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番外編 おねぃちゃん

1 おねぃちゃんと私

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 私の名前はシトリン。錬金術師極のシトリン・トパーズだ。元々孤児だった私を先代の錬金術師極が養子にして、そうなった。そんな私がリンリーちゃんと顔を合わせたのは闇暗殺者ギルドに師匠に連れられて行った時だ。
 薬と毒は紙一重。材料の融通や情報交換で、暗殺者ギルドと錬金術師ギルドは仲が良い。そこで同じく極候補として注目されていた若い同じくらいの歳の男の子。目が真っ赤で、とても冷たい態度で凄く怖かった。

 でもリンリーちゃんは私を最初から錬金術師として認めてくれていた。態度は怖いけれど、馬鹿にはしない侮らない。ある意味公平な人だったんだ。

「シトリン、何をしている」
「えっ」

 そして私達は極になり、ある日突然驚いた。リンリーちゃんが私の名前を呼んだんだ!いつも錬金術師極って呼んでたのに、あの日からリンリーちゃんは私を個人としては認識してくれた。びっくりした、凄く。ものすごく嬉しかった!
 そしてリンリーちゃんは凄く、すごーく優しくなった。

「リンリーちゃあん!」
「飛びつくな」

 前なら絶対こんな恐ろしいことしようと思わなかった。リンリーちゃんに後ろから飛びついてみようなんて!
 おっきな背中、凄い筋肉! なのにちょっと柔らかくて触り心地が良いの。でも一番良いのは……。

「おっぱい大きい!」
「……痴女?」
「うきぃ!」

 でっかいおっぱいと、冗談に付き合ってくれる所。背中にくっつけたまま振り払いもしないでずーっと乗せて行ってくれる。優しくてあったかいの!

「変わったらしいです。凄く優しい」
「だよねぇ。前なら殺されてるよねぇ?」

 リンリーちゃんの腰巾着のサファイアくんとひそひそ話をしたこともある。リンリーちゃんは優しくなった、そして最後はやっぱり。

「おっぱいでっかい!」
「お尻も大きいんですよ! なのにウェストはきゅって締まってて……ああ!堪らないです、服作りが捗りますっ」
「分かるぅ~~! あと触り心地がよい!」
「くっ! 無邪気強い!! 俺も触ってみたいっ」

 私はますますリンリーちゃんのことが好きになった。だってリンリーちゃんは頼りになる……。

「おねぃちゃんみたいだなって」
「せめてお兄ちゃんだろう……」
「えーん! おねぃちゃんがいい! おねぃちゃんーー!」
「こんなゴツい姉がいる訳ないだろう!」

 ちょっとだけ怒られちゃった、てへ!

「錬金術師極……依頼では?」
「あ、うん、そうなの。えっとね、シロバナ延命草の在庫が尽きそうなのよ。最上級ポーションの材料なんだけど、アレのせいで」
「あー……バグか」
「バグ??」

 リンリーちゃんは何でもない、と付け足してから話を続けてくれる。私の話をきちんと全部聞いてくれる所も大好き!

「マンティコアの無限沸きね。そういや群生地のそばか」
「そうなのー! こんな王都のそばにあんなものすごく強い魔獣が出現し続けてるの異常でしょ」

 そうなのだ、ポーションの材料の群生地にあり得ない魔獣が湧き続けるという異常現象が起こっている。マンティコアは強くって錬金術師じゃ歯が立たないから、闇暗殺ギルドに助けを求めに来たんだ。

「まったく運営は何やってんだよ。マンティコアなんて美味しくないからプレイヤーは狩らないし、無限湧きとか放置すんなよ」
「リンリーちゃん?」
「何でもない」

 まあ、とにかくなんとかして欲しいのだ、助けてリンリーちゃん!

「シロバナ一撃草の根が枯渇したんじゃ?」
「ええ、近いうちに手勢を集めなくてはと思っておりました」

 リンリーちゃんは闇暗殺者ギルドのマスターとお話している。リンリーちゃんはギルドマスターじゃないのよね。表に顔を出すのはおじさんのギルドマスターで、リンリーちゃんの正体を知る人は少ないの。
 そして優しいリンリーちゃんは、交渉してくれてるんだ。

「シトリン、一撃草の方も集めてくれるんなら、割引で護衛しよう」
「やったぁ! リンリーちゃん大好きぃー!チューしてあげる!」
「いらん。無料じゃないからな」
「うんうんー! 助かるー」

 闇暗殺者一人護衛につけるだけでいくらお金がかかるか考えたくもない。顔馴染みってことで割引して貰えそうだから依頼しに来たんだけど、ついでにリンリーちゃんがいてくれて助かった!闇暗殺者ギルドマスターはちょっと渋い顔をしていたから、リンリーちゃんはかなり値切ってくれるんだと思う!本当に優しいなぁ~私のおねぃちゃんは!

 

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