダ・ノルバスクと婚約を破棄し、このキャロラインと結婚する。お前は貴族籍を剥奪し、国外追放とする! 連れて行け!」

 なんだこれは?


 周りは皆、誰も私のことなど気にしていない。私は喧騒から離れ王家のサロンに向かった。

 サロンでソファーに腰掛けると、メイドがお茶を出してくれたので、ひと口飲んだ。

 サロンまでの道のりを歩きながら、頭の中はミランダに出会った時からあの最初に見えた断罪しているところ、そして断罪後の映像がまるで物語のように流れ込んできたのだ。

 前世か。

 私は前世でグランダキシン王国の王太子、ヘンドリックス・グランダキシンだったことを思い出した。

 ミオリア・リスミー、君はミランダなのか? どうしてもそうとしか思えない。

 それまでリスミー嬢にはなんの興味もなかった。

 婚約者のマヌエラがリスミー嬢は私に懸想していて、婚約者であるマヌエラが邪魔だから嫌がらせをされていると私に言っていたが、私とリスミー嬢は何の接点も無い。
 影をつけてみたが、リスミー嬢が私を懸想しているという事実もマヌエラに嫌がらせをしている事実も全くなく、むしろ嫌がらせをしているのはマヌエラの方だった。

 マヌエラは私にリスミー嬢を処罰して欲しいと泣きついてきたが、そんな事実はないので無視していた。

 私はマヌエラが嫌いだった。何をされたわけでもなかったが最初から生理的に受け付けなかった。触られると鳥肌が立つ。

 それに父親のペルマックス侯爵のことも嫌いだった。

 きっと侯爵に、父が何か弱みを握られて、私の婚約者にしたのだろう。母は未だに反対している。

 リスミー嬢、君がミランダなら、私は君に赦しを乞いたい。
 全て私が悪かった。取り返しのつかないことをしてしまった。

 ともに今、この場に生まれ変わっていたのは神様が私にやり直すチャンスをくれたのかもしれない。

 君がミランダなら、私はもう間違えない。今度こそ君を幸せにする。今度こそ君を王妃にする。

 コンラートが戻ってきたようだ。

「殿下、リスミー嬢はペルマックス嬢に誤解されるので遠慮したいと仰ったのですが、ディアナが側にいて、自分も一緒に行くからとリスミー嬢を説得してくれました。ディアナが一緒でもよろしいですか?」

 ディアナが一緒か。まぁ仕方ない。

「構わない」

「何の話ですか? リスミー嬢とか、ディアナとか聞こえてきたのですが」

 私達の話がちょうどサロンに入ってきたリーンハルトの耳に入ったようだ。

「婚約者のしでかしたことのお詫びにリスミー嬢をランチにお誘いしたんだ。辞退されたが、ディアナが自分も一緒にと誘ってくれたようで来てくれることになった」

 リーンハルトは含み笑いをしている。

「それなら私もご一緒しましょう」

 相変わらず圧が凄い。

 リーンハルトは宰相の息子で私の側近だ。幼い頃からよく知っている。

 味方にすると心強いが敵に回すととてつもなく恐ろしい男だ。

 まさか、こいつリスミー嬢を狙っているのか?

 まずい、これはまずいぞ。

「そうだな。お前はリスミー嬢を助けたのだしな」

 私は誰にもわからないように小さくため息をついた。


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