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学園で親友と会いました。
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休みが明け、今日から学園だ。私を突き落としたペルマックス嬢はどうなっているのだろう?
モーバー卿にもお礼を言わなければならない。
「ミオリア、おはよう!」
馬車を降り、学園内に入ると従姉妹で親友のディアナに声をかけられた。
「一昨日は大変だったわね。もう大丈夫?」
「ありがとう。もう大丈夫」
「あれから大変だったのよ」
何が大変だったのだろう?
「ペルマックス嬢が騎士に連れて行かれたのだけど、自分は無実だ。たまたま側にいたが、リスミー嬢は勝手に足を踏み外して落ちただけ、自分は関係ないってヒステリーみたいに叫んでたらしいわ」
「そうなのね。でも確かに押されたんだけどなぁ」
「押されたわよ。間違いない。モーバー卿もそう証言していたわ。でも下にいたから見えないはずだって。ペルマックス嬢、なかなかね」
ディアナはため息をついた。
「今回はうちの親にも動いてもらうように頼んだわ。うちの影もつけるからね」
影? いやいや、そこまでしてもらわなくても大丈夫。
ディアナはこの国の暗部を取り仕切っているインタール公爵家の令嬢だ。
私の母とディアナの父親が兄妹で同じ年の私達は小さい頃から仲が良かった。
家が家だけにディアナはかなり強い。もちろん私の母もめちゃくちゃ強い。
ディアナは爵位も公爵令嬢なので、ペルマックス嬢もディアナと一緒にいる時は絡んでこない。
「そういえば、モーバー卿とミオリアって前から仲良かったの?」
ディアナもニヤニヤしながら聞いてくる。
「仲良かったって、挨拶くらいしか話した事なかったわよ」
「そうなの。じゃああいつの片思いか」
「片思い? 無い無い」
エマもディアナもなぜそんなことばかり言うのだろう?
「モーバー卿はたまたま助けてくれただけよ」
ディアナは呆れたような顔で私を見た。
「たまたま助けた? あの男がそんなわけないわよ。もしも私が階段から突き落とされてもきっと知らん顔してるわよ」
「ディアナはモーバー卿のことよく知ってるの?」
「まぁね。暗部の家と宰相の家だから裏の繋がりね。モーバー卿はなかなかの腹黒策士よ。まぁでもそれくらいじゃないと次期宰相にはなれないけどね」
腹黒策士って? モーバー卿はそんな風には見えなかったけどなぁ。
「そんなことより、ディアナ、グランダキシン王国って知ってる?」
私はディアナに聞いてみた。ディアナは情報通だから何か知ってるかもしれない。
「グランダキシン王国? 確か100年くらい前にリーマス王国に攻め込まれて属国にされた国ね。そのあとリーマス王国はうちに併合されたから今は元グランダキシン王国はうちの東の端の方じゃないかしら。グランダキシン王国に何かあるの?」
「うん、ちょっと調べたいことがあってね」
「ふ~ん、そんなこと言って話をはぐらかそうとする。モーバー卿との関係をちゃんと教えなさいよ!」
本当になんでもないのにディアナはしつこい。
あっ、前からペルマックス嬢と殿下がこちらに向かって歩いてきた。
ペルマックス嬢は私達を見るなり、殿下の腕を掴みしなだれかかった。
「あら、リスミー嬢にインタール嬢、また私を貶める相談でもしていらっしゃるのね。ラート様、私は何もしていないのに、このふたりにいつも冤罪をかけられておりますの。この間の階段から落ちたこともこの女の自作自演ですのよ。ラート様、騙されないで下さいね」
ラートガー殿下は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「リスミー嬢、身体の具合はどうだ」
殿下は表情を緩め声をかけてきた。
「お気遣いいただだきありがとうございます。モーバー卿のおかげで特に怪我もありませんでした」
「リーンハルトのおかげか」
殿下は小さな声でつぶやくと、私の横を通り過ぎた。
「リスミー嬢、また会おう」
すれ違い様にそう言われた。後ろからペルマックス嬢が慌ててついていっている。
「あんな女と婚約なんかさせられて殿下はよっぽど前世で酷い事をしたのね」
ディアナは口の端を上げている。
前世でよっぽど酷いことって? 私は思わずディアナの顔を直視していた。
モーバー卿にもお礼を言わなければならない。
「ミオリア、おはよう!」
馬車を降り、学園内に入ると従姉妹で親友のディアナに声をかけられた。
「一昨日は大変だったわね。もう大丈夫?」
「ありがとう。もう大丈夫」
「あれから大変だったのよ」
何が大変だったのだろう?
「ペルマックス嬢が騎士に連れて行かれたのだけど、自分は無実だ。たまたま側にいたが、リスミー嬢は勝手に足を踏み外して落ちただけ、自分は関係ないってヒステリーみたいに叫んでたらしいわ」
「そうなのね。でも確かに押されたんだけどなぁ」
「押されたわよ。間違いない。モーバー卿もそう証言していたわ。でも下にいたから見えないはずだって。ペルマックス嬢、なかなかね」
ディアナはため息をついた。
「今回はうちの親にも動いてもらうように頼んだわ。うちの影もつけるからね」
影? いやいや、そこまでしてもらわなくても大丈夫。
ディアナはこの国の暗部を取り仕切っているインタール公爵家の令嬢だ。
私の母とディアナの父親が兄妹で同じ年の私達は小さい頃から仲が良かった。
家が家だけにディアナはかなり強い。もちろん私の母もめちゃくちゃ強い。
ディアナは爵位も公爵令嬢なので、ペルマックス嬢もディアナと一緒にいる時は絡んでこない。
「そういえば、モーバー卿とミオリアって前から仲良かったの?」
ディアナもニヤニヤしながら聞いてくる。
「仲良かったって、挨拶くらいしか話した事なかったわよ」
「そうなの。じゃああいつの片思いか」
「片思い? 無い無い」
エマもディアナもなぜそんなことばかり言うのだろう?
「モーバー卿はたまたま助けてくれただけよ」
ディアナは呆れたような顔で私を見た。
「たまたま助けた? あの男がそんなわけないわよ。もしも私が階段から突き落とされてもきっと知らん顔してるわよ」
「ディアナはモーバー卿のことよく知ってるの?」
「まぁね。暗部の家と宰相の家だから裏の繋がりね。モーバー卿はなかなかの腹黒策士よ。まぁでもそれくらいじゃないと次期宰相にはなれないけどね」
腹黒策士って? モーバー卿はそんな風には見えなかったけどなぁ。
「そんなことより、ディアナ、グランダキシン王国って知ってる?」
私はディアナに聞いてみた。ディアナは情報通だから何か知ってるかもしれない。
「グランダキシン王国? 確か100年くらい前にリーマス王国に攻め込まれて属国にされた国ね。そのあとリーマス王国はうちに併合されたから今は元グランダキシン王国はうちの東の端の方じゃないかしら。グランダキシン王国に何かあるの?」
「うん、ちょっと調べたいことがあってね」
「ふ~ん、そんなこと言って話をはぐらかそうとする。モーバー卿との関係をちゃんと教えなさいよ!」
本当になんでもないのにディアナはしつこい。
あっ、前からペルマックス嬢と殿下がこちらに向かって歩いてきた。
ペルマックス嬢は私達を見るなり、殿下の腕を掴みしなだれかかった。
「あら、リスミー嬢にインタール嬢、また私を貶める相談でもしていらっしゃるのね。ラート様、私は何もしていないのに、このふたりにいつも冤罪をかけられておりますの。この間の階段から落ちたこともこの女の自作自演ですのよ。ラート様、騙されないで下さいね」
ラートガー殿下は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「リスミー嬢、身体の具合はどうだ」
殿下は表情を緩め声をかけてきた。
「お気遣いいただだきありがとうございます。モーバー卿のおかげで特に怪我もありませんでした」
「リーンハルトのおかげか」
殿下は小さな声でつぶやくと、私の横を通り過ぎた。
「リスミー嬢、また会おう」
すれ違い様にそう言われた。後ろからペルマックス嬢が慌ててついていっている。
「あんな女と婚約なんかさせられて殿下はよっぽど前世で酷い事をしたのね」
ディアナは口の端を上げている。
前世でよっぽど酷いことって? 私は思わずディアナの顔を直視していた。
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