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刺繍のハンカチ
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「ディアナ、今日の放課後って時間ある? 話しておきたいことがあるの」
「何? やっぱりモーバー卿のこと?」
なんでモーバー卿のことがでてくるんだ。
「違うわよ。さっき言っていたグランダキシン王国がらみの話。ディアナには話しておいた方が良い気がするの」
前世なんて信じないかもしれないがディアナには話しておいた方が良い気がする。
まぁ、誰かに聞いて欲しいのだ。
「いいわよ。ならうちに来る? あまり聞かれない方がいい気がするし、うちなら安心だからね」
確かに安心だ。
私は帰りにディアナの家に寄ることにした。
お昼休みに一昨日のお礼を言おうとモーバー卿の教室に向かった。
何かお礼をと思い、ハンカチにイニシャルを刺繍してみた。私は刺繍が得意なので、短時間でささっと刺してみたのだ。
でもよくよく考えたら婚約者でもないのに刺繍ハンカチはダメかな。
受け取ってもらえなければまぁ、それでも良い。要するに感謝しているという気持ちが伝わればいいのだ。
教室の入口から覗くと、後ろの方の席にモーバー卿は座っていた。
こっちを見てと念じてみる。
うそ! ほんとにこっちを見た。
モーバー卿は驚いたような顔をして、私を見ながら自分を指差す。
私は頷いた。
モーバー卿は席を立ち私のところまで来てくれた。
「一昨日はありがとうございました」
「もう大丈夫なのか?」
「はい。すっかり元気になりました。これ、お礼です。いらなかったら捨てて下さい」
「お礼などいいのに。でもせっかくなのでいただいておくよ。開けてみても?」
良かった。受け取ってくれた。
私がはいと返事をするとモーバー卿は包みをあけ、ハンカチを取り出した。
ハンカチを見たモーバー卿はなんだか難しい顔をしている。
やっぱり刺繍ハンカチなんて迷惑だったかな?
「この刺繍は君が?」
「はい。私刺繍が得意なんです。イニシャルなら持ってもらえるかと思ったのですが、やっぱりご迷惑でしたか」
「いや、嬉しいよ。ありがとう。一生大事にする」
いやいや、一生大事にしてもらわなくていいのよ。普段使いでいいの。
「今度は私にこのハンカチのお礼をさせてくれないか?」
お礼のお礼?
「いえ、これはお礼ですので、お気遣いなく」
「あの時の礼は肩に回復魔法をかけてもらっている。だからこんな素晴らしい物をもらって何もしないわけにはいかない」
あちゃー、素晴らしいってただの刺繍なのに。なんだか面倒なことになったな。
「また、日時はおって連絡させてもらう。教室まで送って行こう」
「ひとりで大丈夫です。階段を降りるだけですので」
「ダメだ。階段は危ない」
やっぱり圧がすごい。断りきれず送ってもらうことになった。
「やっぱり護衛がいるな」
え? 独り言か。護衛って言ったな。
そんなのいらないわ。
教室に着いたのでお礼を言って中に入った。
ディアナがニヤニヤしている。
「どこにいったのかと思ったらモーバー卿と昼休みデートだったの?」
「違うわよ。一昨日のお礼を言いに行っただけ」
「お礼?」
「うん。助けてくれたお礼をちゃんと言ってなかったからね。感謝の気持ちの品を渡そうと思って……」
ディアナは呆れた顔をしている。
「あのね、ミオリア。その気がないならそんなことしちゃだめよ。モーバー卿は間違いなくミオリアに気があるわ」
「まさか~」
そんなことあるわけないわ。
午後の授業がはじまる鐘が鳴ったので、私は自分の席に戻った。
「何? やっぱりモーバー卿のこと?」
なんでモーバー卿のことがでてくるんだ。
「違うわよ。さっき言っていたグランダキシン王国がらみの話。ディアナには話しておいた方が良い気がするの」
前世なんて信じないかもしれないがディアナには話しておいた方が良い気がする。
まぁ、誰かに聞いて欲しいのだ。
「いいわよ。ならうちに来る? あまり聞かれない方がいい気がするし、うちなら安心だからね」
確かに安心だ。
私は帰りにディアナの家に寄ることにした。
お昼休みに一昨日のお礼を言おうとモーバー卿の教室に向かった。
何かお礼をと思い、ハンカチにイニシャルを刺繍してみた。私は刺繍が得意なので、短時間でささっと刺してみたのだ。
でもよくよく考えたら婚約者でもないのに刺繍ハンカチはダメかな。
受け取ってもらえなければまぁ、それでも良い。要するに感謝しているという気持ちが伝わればいいのだ。
教室の入口から覗くと、後ろの方の席にモーバー卿は座っていた。
こっちを見てと念じてみる。
うそ! ほんとにこっちを見た。
モーバー卿は驚いたような顔をして、私を見ながら自分を指差す。
私は頷いた。
モーバー卿は席を立ち私のところまで来てくれた。
「一昨日はありがとうございました」
「もう大丈夫なのか?」
「はい。すっかり元気になりました。これ、お礼です。いらなかったら捨てて下さい」
「お礼などいいのに。でもせっかくなのでいただいておくよ。開けてみても?」
良かった。受け取ってくれた。
私がはいと返事をするとモーバー卿は包みをあけ、ハンカチを取り出した。
ハンカチを見たモーバー卿はなんだか難しい顔をしている。
やっぱり刺繍ハンカチなんて迷惑だったかな?
「この刺繍は君が?」
「はい。私刺繍が得意なんです。イニシャルなら持ってもらえるかと思ったのですが、やっぱりご迷惑でしたか」
「いや、嬉しいよ。ありがとう。一生大事にする」
いやいや、一生大事にしてもらわなくていいのよ。普段使いでいいの。
「今度は私にこのハンカチのお礼をさせてくれないか?」
お礼のお礼?
「いえ、これはお礼ですので、お気遣いなく」
「あの時の礼は肩に回復魔法をかけてもらっている。だからこんな素晴らしい物をもらって何もしないわけにはいかない」
あちゃー、素晴らしいってただの刺繍なのに。なんだか面倒なことになったな。
「また、日時はおって連絡させてもらう。教室まで送って行こう」
「ひとりで大丈夫です。階段を降りるだけですので」
「ダメだ。階段は危ない」
やっぱり圧がすごい。断りきれず送ってもらうことになった。
「やっぱり護衛がいるな」
え? 独り言か。護衛って言ったな。
そんなのいらないわ。
教室に着いたのでお礼を言って中に入った。
ディアナがニヤニヤしている。
「どこにいったのかと思ったらモーバー卿と昼休みデートだったの?」
「違うわよ。一昨日のお礼を言いに行っただけ」
「お礼?」
「うん。助けてくれたお礼をちゃんと言ってなかったからね。感謝の気持ちの品を渡そうと思って……」
ディアナは呆れた顔をしている。
「あのね、ミオリア。その気がないならそんなことしちゃだめよ。モーバー卿は間違いなくミオリアに気があるわ」
「まさか~」
そんなことあるわけないわ。
午後の授業がはじまる鐘が鳴ったので、私は自分の席に戻った。
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