29 / 118
隣国ヘーラクレール編
13 お前の名前はー!
しおりを挟む
「タニア王女、とにかくお帰り下さい。あなたがここにいては神獣様が怯えるばかり。聖女という肩書きのあなたがいなければ神獣様が成長できないかと思いご足労願っておりましたが、どうやら逆効果のようだ」
「な、なんですって!? 聖女である私がいなくてはそいつが一人前になれないというからわざわざこんな所まできてやっているのに、何よっ」
「あなたがいなくともこちらのレッセルバーグからの方々のお力添えがあれば……とにかくあなたの存在は神獣様に悪影響があります!」
「お、覚えてなさいよっ」
タニア王女の声は本当に大きく、そして甲高い不快さが募る声だった。口を開くたびに恐怖で心臓がドキンと跳ねる気がしたが、そのたびにアーサーが大丈夫だよと笑いかけてくれる。私には皆がいる……大丈夫、大丈夫だ。私が怖がると神獣様にも恐怖が伝わる。それは避けてあげたい一心でひたすら耐えた。
神官様達に押し出され、王女は部屋から外に出され……5.6人もいた彼女の護衛も姿を消し、扉が閉じられる。廊下からはまだ喚き散らす声が聞こえて来たけれど、だいぶ聞き取りにくくなっていてやっと安堵のため息が漏れた。
「マーガレッタ、頑張ったね」
「あ、ありがとう……アーサー」
いつものように明るい笑顔で労ってくれたアーサーの視線は、私の腕の中にいる白くてほわほわした神獣様に注がれている。
「その子、可愛いね」
「ええ、とっても!」
どうやら私は緊張のあまり少し強めに神獣様を抱きしめていたらしい。アーサーに声をかけられて、やっと腕の力を少し抜くことができたみたいで、神獣様はもそもそと少し動いたのち、可愛らしい真っ黒なつぶらな目をこちらに向けて瞬きをした。
「豆みたいな目だなあ。おでこに……青豆ついてる。シュー・ア・ラ・クレームっていうよりただの白いぽわぽわだ」
「ジジッ!(ぼくは豆じゃない!シューでもないっ)」
「ふふっ、アーサー。神獣様が怒っていらっしゃいますよ」
私には神獣様の考えていることが分かるが、アーサーには分からないはず。それでもアーサーは笑いながらゆっくり手を伸ばして神獣様の頭を撫でた……嫌がっている様子はない。
「お前の名前は……シロ!」
「ジッ!?(えっ)」
「だって白いし~」
「ジジッ!!(変な名前を付けないでっ!ああーっ名前が固定しちゃったじゃないかー!ばかばか!ばかあーさー!!)」
黒いお豆みたいな目をちょっと怒った形に変形させて、神獣様は抗議の声を上げたけれど遅かったようだ。
「えっ! 本当に名前がシロになっちゃったんですか!?」
「ジジーーッ(そうだよ~~!今まで誰も名前を付けてくれなかったの。マーガレッタに名前を付けて貰おうと思ったのに、アーサーが勝手に~~)」
「滅茶苦茶可愛いよ、うん!」
「ジーーッ!(白いからしろなんて適当過ぎる~~!)」
「お? 不満なのか~?で もお前は今日からシロだ!」
「ジッ! ジッ! (わーんっばかばか~~手をつついてやるぅ、わーわーっ)」
アーサーの指先をつんつん突きながら神獣様……シロと名前が固定されてしまった方は怒りは口にしていてもそんなに怒ってはいないようだった。それより自分を暖かく見守ってくれるアーサーのことを好きになりかけているようで……一緒に遊んでいるようにしか見えなかったのだった。
「な、なんですって!? 聖女である私がいなくてはそいつが一人前になれないというからわざわざこんな所まできてやっているのに、何よっ」
「あなたがいなくともこちらのレッセルバーグからの方々のお力添えがあれば……とにかくあなたの存在は神獣様に悪影響があります!」
「お、覚えてなさいよっ」
タニア王女の声は本当に大きく、そして甲高い不快さが募る声だった。口を開くたびに恐怖で心臓がドキンと跳ねる気がしたが、そのたびにアーサーが大丈夫だよと笑いかけてくれる。私には皆がいる……大丈夫、大丈夫だ。私が怖がると神獣様にも恐怖が伝わる。それは避けてあげたい一心でひたすら耐えた。
神官様達に押し出され、王女は部屋から外に出され……5.6人もいた彼女の護衛も姿を消し、扉が閉じられる。廊下からはまだ喚き散らす声が聞こえて来たけれど、だいぶ聞き取りにくくなっていてやっと安堵のため息が漏れた。
「マーガレッタ、頑張ったね」
「あ、ありがとう……アーサー」
いつものように明るい笑顔で労ってくれたアーサーの視線は、私の腕の中にいる白くてほわほわした神獣様に注がれている。
「その子、可愛いね」
「ええ、とっても!」
どうやら私は緊張のあまり少し強めに神獣様を抱きしめていたらしい。アーサーに声をかけられて、やっと腕の力を少し抜くことができたみたいで、神獣様はもそもそと少し動いたのち、可愛らしい真っ黒なつぶらな目をこちらに向けて瞬きをした。
「豆みたいな目だなあ。おでこに……青豆ついてる。シュー・ア・ラ・クレームっていうよりただの白いぽわぽわだ」
「ジジッ!(ぼくは豆じゃない!シューでもないっ)」
「ふふっ、アーサー。神獣様が怒っていらっしゃいますよ」
私には神獣様の考えていることが分かるが、アーサーには分からないはず。それでもアーサーは笑いながらゆっくり手を伸ばして神獣様の頭を撫でた……嫌がっている様子はない。
「お前の名前は……シロ!」
「ジッ!?(えっ)」
「だって白いし~」
「ジジッ!!(変な名前を付けないでっ!ああーっ名前が固定しちゃったじゃないかー!ばかばか!ばかあーさー!!)」
黒いお豆みたいな目をちょっと怒った形に変形させて、神獣様は抗議の声を上げたけれど遅かったようだ。
「えっ! 本当に名前がシロになっちゃったんですか!?」
「ジジーーッ(そうだよ~~!今まで誰も名前を付けてくれなかったの。マーガレッタに名前を付けて貰おうと思ったのに、アーサーが勝手に~~)」
「滅茶苦茶可愛いよ、うん!」
「ジーーッ!(白いからしろなんて適当過ぎる~~!)」
「お? 不満なのか~?で もお前は今日からシロだ!」
「ジッ! ジッ! (わーんっばかばか~~手をつついてやるぅ、わーわーっ)」
アーサーの指先をつんつん突きながら神獣様……シロと名前が固定されてしまった方は怒りは口にしていてもそんなに怒ってはいないようだった。それより自分を暖かく見守ってくれるアーサーのことを好きになりかけているようで……一緒に遊んでいるようにしか見えなかったのだった。
応援ありがとうございます!
22
お気に入りに追加
10,979
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。