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猫になった
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パチン!闇が解けた時、アウグストと睦月は苦虫を噛み潰した顔をしていて、レイリーは
「あれ?あれれ??可愛いユーリさんはどこ行った?」
と、さっきまでにゃんにゃん自分の下で啼いていた悠里をきょろきょろ探していた。
「阿呆レイリー。愚者だよ。悠里さんを連れてかれた」
「えええーーーー!だからあんなにレイリー好きって言ってくれたのーーひでぇー流石愚者、ひでーーー!」
技にかかる前に、睦月はクェンティンの姿をみた。そして睦月が愚者!と呼ぶ声をアウグストは聞いた。
だから、これから見る物が愚者の作り出した自分に都合の良い幻だと気がついた。
「俺、睦月くんの物になるよ……」
睦月の幻は頬を赤らめてそう言った。
「オーグ、俺を愛して?」
アウグストの幻は抱きついてきて愛をささやいた。
「残酷な踊りを踊らせるよなぁ……愚者は!」
「あーん!ユーリぃ!レイリー好き!大好きって言ったのにーー!」
うわーん!背中を丸めてレイリーは泣き出した。
「しかし……問題は悠里さんが色々知ったことかな……下手したら俺たち消し炭だぜ」
「力づくでやめさせる……出来るだろうか?ユウリが痛いって言ったら手を離してしまいそうだ」
「ううーユーリぃ!もっとヤりたいーー!」
「「阿呆!」」
遠くの音を聴くために、耳が廊下の方を向く。
「であるからして、つがいである必要など全くないと?」
「うん。よく分からないけどそうなんだって」
「なるほど、先代魔術師殿がそう言っておられただけで、つまるところ下僕で良いのですな」
「うん。でも3人も要らないよ。1人で良くない?」
「むしろ新しい者を用意しても良いかもしれませんな。悠里殿のいう事を聞く素直な人間を召し上げて……その者を夫にすれば良いのでは?」
「俺が妻なのが前提ですか……!」
「あ!いやはや、失礼した!そうだ、ユーリの婚約者もおりますよ。1度会って見ませぬか?」
「へー!どんな人なんだろう。気になるなー」
ピクピクピクピク!6個の耳はせわしなく動く。
「それはそうと、あのケーキなる物!美味いですなぁ」
「ご褒美のつもりで出したんじゃなかったんだけど、みんな喜んじゃいましたねー。この世界にはないんです?」
「ないですなーー!あんなに甘くて白くてふわふわしていて。酸っぱい赤い果実が合いますなぁ!」
「ケーキだ……」
「睦月?」
ブルブルと拳を震わせて、睦月は低く唸った。
「何故か分からないけど、宰相は俺たちが住んでいた世界にあったケーキを食べたんだ……」
「ケーキ?それって美味いのか?」
レイリーは呑気に聞いてくる。
「美味い!」
だん!床を拳で叩いた。
「こっちの世界、楽しいけど。けど!地球の方が進んでる!お菓子のレベルがまるで違う!食いたいっケーキ食いたい!!ああっ!なんでだ!なんでケーキがあるんだ!駄目だ!我慢出来ない!」
今までこもっていた部屋の扉を開け、睦月は走り出す。廊下に出て、一つ目の角を曲がった所で黒猫を抱っこした宰相に出会った。
「如何した?策士殿よ」
「宰相!ケーキは?!」
「はて?なんのことやら?悠里殿はご存知か?」
「にゃーん」
「悠里さんっ!」
「にゃーん」
「悠里さんっ!ケーキが!」
「にゃーん」
「ケーキがあるって……」
「にゃーん」
「悠里、さん」
「にゃーん」
「ゆ……」
「睦月殿、御用がなければ我々はこれで。色々忙しいのですよ、これでも。では参りますかな?悠里殿」
「はーい」
「ゆ、悠里さんっっ!」
ツン、とうとう黒猫はそっぽを向いた。
パーツの全てを垂れ下げて睦月が退却してきた。
「悠里さんに嫌われたー……」
「虎の丸焼きにされなかっただけ、良かったと思うしかない」
「嫌だー!俺はユーリのいやらしい体が忘れられなーい!うわあああ!!突然ーーー」
突撃して行ったレイリーは帰って来なかった。今頃チーターの丸焼きになっているはずだ。
「睦月、私はきちんとユウリに謝って来ようと思う……」
「俺も……丸焼きにされても我慢する」
死の覚悟を決めて向かった先で見たものは
「悠里ぃ~ケーキっておいちぃねぇ~」
「レイリーは甘えん坊だねぇ」
人型になった悠里の膝の上に頭と前足を上げて、ゴロゴロと喉を鳴らしながらケーキを食べるだらしないチーターの姿だった。
「悠里に食べさせてもらうケーキは最高においちぃよ~」
「ちょっと、レイリー。仕事仕事!」
む! レイリーはチーターのまま、悠里とアウグスト、睦月の間に立ち塞がる。
「帰れ!悠里は俺が守る!」
「う、裏切ったかーーーー!レイリーーー!」
「ど、どう言うことか説明してくれ!ユウリ!」
ぷいっ!そっぽを向かれる。
「ふん!俺は悠里の下僕になったのだ!だから悠里に甘える資格があるのだ!たまにヤらせてくれる約束なんだ!羨ましかろう!」
「は?!下僕!マジか!」
「おう!悠里とヤれるなら下僕上等!むしろお願いしますだぜ!今ならケーキも食べられる!」
「レイリー余計な事言わないでー」
「はーい、ご主人さまー♡」
チーターの顔のまま、にこっと笑った。満足そうな笑顔だ。
「お、オーグ……俺たちはどうしたら……?」
「睦月、これは……我々は失策したとしか言えん!敗将はただ首を差し出すのみだ……」
「あーん……悠里さん、ごめんなさいーー」
「ユウリすまなかった……」
「ふーーんだ」
「猫の魔術師殿はやはり最強であるなぁ」
「あれ?あれれ??可愛いユーリさんはどこ行った?」
と、さっきまでにゃんにゃん自分の下で啼いていた悠里をきょろきょろ探していた。
「阿呆レイリー。愚者だよ。悠里さんを連れてかれた」
「えええーーーー!だからあんなにレイリー好きって言ってくれたのーーひでぇー流石愚者、ひでーーー!」
技にかかる前に、睦月はクェンティンの姿をみた。そして睦月が愚者!と呼ぶ声をアウグストは聞いた。
だから、これから見る物が愚者の作り出した自分に都合の良い幻だと気がついた。
「俺、睦月くんの物になるよ……」
睦月の幻は頬を赤らめてそう言った。
「オーグ、俺を愛して?」
アウグストの幻は抱きついてきて愛をささやいた。
「残酷な踊りを踊らせるよなぁ……愚者は!」
「あーん!ユーリぃ!レイリー好き!大好きって言ったのにーー!」
うわーん!背中を丸めてレイリーは泣き出した。
「しかし……問題は悠里さんが色々知ったことかな……下手したら俺たち消し炭だぜ」
「力づくでやめさせる……出来るだろうか?ユウリが痛いって言ったら手を離してしまいそうだ」
「ううーユーリぃ!もっとヤりたいーー!」
「「阿呆!」」
遠くの音を聴くために、耳が廊下の方を向く。
「であるからして、つがいである必要など全くないと?」
「うん。よく分からないけどそうなんだって」
「なるほど、先代魔術師殿がそう言っておられただけで、つまるところ下僕で良いのですな」
「うん。でも3人も要らないよ。1人で良くない?」
「むしろ新しい者を用意しても良いかもしれませんな。悠里殿のいう事を聞く素直な人間を召し上げて……その者を夫にすれば良いのでは?」
「俺が妻なのが前提ですか……!」
「あ!いやはや、失礼した!そうだ、ユーリの婚約者もおりますよ。1度会って見ませぬか?」
「へー!どんな人なんだろう。気になるなー」
ピクピクピクピク!6個の耳はせわしなく動く。
「それはそうと、あのケーキなる物!美味いですなぁ」
「ご褒美のつもりで出したんじゃなかったんだけど、みんな喜んじゃいましたねー。この世界にはないんです?」
「ないですなーー!あんなに甘くて白くてふわふわしていて。酸っぱい赤い果実が合いますなぁ!」
「ケーキだ……」
「睦月?」
ブルブルと拳を震わせて、睦月は低く唸った。
「何故か分からないけど、宰相は俺たちが住んでいた世界にあったケーキを食べたんだ……」
「ケーキ?それって美味いのか?」
レイリーは呑気に聞いてくる。
「美味い!」
だん!床を拳で叩いた。
「こっちの世界、楽しいけど。けど!地球の方が進んでる!お菓子のレベルがまるで違う!食いたいっケーキ食いたい!!ああっ!なんでだ!なんでケーキがあるんだ!駄目だ!我慢出来ない!」
今までこもっていた部屋の扉を開け、睦月は走り出す。廊下に出て、一つ目の角を曲がった所で黒猫を抱っこした宰相に出会った。
「如何した?策士殿よ」
「宰相!ケーキは?!」
「はて?なんのことやら?悠里殿はご存知か?」
「にゃーん」
「悠里さんっ!」
「にゃーん」
「悠里さんっ!ケーキが!」
「にゃーん」
「ケーキがあるって……」
「にゃーん」
「悠里、さん」
「にゃーん」
「ゆ……」
「睦月殿、御用がなければ我々はこれで。色々忙しいのですよ、これでも。では参りますかな?悠里殿」
「はーい」
「ゆ、悠里さんっっ!」
ツン、とうとう黒猫はそっぽを向いた。
パーツの全てを垂れ下げて睦月が退却してきた。
「悠里さんに嫌われたー……」
「虎の丸焼きにされなかっただけ、良かったと思うしかない」
「嫌だー!俺はユーリのいやらしい体が忘れられなーい!うわあああ!!突然ーーー」
突撃して行ったレイリーは帰って来なかった。今頃チーターの丸焼きになっているはずだ。
「睦月、私はきちんとユウリに謝って来ようと思う……」
「俺も……丸焼きにされても我慢する」
死の覚悟を決めて向かった先で見たものは
「悠里ぃ~ケーキっておいちぃねぇ~」
「レイリーは甘えん坊だねぇ」
人型になった悠里の膝の上に頭と前足を上げて、ゴロゴロと喉を鳴らしながらケーキを食べるだらしないチーターの姿だった。
「悠里に食べさせてもらうケーキは最高においちぃよ~」
「ちょっと、レイリー。仕事仕事!」
む! レイリーはチーターのまま、悠里とアウグスト、睦月の間に立ち塞がる。
「帰れ!悠里は俺が守る!」
「う、裏切ったかーーーー!レイリーーー!」
「ど、どう言うことか説明してくれ!ユウリ!」
ぷいっ!そっぽを向かれる。
「ふん!俺は悠里の下僕になったのだ!だから悠里に甘える資格があるのだ!たまにヤらせてくれる約束なんだ!羨ましかろう!」
「は?!下僕!マジか!」
「おう!悠里とヤれるなら下僕上等!むしろお願いしますだぜ!今ならケーキも食べられる!」
「レイリー余計な事言わないでー」
「はーい、ご主人さまー♡」
チーターの顔のまま、にこっと笑った。満足そうな笑顔だ。
「お、オーグ……俺たちはどうしたら……?」
「睦月、これは……我々は失策したとしか言えん!敗将はただ首を差し出すのみだ……」
「あーん……悠里さん、ごめんなさいーー」
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「ふーーんだ」
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