【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華

文字の大きさ
上 下
6 / 57

刺繍のハンカチ

しおりを挟む
「ディアナ、今日の放課後って時間ある? 話しておきたいことがあるの」

「何? やっぱりモーバー卿のこと?」

 なんでモーバー卿のことがでてくるんだ。

「違うわよ。さっき言っていたグランダキシン王国がらみの話。ディアナには話しておいた方が良い気がするの」

 前世なんて信じないかもしれないがディアナには話しておいた方が良い気がする。

 まぁ、誰かに聞いて欲しいのだ。

「いいわよ。ならうちに来る? あまり聞かれない方がいい気がするし、うちなら安心だからね」

 確かに安心だ。

 私は帰りにディアナの家に寄ることにした。


 お昼休みに一昨日のお礼を言おうとモーバー卿の教室に向かった。

 何かお礼をと思い、ハンカチにイニシャルを刺繍してみた。私は刺繍が得意なので、短時間でささっと刺してみたのだ。
 でもよくよく考えたら婚約者でもないのに刺繍ハンカチはダメかな。

 受け取ってもらえなければまぁ、それでも良い。要するに感謝しているという気持ちが伝わればいいのだ。

 教室の入口から覗くと、後ろの方の席にモーバー卿は座っていた。

 こっちを見てと念じてみる。

 うそ! ほんとにこっちを見た。

 モーバー卿は驚いたような顔をして、私を見ながら自分を指差す。

 私は頷いた。

 モーバー卿は席を立ち私のところまで来てくれた。

「一昨日はありがとうございました」

「もう大丈夫なのか?」

「はい。すっかり元気になりました。これ、お礼です。いらなかったら捨てて下さい」

「お礼などいいのに。でもせっかくなのでいただいておくよ。開けてみても?」

 良かった。受け取ってくれた。

 私がはいと返事をするとモーバー卿は包みをあけ、ハンカチを取り出した。

 ハンカチを見たモーバー卿はなんだか難しい顔をしている。

 やっぱり刺繍ハンカチなんて迷惑だったかな?

「この刺繍は君が?」

「はい。私刺繍が得意なんです。イニシャルなら持ってもらえるかと思ったのですが、やっぱりご迷惑でしたか」

「いや、嬉しいよ。ありがとう。一生大事にする」

 いやいや、一生大事にしてもらわなくていいのよ。普段使いでいいの。

「今度は私にこのハンカチのお礼をさせてくれないか?」

 お礼のお礼?

「いえ、これはお礼ですので、お気遣いなく」

「あの時の礼は肩に回復魔法をかけてもらっている。だからこんな素晴らしい物をもらって何もしないわけにはいかない」

 あちゃー、素晴らしいってただの刺繍なのに。なんだか面倒なことになったな。

「また、日時はおって連絡させてもらう。教室まで送って行こう」

「ひとりで大丈夫です。階段を降りるだけですので」

「ダメだ。階段は危ない」

 やっぱり圧がすごい。断りきれず送ってもらうことになった。

「やっぱり護衛がいるな」

 え? 独り言か。護衛って言ったな。
そんなのいらないわ。

 
 教室に着いたのでお礼を言って中に入った。

 ディアナがニヤニヤしている。

「どこにいったのかと思ったらモーバー卿と昼休みデートだったの?」

「違うわよ。一昨日のお礼を言いに行っただけ」

「お礼?」

「うん。助けてくれたお礼をちゃんと言ってなかったからね。感謝の気持ちの品を渡そうと思って……」

 ディアナは呆れた顔をしている。

「あのね、ミオリア。その気がないならそんなことしちゃだめよ。モーバー卿は間違いなくミオリアに気があるわ」

「まさか~」

 そんなことあるわけないわ。

 午後の授業がはじまる鐘が鳴ったので、私は自分の席に戻った。

しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

処理中です...