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猫になった
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俺の設定は王都で働いていたけど、田舎暮らしに憧れてやって来た猫獣人の血を引く人間だ。
どうやって暮らしているかと言うと
「ユーリさん、薬くれよ」
「どんな感じなの?風邪?」
「うん」
「良いけどー俺もあんまり詳しくないんだからな!」
薬屋崩れみたいなふりをしている。
「うえー!こいつ苦いんだよなー」
「薬が美味いわけないでしょ!」
もちろん、魔法でこそっと出した葛根湯だ。あまり強い物とかは出さないようにしている。この世界の薬に耐性がない人間に飲ませる訳にはいかないからね。
「……ご飯食べよ」
まあ、ズルと言えばズルだ。家の中にあるシンプルな家具は偽装してあって、見かけより全部高性能なんだ。
ただの保管庫にみえる冷蔵庫。硬そうに見えるベッドはふかふかだし、スイッチひとつで電気もないのに温まる電気毛布も付いている。
「……この世界で一人でまともに暮らせないんだなぁ、俺は……」
自分の不甲斐なさに、いつも落ち込んでいる。
「風呂入って寝よ」
でも、風呂に入って寝れば大抵元気になる。流石猫、能天気だ。俺は自分の能力をフル活用して、日々暮らしている。
「ユーリ!ユーリ!大変だ!寝てる場合じゃない!」
「うにゃ……?トニー?おはよう」
建て付けの悪い扉を激しく叩かれて、起きるといつも俺をからかいにくるトニーが青い顔で呼んでいた。
「兵士がきて、人を集めるって!徴兵だよ!村の若い男は全員兵隊にされる!」
「はあ?!」
待って、ここはグランベルンだよね?!戦争なんてなかったと思うよ!
俺はトニーにくっ付いて村の広場に急いだ。
「ここら一帯の領主様の御達しである!王都にて兵士を集めている!我が領からも出兵し、手柄を立て領土を賜るのだ!」
「馬鹿な!王都じゃそんな話なかったよ!」
つい俺は叫んでしまった。だってそんな話本当になかったからね。
「そんなはずはない。王都にて魔術師捕獲作戦が決行される故、兵を集めておるとの事だ!」
「なにそれ!絶対違う!」
俺が捕獲されるってどう言う事?!
「御領主様の決定に従わぬのか!」
「王都で兵士なんて集めてないよ!」
「嘘を申すな!大規模に軍隊を動かすとの報告があったぞ!」
俺はまさかと考える。確か、俺を探す為にオーグさんは軍隊を編成したと言っていた。
「まさか、それ?」
あっさり俺が歩いて帰って来たものだから、その話は立ち消えた。勿論あの後あちこちに「無事に帰りました、お騒がせしました」と顔見せと挨拶に回ったから間違いない。
「も、もしかしてここって遠くて田舎だから、情報が正しく伝わってない?!」
そう言われてみれば、愕然とするしかなかった。あり得そうなありえない話。そんな見当違いの情報で、遠い王都まで村の人間を連れて行かせる訳にはいかない。
「とりあえず、御領主様とやらに情報を確認するように言ってください!俺は最近王都から来たけど、そんな話、聞いたことないし、魔術師は見つかったって聞きました!」
兵士は村人にもどやされ、渋々戻っていったが、どうなるか……。きちんとした情報をもらって来てくれれば良いけど。
平和な村にざわざわと走った衝撃はなかなか抜けてくれなかった。
どうやって暮らしているかと言うと
「ユーリさん、薬くれよ」
「どんな感じなの?風邪?」
「うん」
「良いけどー俺もあんまり詳しくないんだからな!」
薬屋崩れみたいなふりをしている。
「うえー!こいつ苦いんだよなー」
「薬が美味いわけないでしょ!」
もちろん、魔法でこそっと出した葛根湯だ。あまり強い物とかは出さないようにしている。この世界の薬に耐性がない人間に飲ませる訳にはいかないからね。
「……ご飯食べよ」
まあ、ズルと言えばズルだ。家の中にあるシンプルな家具は偽装してあって、見かけより全部高性能なんだ。
ただの保管庫にみえる冷蔵庫。硬そうに見えるベッドはふかふかだし、スイッチひとつで電気もないのに温まる電気毛布も付いている。
「……この世界で一人でまともに暮らせないんだなぁ、俺は……」
自分の不甲斐なさに、いつも落ち込んでいる。
「風呂入って寝よ」
でも、風呂に入って寝れば大抵元気になる。流石猫、能天気だ。俺は自分の能力をフル活用して、日々暮らしている。
「ユーリ!ユーリ!大変だ!寝てる場合じゃない!」
「うにゃ……?トニー?おはよう」
建て付けの悪い扉を激しく叩かれて、起きるといつも俺をからかいにくるトニーが青い顔で呼んでいた。
「兵士がきて、人を集めるって!徴兵だよ!村の若い男は全員兵隊にされる!」
「はあ?!」
待って、ここはグランベルンだよね?!戦争なんてなかったと思うよ!
俺はトニーにくっ付いて村の広場に急いだ。
「ここら一帯の領主様の御達しである!王都にて兵士を集めている!我が領からも出兵し、手柄を立て領土を賜るのだ!」
「馬鹿な!王都じゃそんな話なかったよ!」
つい俺は叫んでしまった。だってそんな話本当になかったからね。
「そんなはずはない。王都にて魔術師捕獲作戦が決行される故、兵を集めておるとの事だ!」
「なにそれ!絶対違う!」
俺が捕獲されるってどう言う事?!
「御領主様の決定に従わぬのか!」
「王都で兵士なんて集めてないよ!」
「嘘を申すな!大規模に軍隊を動かすとの報告があったぞ!」
俺はまさかと考える。確か、俺を探す為にオーグさんは軍隊を編成したと言っていた。
「まさか、それ?」
あっさり俺が歩いて帰って来たものだから、その話は立ち消えた。勿論あの後あちこちに「無事に帰りました、お騒がせしました」と顔見せと挨拶に回ったから間違いない。
「も、もしかしてここって遠くて田舎だから、情報が正しく伝わってない?!」
そう言われてみれば、愕然とするしかなかった。あり得そうなありえない話。そんな見当違いの情報で、遠い王都まで村の人間を連れて行かせる訳にはいかない。
「とりあえず、御領主様とやらに情報を確認するように言ってください!俺は最近王都から来たけど、そんな話、聞いたことないし、魔術師は見つかったって聞きました!」
兵士は村人にもどやされ、渋々戻っていったが、どうなるか……。きちんとした情報をもらって来てくれれば良いけど。
平和な村にざわざわと走った衝撃はなかなか抜けてくれなかった。
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