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7 誰かが私を呼んでいる……(妹だったわ)

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「誰も信じないとは思うが、愚か者でも声高であれば信じる者がでるかもしれん」

 グウェイン様も頭が痛いと言った風に首を振る。優しいグウェイン様……でも彼もこの強制力の餌食になるも知れない。もしかしたら、ニーナは魅力の使い手かも知れない。
 どちらにせよ、「悪役」では「ヒロイン」に太刀打ちできないのだから。
 ああ、割れるようにガンガンと頭が痛い……結局、私の努力なんてそんなものだったんだわ……結局、私は世界に殺されるんだわ……。

「お姉様……?」

「エイミア? エイミアーー!」

 私の意識は闇に落ちてゆく。呼んでいるわ、誰かが私を呼んでいる……。


「エイミアお嬢様が目を覚まされました」

「エイミア! ああ、良かった」

 目を開けると、自分の部屋だった。お母様と、モリー夫人、たくさんのメイドとカリンまで私のベッドの周りをぐるりと囲んでいた。

「お姉様ぁー!3日も目を覚まさないんですものー! 心配しましたぁ!」

 わあっ! とカリンが泣き出す。3日……私はそんなに寝込んでいたのね。そんなに寝込んでいたのに、小説なんかで神様に呼び出されるような事はなかったわ……。

「エイミア、カリンから聞きました。ざまぁされそうなのですね? 「ヒロイン」が現れたのですね?」

「お母様……」

 私のベッドの横に置いた椅子に座ったお母様が静かに声をかけてくれた。私はゆっくりと頷く。

「そう……準備はできているわ。モリー」

「ええ、ルシア様。大丈夫ですよ、エイミア様、私達はエイミア様の味方です」

「……モリー夫人、ありがとうございます」

 カリンの母親のモリーは緩やかに首を横に振る。

「お礼を言うのは私達のほうです。何も知らず、ただ貴族になれば楽しく暮らして行けると勘違いして浮かれていた私に選ぶことと貴族とは何なのかを教えて下さったルシア様とエイミア様のお陰で、私とカリンはこうして暮らしていけているのです」

「そうです、お姉様。貴族の仕事なんて考えた事もなかった私達に投げ出さず最後まで付き合って下さったお姉様。私はお姉様のためなら何だってできます!」

 平民が貴族になると言うのはとても大変なこと。小さな頃から積まなければならないマナーや勉強、人付き合いのすべてを叩き込まなければならない。だから私はカリンの存在を知ってすぐに屋敷に呼ぶようにお願いした。
 そして放置したお父様に代わり、彼女達が生き易いようにさまざまな知識を身に付けさせた。

「ありがとう、カリン。でも無理はしないで?私に何かあった時はカリン、あなたにかかっているのよ」

「何かなんて起こしません!!」

 ぎゅっと唇を噛み締めて、不吉な未来図をカリンは吹き飛ばす。とても強い子になったわね……ええ、いいわ。もし、私が処分されるようなことがあれば今のカリンなら、グウェイン様の婚約者に相応しいでしょう。
 出来ればヒロインはあのピンクの髪の毛のニーナではなく、カリンでいて欲しいものだわ。

 もし、私に何かあったら、この家とグウェイン様のことをお願いするわよ、カリン。




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