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2 裏切者にはデスですわ
しおりを挟む「つきましてはお母様。私は多分私を裏切る王太子殿下と婚約したくないのです」
「それについては無理だわ、エイミア。だって明日が婚約式ですもの……そうね、裏切るのならば……裏切られないようにするか裏切られた時に徹底的に潰すかになると思うわ」
「潰したいわ、お母様」
「私も同意見よ」
私達は似た者親子だったようだわ。裏切り者には死を与えたいの。
「それならば、エイミアは完璧な令嬢にならなければいけないわ。なんの欠点もない完璧な令嬢に……そして婚約の際にいくつか約束を結ぶようにしましょう……裏切者には……」
「「死を!! 」」
フフフ、見ていなさい。私はこの世界を生き抜いてみせるわ!!
「それでは我が息子グウェインとリンデンドール家長女エイミアとの婚約をここに結ぶものとする」
「かしこまりましてございます。いくひさしくよろしくもうしあげます」
私はこの国の王様にそう言われて習った通りの文言と、お辞儀をする。6歳ならこのくらいでも大丈夫でしょう。これから完璧にやるけれどね!
「よろしくね、エイミア」
「はい、グウェインさま」
グウェイン・ラスフィールド王太子殿下。真っ青な髪に紫の瞳の美しい男の子。現王と正妃様の間に生まれた由緒正しい王太子殿下。正義感が強く将来有望な方なのに私の妹と出会って道を踏み外す、きっと多分。
いえ、私が良くない令嬢だったのかもしれない。私のようなものと結婚すればこの国が不安定になると思ったのか……それでもリンデンドール家の後ろ盾が欲しいから妹にしたのか。どちらにしろ彼は10数年後に私を断罪し、妹を婚約者に据える。とんでもねえ男である、多分。こっちから願い下げだけれど、今はそんな顔はできない。
「エイミア、お母様のバラ園が美しいよ。私が案内してあげよう」
「嬉しいですわ、グウェインさま」
まだ悪事に染まっていない綺麗で可愛い手に引かれて、私は婚約式の場を離れる。きっとこれからお母様がいくつかの取り決めを提示してくれるはず。お父様になんて任せていられないものね。王様はこんな細かいことまで?と首を傾げるかもしれないけれどお母様はにっこり裏なんてないわよ、という貴族夫人の素敵な笑顔でごり押ししてくれる。
「私の可愛い娘です、なけなしの親心だとお許しくださいませ」
ルシアお母様はとても美しい人だ。そんなお母様は目に涙をちょっと浮かべて訴えれば大抵男性はコロリと行く。でもそこで王様に色目を使わず、王妃様を見ればいい。母心、分かって?と王様ではなく王妃様に取り入る、ここがポイントだ。お母様に瑕疵なんて似合わないもの。
「良いではないですか、貴方。リンデンドール夫人の心配も分かりますわ。なにせリンデンドール家の一人娘ですのよ?」
「うむ、確かにそうだな」
きっと王様と王妃様の言葉にフラットお父様は内心冷や汗をかいていると思うけれど、知ったことではない。浮気の上に子供まで作って、さらに内緒にしているヤツなんて知らなーい!
「みて、エイミア。きれいでしょう?」
「ええ、香りもすごくすてきです。おうひさまのやさしさがあふれているんですね」
「うん、えへへ」
にこにこ笑うグウェイン様はとても……とても可愛い! こんな可愛い方に私は裏切られるんだと、胸がズキズキした。これは私が悪女になるということかもしれない……自業自得でざまぁされる系なのかな、気を付けて生きなくちゃ。私は不思議そうに顔を傾げるグウェイン様の前で曖昧に笑った。
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