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社畜と入れ替わった闇暗殺者の私と同期の話
14 選ばせてやる!
しおりを挟む「あ……」
「た、谷口、お前何を……っ」
つい夢中になって励んでいたら、ベッドの真横に徹が息を切らして立っていた。走ってきたであろう徹に私は至極当然の用意してあった質問をする。
「徹?!ど、どうして」
部屋に鍵は掛けてある。でもチェーンは外しておいた……元々ナルミはチェーンはかけない派だったようで、体に染み付いた動きでそれがわかった。危ないと思い私はチェーンも併用するようになったけれど、今日はかけなかった……やっぱりな、徹はこの部屋の合鍵を作ってたんだな……私にもナルミにも無断で。
「っ……バイブ……っ?! こんなモノ咥え込んで、谷口はこんな事する奴じゃなかっただろう!!」
おいおい、不法侵入の奴に大声でそんなことを問い詰められてもな?
「徹に関係ない!」
「関係ある! 俺は……俺は谷口のことが好きなんだ、好きな奴のそんな格好見せられて普通でいられる訳ないだろう!」
走ったせいか、純粋に興奮しているのか、徹の息は荒い。しかも会社から帰って着替える間もなかったらしくまだワイシャツにネクタイ。そのネクタイを緩めながらゆっくり近づいてくる。
「来るな! 出て行けよ! なんで勝手に入って来てるんだ」
「そ、それは……い、今はそんなことどうでもいいっ」
どうでも良くないことくらい知っている。不法侵入は警察に捕まるんだ、知っているぞ! 警察は怖いんだろ?
「と、とにかく出てけっ……あぁぅんっ」
「た、谷口っ!」
徹と話をしているが、私の尻は適度に太いモノを嵌めたままなんだ。分かっているよ、とんでもない格好をしていることくらい。
徹。この世界に来て、私に初めて優しくしてくれた人。多分この世界でナルミより要領が良くて成果を出せる能力のある人間。私は君のことが嫌いじゃない……。
「徹、私はリンだ」
「え……」
だから君を罠にかけ、毒を与えよう。君が盗聴機とやらで私の動向を監視していたことを知りつつ私は痴態を見せたよ、これは罠だ。
「徹……私は、リンなのだ」
「……っ」
私はナルミじゃない、私はリンなのだ。それをしっかり知った上で君はどういう決断をする?
この世界はどうやら同性同士で結ばれることはあまり推奨されていないらしい。ナルミもそうだったように、女性と結婚することを望んでいる男性が大半だ。
でも徹は違った。同性であるナルミを好きになった……しかもかなりの執着をみせている。盗聴機を仕掛け、無断で合鍵を作る。この世界の道義を鑑みても推奨されることじゃないし、私が元いた世界でも悪に分類されるだろう。
それでも徹はやってしまった、ナルミ愛しさに。そしてそのことを一切ナルミに知られていない、隠したということはナルミに自らの趣向に準じて欲しかった訳でもない……だが、ナルミの姿をしたモノが自分の趣向に沿うモノだったなら?
どうする?徹。私はお前に抱かれても構わないよ。ただ、私を組み敷くならそれはナルミの代わりは許せない、私でなければ許さない。
さあ、選べ徹。純粋にナルミを求めるのか、毒みたいな私が混じって薄汚れたナルミの体を取るのか、お前に選ばせてやる!
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