【完結】猫魔術師殿は今夜も眠れない

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
24 / 75
猫になった

24

しおりを挟む
魔術師マジシャン殿!この呪いのドレスをいつになったら解呪してくださるのですか!」

魔術師マジシャン殿!どちらの教団に属するか決めていただけましたでしょうか!」

「えー……」

 一晩明けてもトライスとレガリアは変わらなかった。白いウエディングドレスのまま、悠里にどちらにするのかと迫ってくる。

「お前らもう帰れよ」

 睦月が追い払ってみても

「この格好で帰れますかッ!」「全くです!」

 と、逆に言いくるめられる始末だ。

「ぜ、全然仲良くなってないんだけど!?」

「おっかしいなあ……?」

 脳筋は頭を捻るが、脳筋ゆえにいい案など浮かんでこない。

「好き合ってない同士を結婚しろってくっつけてみても仲良くはならないってことだ。当然だよな」

 レイリーは呆れ気味に言うがまあ、それが正しい答えだろう。

「そんな時はぁ~」「可愛い双子の僕達にお任せ★」

 ポン!そんな音が鳴りそうな勢いでセリンとナリンは飛び出してきた。そしていたずら小悪魔はこんな顔かもしれないという顔でにやりと笑う。

「睦月、レイリー。二人を捕まえて。大丈夫でしょ?トライスもレガリアも知能派だもん。筋力で二人には勝てない」

「そうだな~」

 睦月は近くにいたトライスの腕をぐっと掴み、レイリーもレガリアを羽交い絞めにした。

「何をする!離せ!」「このおバカ共!離せと言っている!」

 そして、セリンとナリンはそれぞれトライスとレガリアの前に立つ。

「ユーリ。本当は神獣はその階級クラスにあった技を数個使うことができるんだよ」

「ユーリみたいに無限にありえない魔術錬成はできないんだよ?」

 そして二人は同じセリフを唱え始める。

「「その身の内より、湧きし愛。愛はその心、その胸の内より来たり」」

「くそ!離せ!やめろ!恋人ラヴァーズ!」

 トライスが身を捻っても、睦月がしっかりと押さえつけてしまっては動けなかった。セリンの指先が心臓の上に触れる。

「ま、まさか!冗談でしょう!恋人ラヴァーズ!」

 青い顔でレガリアが首を振るが、レイリーも離すつもりがない。ナリンの指先が心臓の上に触れる。

「「さあ、紡ごう!その心、その愛。心臓より湧き出し、愛の矢を!」」

 とん、胸の上に触れた指先が、持ち上がるとそこからまるで吸い上げられるように一本の短い矢が現れる。セリンの指先にはトライスの心臓から抜き取った矢が、ナリンの指先にはレガリアの心臓から抜き取った矢が。

「「二人の愛を永久に!『愛神の矢クピドズ・アロー!!」」

 二人はお互いの矢を小さな弓につがえ、そしてトライスの矢をレガリアの心臓に向けて、レガリアの矢をトライスの心臓に向けて放った。

「うっ!」「ぐっ!」

 音はなく、小さな矢はしゅるりとお互いの胸の中に吸い込まれていく。そして最後まで吸い込まれ消えてしまうのを見届けて二人は成功~!とにっこり笑った。

「もー離していいよ」

 ナリンが言うので睦月もレイリーも二人を解放する。矢に打たれたと言え怪我の一つもなさそうなのに、二人はぐったりと床に膝をついた。

「な、ナリン?セリン?何をしたの?」

 慌てて悠里は二人に尋ねる。すると二人はなんの悪気もなく

「愛の矢を打ち込んだんだよ。これで二人はラブラブだよ!」

「お互いの矢が心臓に刺さってるからね、もう相手の事が好きで好きでたまらないはずさ!」

「え……本当に……?」

 ゆっくり顔を上げたトライスとレガリアは確かに見つめあっていた。

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

番だと言われて囲われました。

BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。 死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。 そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

処理中です...