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猫になった
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「えっと……」
「う……あ、頭では分かっているんだ」
「そう、分かっているんだけれど……くっ!恋人め……!」
トライセとレガリアは愛の矢が突き刺さった心臓を押さえてうずくまる。
「ああ、時に愛は痛みを伴うんだよねぇ~」
「そうそう。いがみ合う二人の間に生まれ落ちたこの激情!ああ、痛むねぇ~」
歌うようにナリンとセリンは軽いステップで二人の周りをまわる。
「愛しくて苦しい~その苦しみを乗り越えた先にあるものは?」
「あま~い蜜の花園さ~」
くすくす、くすくす楽しそうに笑う双子は少し悪趣味かもしれないなぁと悠里は眉をしかめた。
「くぅ!だ、駄目だ、レガリア。近寄るな!」
「阿呆!セライス!な、名前を呼ぶなぁ……っ」
「うっ!苦しい……胸が、胸が痛い……っ」
セライスとレガリアは必死で打ち込まれた愛に耐えていた。それはそれは必死に。駄目だ、このままでは!
「ねーまだぁ?」
しかし観客は飽きた。何せ全員猫なのだ。面白そうだと思ったが飽きるのも早い。
「もう面倒だから狭い部屋に閉じ込めておこうぜ。きっと明日の朝にゃいちゃいちゃしてるよ」
「さんせー!」
ポイ!バタン。空き部屋にセライスとレガリアを睦月は放り込んでしまった。
「これでよーし!」
あっ!それで良いんだ!?
「あっ!だ、駄目だ!レガリアっそんな所っ!あっ!」
「セライス……済まないが、も、もう……」
あっ!聞いちゃいけない声が聞こえて来る?!
「こうして愛は深まって行くのです……」
「うんうん。体の深い所で溶け合った愛は二人を永遠に繋ぐんだよ……」
良い話だなぁー。
猫科の俺たちの興味は、もう他の事に移ってしまっていた。
「どうする?日向ぼっこでもする?」
「お!良いねぇ。中庭とかに登りやすそうな木がほしいなぁー!悠里さん、どーんとはやしてよ」
「岩場とかも良くなーい?」
「あーそれ、良いねー」
今は昼寝をしたい気分だ。今日は宰相さんの膝の上に乗ろう、そう言う気分だ。あの人の膝の上だと、皆寄ってこないんだ……書類書け!って言われるからね!
ちょうど良く、宰相さんが歩いて来たので、猫化してぴょんと肩に飛びついた。
「悠里さん……げ!」
「悠里、遊ぼ、げ!」
睦月君とレイリーが同じ顔で宰相さんを見ている。ははぁん?何か提出していない書類があるんだな?
「おや?睦月殿、レイリー殿。お頼みしていた件は如何なさいましたか?」
「い、急いでやって来まーす!」
「お、俺もー!」
獣化しそうな勢いで走っていった。流石だ。俺はそのまま抱っこされて、宰相さんの机の後ろ側の窓辺でお日様でホカホカのふわふわになっているクッションの上にもっちりと座り込んだ。
俺の黒い毛皮が陽の光を吸い込んでとても暖かい。宰相さんの執務室で勤務する人達がたまに撫でたりしているけど、全然気にならない。
「最強の場所では?!」
俺の安息の地が一つ見つかった。
「う……あ、頭では分かっているんだ」
「そう、分かっているんだけれど……くっ!恋人め……!」
トライセとレガリアは愛の矢が突き刺さった心臓を押さえてうずくまる。
「ああ、時に愛は痛みを伴うんだよねぇ~」
「そうそう。いがみ合う二人の間に生まれ落ちたこの激情!ああ、痛むねぇ~」
歌うようにナリンとセリンは軽いステップで二人の周りをまわる。
「愛しくて苦しい~その苦しみを乗り越えた先にあるものは?」
「あま~い蜜の花園さ~」
くすくす、くすくす楽しそうに笑う双子は少し悪趣味かもしれないなぁと悠里は眉をしかめた。
「くぅ!だ、駄目だ、レガリア。近寄るな!」
「阿呆!セライス!な、名前を呼ぶなぁ……っ」
「うっ!苦しい……胸が、胸が痛い……っ」
セライスとレガリアは必死で打ち込まれた愛に耐えていた。それはそれは必死に。駄目だ、このままでは!
「ねーまだぁ?」
しかし観客は飽きた。何せ全員猫なのだ。面白そうだと思ったが飽きるのも早い。
「もう面倒だから狭い部屋に閉じ込めておこうぜ。きっと明日の朝にゃいちゃいちゃしてるよ」
「さんせー!」
ポイ!バタン。空き部屋にセライスとレガリアを睦月は放り込んでしまった。
「これでよーし!」
あっ!それで良いんだ!?
「あっ!だ、駄目だ!レガリアっそんな所っ!あっ!」
「セライス……済まないが、も、もう……」
あっ!聞いちゃいけない声が聞こえて来る?!
「こうして愛は深まって行くのです……」
「うんうん。体の深い所で溶け合った愛は二人を永遠に繋ぐんだよ……」
良い話だなぁー。
猫科の俺たちの興味は、もう他の事に移ってしまっていた。
「どうする?日向ぼっこでもする?」
「お!良いねぇ。中庭とかに登りやすそうな木がほしいなぁー!悠里さん、どーんとはやしてよ」
「岩場とかも良くなーい?」
「あーそれ、良いねー」
今は昼寝をしたい気分だ。今日は宰相さんの膝の上に乗ろう、そう言う気分だ。あの人の膝の上だと、皆寄ってこないんだ……書類書け!って言われるからね!
ちょうど良く、宰相さんが歩いて来たので、猫化してぴょんと肩に飛びついた。
「悠里さん……げ!」
「悠里、遊ぼ、げ!」
睦月君とレイリーが同じ顔で宰相さんを見ている。ははぁん?何か提出していない書類があるんだな?
「おや?睦月殿、レイリー殿。お頼みしていた件は如何なさいましたか?」
「い、急いでやって来まーす!」
「お、俺もー!」
獣化しそうな勢いで走っていった。流石だ。俺はそのまま抱っこされて、宰相さんの机の後ろ側の窓辺でお日様でホカホカのふわふわになっているクッションの上にもっちりと座り込んだ。
俺の黒い毛皮が陽の光を吸い込んでとても暖かい。宰相さんの執務室で勤務する人達がたまに撫でたりしているけど、全然気にならない。
「最強の場所では?!」
俺の安息の地が一つ見つかった。
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