115 / 117
その他の話
俺達結婚しましたり
しおりを挟む「凛莉、この箱の中身なんだが……」
「箱? そんな物……きゃああああーー!? か、鍵、鍵が掛かってたろ?!」
「……壊れた音は聞こえた気がする。で、中身なんだが」
「きゃーーーー!!」
「これはもしや尻に入れ……」
「それ以上何もいうなぁーー!」
なんでがっちりしまって封印していたあの黒い宝箱をフロウライトが見つけて、しかも中身まで確認してるんだ! 鍵は普通壊れないだろ?! あのクソ馬鹿力ぁーっ普通に引きちぎったのか、鍵を!
「ちが! お、俺のじゃ、俺のじゃないっ!師匠の愛棒なんだ! お、俺はちょーっとだけ触ってみただけで、決して俺のじゃないんだー!」
「さ、触った……? もしかして、使ってみたことなど? 随分と太くて長い……」
「うわー! 返せ! ていうかお前の方が何倍も太くて長いわっ!こんなもんじゃねぇだろ!」
「そ、それも、そう……か?」
今だ、怯んだ隙に師匠の愛棒達を取り返した! しょ、処分だ、裏庭で火をつけて焼く! 証拠隠滅だっ! さらば師匠の愛棒よ、安らかに眠れ。できれば向こうの世界に転生して、師匠と間島の生活に彩りを与えてやってくれ!
「私の方が、ふふ……そうか」
悦に行ってほくそ笑んでるフロウライトは素直に返してくれたけど、こういう物の処分を後回しにしない方が良いなぁ。
つい一番太くて長いのを手に取った瞬間だった。
「あ、ああーイイ……ん?」
「あーっ!? 師匠っ」
「あれぇ? ナルミぃ?!」
鏡が静かに波打って見覚えのある顔が見覚えのある部屋で……愛棒握りしめてお楽しみ中だった。こっちでまだとどめを刺していないのにもうそっちの世界に転生してたのか、愛棒よ。
「師匠っ! 何やってんですか!」
「一人エッチですけど……徹ってば一週間の出張なんだもん。寂しくて」
「きゃーー?!」
元の俺の、谷口鳴海の顔の奴が可愛らしくこてん、と首を傾げて「何当然のこと聞いてるの?」だって、ら尻に愛棒をブッ刺しながら。師匠っ何エロいことさらっといってくれてんですか?! なんか全ての元凶は師匠の性欲な気がしてきた……頭が痛い。
「凛莉? 誰かいるのか……あれは」
「ナルミ、まずは絞めろ。聖騎士極でも呼吸を奪えば弱りはする。いう通りに動け、体が覚えているはすだ」
「誰だ?」
「そんなところまで入り込んでくるとは。証拠など一つもなかったはずなのに」
「あーあーあー……ちょっと待って……。師匠は尻から愛棒を抜いて。フロウ、あれは元の俺の体に入ったマラカイト・凛莉だ。あの鏡の向こうにいる体が元の俺だ」
多すぎる事象にとりあえずできることからやっていこうと思う。師匠はバイブ突っ込みながら暗殺の臨戦体制だし、フロウライトもその剣呑な気配を察知して神経を尖らせてるし、ああ……頭痛が加速する。
「こちらから攻撃はできない……ナルミ、そいつに気を許すな」
「アレが凛莉の元の顔。なんというかなんの特徴もない、普通だな。体付きも弱々しい、アレで私に攻撃? 無理だろう」
「黙れ、聖騎士極。ナルミを傷つけるのは許さない」
「元のマラカイトだったな? 傷つけるわけがない。私の大切な伴侶だぞ」
鏡を挟んで師匠とフロウライトが激しく言い合いを始めた。とりあえず、鏡は物理を通さないようだから見守っても問題なさそう。というかこの状況、一体どうしたらいいんだ? 誰か助けてと愛棒に祈っても誰の救助も期待できそうにない。
「伴侶?! どうせぼやっとしているナルミを無理やり組み敷いていうことを聞かせたんだろう? 聖騎士の癖にやることが汚いな。正論ばかり振り翳していたのに、何だそれは? 聞いて呆れる」
「うっ……その辺りは反論の余地がない……だが私は凛莉と生涯を共にすると誓ったし、凛莉も受け入れてくれた。私達はずっと一緒だ」
「なんだそれは。まるで結婚したかのように……」
「したが?」
突然左手を引っ張られて鏡の前にかざされた。
「ほら、結婚した者同士がつける指輪だ。呪いで外れなくしているようなものでもない。凛莉は自分からつけてくれている。私達は愛し合っている」
「にゃにぃーー?!」
師匠が鏡の向こうでキレた。
「徹は私に指輪を買ってくれないのに?!?!?」
あっ……そこでしたか、師匠。
その後ずーん、と落ち込んでしまった師匠との会話は楽だった。
「うん……それでね。私とナルミ……いや、私はもうマラカイト・凛莉に戻りたくない。だから、その名前は全部ナルミにあげる。だからナルミのことは凛莉と呼ぶよ。私と凛莉がお互いにこのエッチな棒を握って鏡に映ると繋がるみたいなんだ」
「な、なんですか? その設定」
「私が決めた訳じゃないし……一回話をしたらしばらく無理かもしれない……ちょっと分からないね」
「なるほど……」
前に一度繋がった時に師匠はこの仕組みに見当がついたらしい。俺はまったく気が付かなかったのに……。流石師匠、冴えてます。安心して尻のバイブは抜いて下さい。
「それで凛莉は聖騎士極で良いんだね……」
「あ、うん……俺、フロウライトのこと好きだ。幸せだよ、師匠。師匠はどう?」
「私も順調だったんだけど、徹が結婚しようっていってくれないの」
「そっちの世界ではその辺制約が多いから……」
「私がクミチョーの介護してるから?」
「……なんか不穏なワードが聞こえてきましたが、組長って……いや、それは関係ないかな……多分間島のことだから給料3ヶ月分貯めてるんですよ……」
「その話、ネットで見たけど……くすん」
師匠は可愛いウサ耳がついたパーカーパジャマを着て体育座りをしている。なんつー乙女チックな服……師匠ってほんとはあんな可愛いのが好きだったのか……俺の顔でそりゃないでしょ、と思ったけれど意外と似合っている。
元俺の顔のはずなのに何だか違う人間に見えてくる。きっと師匠が入ってもうあそこにいる人間は谷口鳴海じゃなくてリンという人なんだろう。もしかしたらマラカイト・凛莉も前とはかなり変わっているのかもしれない。
「本当に昔の闇暗殺者極なのか? いや、確かに最初の殺気は酷く背筋が寒くなるあの当時の恐怖を感じだが……」
「本当なんだ。あの部屋に俺は住んでいた……すごく片付いているな、師匠が片付けたんだろう。もっと散らかって汚かった」
「今はこっちだって片付いている。凛莉は綺麗好きだ」
「モノが少ないから……」
変わったな、こうやってフロウライトとイチャイチャと寄り添っているもんな。鏡の向こうから師匠が冷たい目で思いっきり睨んでるし。
「ふん……結婚おめでと……私だっていつか徹と……すん」
「あ、ありがとうございます。師匠……」
「ふん、良いじゃん。聖騎士はちんちんおっきそうだし、毎晩エッチすればいいよね。どうせ私は徹と一週間会えてませんよぉーだ」
「師匠ぉ~~」
あーあ、師匠スネちゃった。本当に師匠は俺が知っていたマラカイト・凛莉とはかけ離れた性格だったんだなぁ。
師匠の目から涙が溢れる前にピンポーンと家の呼び鈴がなった。
「あれ? 徹って帰ってくるの明日じゃなかった? 徹、徹なのー?」
さっと立ち上がって師匠は鏡から離れて行く。でもまだ愛棒を握ったままだったらしく声が聞こえてくる。
「どうしても早くリンの所に帰ってきたくて、速攻終わらせてきた」
「徹……私も会いたかった」
「リン、帰りに注文してたのがやっとできたんだ……受け取ってくれるかい?」
「何を?」
音しか聞こえてこない。つい俺とフロウライトは鏡に耳を近づけていた。
「結婚しよう、リン。この指輪を受け取って欲しい」
「徹……凄い……キラキラしてる……おっきい、宝石? これ……」
「金額じゃないけどさ。君に贈りたくて」
「徹……徹、嬉しい! 私をお嫁さんにして!」
「もちろんだとも!」
ぷつん、そこで鏡は普通の鏡に戻った。きっと喜びのあまり愛棒を捨てて徹に抱きついたんだろう。やはり棒より恋人に限るということだ、当然だ。
「……」
「……」
「私も大きな宝石がついた指輪を買ってくる」
「やめてくれ。この指輪、気に入ってるからこれが良いんだ」
そして少しだけ間が開く。
「わ、私は凛莉が好きだ」
「俺も」
フロウライトは何か言いたいことがあるんだろうけれど、うまく言葉にできていないんだろう。ナルミの顔は好みじゃなかったとか、あんな体じゃ抱けないとか。色々引っくるめて、俺が凛莉師匠の体に入った俺で良かったといいたかったらしい。一生懸命瞳が右往左往して、変な汗を掻きながら言葉を選んでいる、不器用でそんなところも可愛いなと思う訳だ。
俺も間島と結婚なんてしたくない、考えただけで吐き気がする。フロウライトだから良いんだ……。
「えーと、少し私を小馬鹿にしているようにみえて大切にしてくれているところとか」
「無理に言葉にしなくて良いぞ」
「いやしかし」
「お前のそういう律儀なところは嫌いじゃない」
「私は君の察しがいい所に助けられているな」
「伴侶だからな」
「ああ」
フロウライトに抱き寄せられてキスをする。向こうから切られて繋がってはいないけれど、俺も持っていた棒を放り投げた。こいつを本来の目的で使うことはもうないだろうし。
「凛莉、抱きたい」
「うん、俺もシたい」
きっと師匠も間島と盛り上がっているだろうし、俺達も愛し合おう。
「リン師匠も幸せそうだし、俺もお前と一緒にいれて結婚できて嬉しいよ」
同意の言葉か、抱き締めてくるかのどちらかかと思ったら、フロウライトは腕を開いたままプルプルと震えていた。
「フロウ?」
「こ、このまま凛莉を抱き締めたら、嬉しすぎて力の加減ができずまた気絶させるかもしれない……っ」
流石に思わず吹き出してしまった。
「気を失ったらできないもんな? はは、俺はまだ強くならなきゃいけないみたいだな? どれだけ強くなれば良いんだ?」
「わ、私に締め落とされなくなるまで……!」
「どんだけだよ。でもそうなれるように頑張るさ」
「凛莉っ!!」
「うぐっ?!」
感極まったフロウライトにまた絞め落とされたのはいうまでもない。本当に私の可愛い馬鹿野郎は可愛い伴侶だった。
俺達結婚しましたり 終
68
お気に入りに追加
1,455
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる