【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華

文字の大きさ
上 下
5 / 57

学園で親友と会いました。

しおりを挟む
 休みが明け、今日から学園だ。私を突き落としたペルマックス嬢はどうなっているのだろう?

 モーバー卿にもお礼を言わなければならない。

「ミオリア、おはよう!」

 馬車を降り、学園内に入ると従姉妹で親友のディアナに声をかけられた。

「一昨日は大変だったわね。もう大丈夫?」

「ありがとう。もう大丈夫」

「あれから大変だったのよ」

 何が大変だったのだろう?

「ペルマックス嬢が騎士に連れて行かれたのだけど、自分は無実だ。たまたま側にいたが、リスミー嬢は勝手に足を踏み外して落ちただけ、自分は関係ないってヒステリーみたいに叫んでたらしいわ」

「そうなのね。でも確かに押されたんだけどなぁ」

「押されたわよ。間違いない。モーバー卿もそう証言していたわ。でも下にいたから見えないはずだって。ペルマックス嬢、なかなかね」

 ディアナはため息をついた。

「今回はうちの親にも動いてもらうように頼んだわ。うちの影もつけるからね」

 影? いやいや、そこまでしてもらわなくても大丈夫。

 ディアナはこの国の暗部を取り仕切っているインタール公爵家の令嬢だ。
 私の母とディアナの父親が兄妹で同じ年の私達は小さい頃から仲が良かった。

 家が家だけにディアナはかなり強い。もちろん私の母もめちゃくちゃ強い。
 ディアナは爵位も公爵令嬢なので、ペルマックス嬢もディアナと一緒にいる時は絡んでこない。

「そういえば、モーバー卿とミオリアって前から仲良かったの?」

 ディアナもニヤニヤしながら聞いてくる。

「仲良かったって、挨拶くらいしか話した事なかったわよ」

「そうなの。じゃああいつの片思いか」

「片思い? 無い無い」

 エマもディアナもなぜそんなことばかり言うのだろう?

「モーバー卿はたまたま助けてくれただけよ」

 ディアナは呆れたような顔で私を見た。

「たまたま助けた? あの男がそんなわけないわよ。もしも私が階段から突き落とされてもきっと知らん顔してるわよ」

「ディアナはモーバー卿のことよく知ってるの?」

「まぁね。暗部の家と宰相の家だから裏の繋がりね。モーバー卿はなかなかの腹黒策士よ。まぁでもそれくらいじゃないと次期宰相にはなれないけどね」
 
 腹黒策士って? モーバー卿はそんな風には見えなかったけどなぁ。


「そんなことより、ディアナ、グランダキシン王国って知ってる?」

 私はディアナに聞いてみた。ディアナは情報通だから何か知ってるかもしれない。

「グランダキシン王国? 確か100年くらい前にリーマス王国に攻め込まれて属国にされた国ね。そのあとリーマス王国はうちに併合されたから今は元グランダキシン王国はうちの東の端の方じゃないかしら。グランダキシン王国に何かあるの?」

「うん、ちょっと調べたいことがあってね」

「ふ~ん、そんなこと言って話をはぐらかそうとする。モーバー卿との関係をちゃんと教えなさいよ!」

 本当になんでもないのにディアナはしつこい。

 あっ、前からペルマックス嬢と殿下がこちらに向かって歩いてきた。

 ペルマックス嬢は私達を見るなり、殿下の腕を掴みしなだれかかった。

「あら、リスミー嬢にインタール嬢、また私を貶める相談でもしていらっしゃるのね。ラート様、私は何もしていないのに、このふたりにいつも冤罪をかけられておりますの。この間の階段から落ちたこともこの女の自作自演ですのよ。ラート様、騙されないで下さいね」

 ラートガー殿下は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「リスミー嬢、身体の具合はどうだ」

 殿下は表情を緩め声をかけてきた。

「お気遣いいただだきありがとうございます。モーバー卿のおかげで特に怪我もありませんでした」

「リーンハルトのおかげか」

 殿下は小さな声でつぶやくと、私の横を通り過ぎた。

「リスミー嬢、また会おう」

 すれ違い様にそう言われた。後ろからペルマックス嬢が慌ててついていっている。

「あんな女と婚約なんかさせられて殿下はよっぽど前世で酷い事をしたのね」

 ディアナは口の端を上げている。

 前世でよっぽど酷いことって? 私は思わずディアナの顔を直視していた。

しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

婚約者に「ブス」と言われた私の黒歴史は新しい幸せで塗り替えました

四折 柊
恋愛
 私は十歳の時に天使のように可愛い婚約者に「ブス」と言われ己の価値を知りました。その瞬間の悲しみはまさに黒歴史! 思い出すと叫んで走り出したくなる。でも幸せを手に入れてそれを塗り替えることが出来ました。全四話。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

処理中です...