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隣国ヘーラクレール編
81 金輪際、絶対、二度と
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流石の大声に会場のざわめきは小さくなった。あちこちからまだまだ聞こえる話声を無視して王太子ディエゴが声を上げた。
「本日は我が王家、そして私の為にこのようにたくさんお集まりいただき誠にありがとうございます」
言いたいことはたくさんあるけれど、とりあえず王太子の話を聞いてみよう、アーサーと目で頷きあう。
「さて、喜ばしいことに我がヘーラクレール国に新たなる聖女が誕生致しました!それはあそこにいるマーガレッタ・ナリスニア公爵令嬢です!」
ディエゴ王太子は私を指差して高らかに宣言をする。そんなこといわれるなんてまったく聞いていないのに突然いわれ驚くが、この王家のことだ……そんなこともあるかもしれないと心構えをしていたから、お面のような無表情さを保つことができている。真横に立つアーサーはちょっと震えている……耐えているのね、必死に……。
私が何も言わず何も動かずなのに対し、ディエゴ王太子は自分のしたい話をさっさと進めていく。
「古くからのしきたりにのっとり、若く未婚の聖女は王太子と婚約をすべしとのことである。故にしきたりにのっとり、現在の婚約者、ルシアナ・ファンミル侯爵令嬢との婚約は解消し、新たにマーガレッタ・ナリスニア公爵令嬢との婚約を結ぶものである!」
ディエゴ王太子の言葉はこの会場にいたすべての人間に聞こえただろう。先ほどは会えなかったけれど、その中からルシアナ様が歩み出した。彼女は今日は品の良い薄い紫のドレスだった。金糸を使って刺繍がされた薄い生地が何枚も層をなすふわりとしたドレスは彼女によくに会っている……さて、クロード様の瞳の色があんな感じの薄紫だったけれど、そこら辺の関連性は鈍いアーサーでも気が付いたらしくて小さな独り言が聞こえてきた。
「なるほど……特急で紫のドレスを作れる職人を紹介してくれってこのことかあ……」
アーサーに相談ではなく、アーサーの後ろにいるイグリス様というよりアルティナ様のお力を借りたようだ。アルティナ様のご実家は商売に関しては本当に強いから。
「素敵ですね、ルシアナ様に似合っています……堂々と、あんなに笑顔で」
「今、まだ笑顔はダメじゃないかな?」
「それもそうですね」
口角をくっとあげ、晴れやかな笑顔のルシアナ様。到底今婚約解消を申し込まれた妙齢の女性とは思えない凛とした美しさだ。ルシアナ様の靴がコツ、コツと響く音に比例して、彼女の前にいた人達は波が引くように美しく道を開けてゆく。ディエゴ王太子とルシアナ様の間に道ができ、ルシアナ様はディエゴ王太子を正面に捕らえた。
「ディエゴ・ヘーラクレール王太子殿下。婚約解消の件、謹んでお受けいたします」
「……お、おう……」
美しく凛と咲く紫のバラのようなルシアナ様に気圧されたのか、言い放ったディエゴ王太子の方が腰が引けている……なんでかしら?
「今、この瞬間より、私はディエゴ・ヘーラクレール王太子殿下とは何の関りも持たぬことを女神ディアネッタ様に誓います。金輪際絶対、二度と、ディエゴ・ヘーラクレール王太子殿下と婚約・婚姻など結ぶことはございません。並びに接触も可能な限り避け、言葉を交わすことも必要最低限以下とさせていただきます」
ものすごい拒絶の誓いをルシアナ様は女神様に約束した……鬱憤がよっぽど溜まっていたのでしょう、仕方がないことだと思います。
「本日は我が王家、そして私の為にこのようにたくさんお集まりいただき誠にありがとうございます」
言いたいことはたくさんあるけれど、とりあえず王太子の話を聞いてみよう、アーサーと目で頷きあう。
「さて、喜ばしいことに我がヘーラクレール国に新たなる聖女が誕生致しました!それはあそこにいるマーガレッタ・ナリスニア公爵令嬢です!」
ディエゴ王太子は私を指差して高らかに宣言をする。そんなこといわれるなんてまったく聞いていないのに突然いわれ驚くが、この王家のことだ……そんなこともあるかもしれないと心構えをしていたから、お面のような無表情さを保つことができている。真横に立つアーサーはちょっと震えている……耐えているのね、必死に……。
私が何も言わず何も動かずなのに対し、ディエゴ王太子は自分のしたい話をさっさと進めていく。
「古くからのしきたりにのっとり、若く未婚の聖女は王太子と婚約をすべしとのことである。故にしきたりにのっとり、現在の婚約者、ルシアナ・ファンミル侯爵令嬢との婚約は解消し、新たにマーガレッタ・ナリスニア公爵令嬢との婚約を結ぶものである!」
ディエゴ王太子の言葉はこの会場にいたすべての人間に聞こえただろう。先ほどは会えなかったけれど、その中からルシアナ様が歩み出した。彼女は今日は品の良い薄い紫のドレスだった。金糸を使って刺繍がされた薄い生地が何枚も層をなすふわりとしたドレスは彼女によくに会っている……さて、クロード様の瞳の色があんな感じの薄紫だったけれど、そこら辺の関連性は鈍いアーサーでも気が付いたらしくて小さな独り言が聞こえてきた。
「なるほど……特急で紫のドレスを作れる職人を紹介してくれってこのことかあ……」
アーサーに相談ではなく、アーサーの後ろにいるイグリス様というよりアルティナ様のお力を借りたようだ。アルティナ様のご実家は商売に関しては本当に強いから。
「素敵ですね、ルシアナ様に似合っています……堂々と、あんなに笑顔で」
「今、まだ笑顔はダメじゃないかな?」
「それもそうですね」
口角をくっとあげ、晴れやかな笑顔のルシアナ様。到底今婚約解消を申し込まれた妙齢の女性とは思えない凛とした美しさだ。ルシアナ様の靴がコツ、コツと響く音に比例して、彼女の前にいた人達は波が引くように美しく道を開けてゆく。ディエゴ王太子とルシアナ様の間に道ができ、ルシアナ様はディエゴ王太子を正面に捕らえた。
「ディエゴ・ヘーラクレール王太子殿下。婚約解消の件、謹んでお受けいたします」
「……お、おう……」
美しく凛と咲く紫のバラのようなルシアナ様に気圧されたのか、言い放ったディエゴ王太子の方が腰が引けている……なんでかしら?
「今、この瞬間より、私はディエゴ・ヘーラクレール王太子殿下とは何の関りも持たぬことを女神ディアネッタ様に誓います。金輪際絶対、二度と、ディエゴ・ヘーラクレール王太子殿下と婚約・婚姻など結ぶことはございません。並びに接触も可能な限り避け、言葉を交わすことも必要最低限以下とさせていただきます」
ものすごい拒絶の誓いをルシアナ様は女神様に約束した……鬱憤がよっぽど溜まっていたのでしょう、仕方がないことだと思います。
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