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隣国ヘーラクレール編

52 私は戦える!

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「やっと招集に応じてくれたようだね。聖女殿」
「これは招集とはいえません、ディエゴ王太子殿下。このような手荒な方法、正式に抗議させていただきます」

 ヘーラクレール城につくと、強引に馬車から降ろされ……脅され歩かされ、まるで罪人のように大広間に引き出された……。腕からシロ様の入った籠を取り上げられるのだけは何とか阻止した……あちこちぶつけて痛い目もみたけれど、この籠を取り上げられるのを阻止したのは「みなさま」の助力も大きかった。

「どうやっても取り上げることができません」
「細腕の女よ? なんで!」
「あれ以上やると大怪我を負わせてしまいます……あ、あの方は聖女なのですよね? 聖女に怪我を負わせるのは」
「だらしないわねっ」

 広間にはタニア王女とチェリエ王女もいてこちらに聞こえるような大声で兵士を叱責している。ああ、この広間にいる人間は全部私達の敵……怖い……でも俯いて震えていては相手の思うつぼだ。顔を上げ前を見る、震えていても声を出す。

 私は……私は、レッセルバーグ国、ナリスニア公爵の娘、マーガレッタ・ナリスニアであり、神獣シロ様を養うものなのだから!

「それと私は聖女ではございません、聖女を招集したかったのであれば私では用をなしません。早急に辞させていただきます」

 広間の壇上にはヘーラクレール王と王妃、そして宰相らしき髭の人物がいるけれど、私は強く発言する。礼を尽くさねばならない相手じゃない。

「でも、平民達にいわれてるじゃない~? 薬神様の聖女だって。ふふ、やっぱり平民は平民に人気で良いわよねえ~あいつらには私達王族の高貴さが理解できないものね」
「ホントよね、私達ほど聖女に相応しい人物はいないのに、神殿も落ちたものだわ。そこの鳥だって本当に神獣かどうか怪しいわ。だって英雄ヘーラクレール様の言い伝えには鳥なんて出てこないものね、アハハハ!」

 タニア王女とチェリエ王女の甲高い笑い声はとても苦手だ。あの自意識が物凄く高くどうしてそこまで自信が持てるのか分からない感じは、ランドレイ家の元お姉様を思い出す。

 だからマーガレッタは駄目なのよ!

 いないはずのお姉様の声が後ろから聞こえてくるようで思わず視線が下へ下へと落ちてゆく……ダメ、気を強く持って、私はシロ様を守るんだ! 自分を鼓舞してぐっと前を強く見る。私は昔の私じゃない、レッセルバーグで支えられ、学び、強さを教えてもらったんだ。理不尽と戦う強さが今の私には宿っている。

「確かに! ヘーラクレール様は天馬に乗って毒竜を打ち倒した、鳥じゃあない。それにそんな鳥じゃ誰も乗る事なんてできないな? もしや神殿が我々を謀ったのか? 父上、あんな我々を蔑ろにする神殿など打ち壊した方が良いのではないでしょうか?」

 とんでもない発言をするディエゴ王太子。この人はシロ様のことを信じていないばかりか、この国を支える神殿に牙を剥くという。なんて酷い……!私とシロ様の近くで守って下さっている「みなさま」からも怒りの感情が伝わってくる。罰当たりにもほどがある!!

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