上 下
90 / 117

90 フロマです

しおりを挟む

「……マークちゃん、結婚したんだって?」
「あ、はい……」
「フロウライト・アイアンメイデンとだよね?」
「そ、そうです」

 こうやって街角で急に呼び止められ、プレイヤーの冒険者と話すのにも慣れて来た。しかし、マークちゃん……ちゃん付けなんだ、俺……。

「新刊はフロマだわ」
「はあ?! マフロでしょ?! あんたとは話し合う必要がありそうね?!」
「はあ?! 今決着つけてやるわ!表出ろ」

 こういう会話にも慣れて来た。笑って無言を貫くのが一番だ。そしてゆっくり消えて行く。フェードアウトは得意だからね。

「マーク」
「あ、フロウさん」

 間が悪い!アイアンメイデン侯爵が失脚すると、王太子殿下の要請もあり恙無く聖騎士団長に復職したフロウライトが手を上げて近づいてくる。無視して不仲説が広がるのも面倒だし、ヘラッと笑って頭を下げるしかない。

「揉め事か?」
「よくわかりませんが意見の不一致みたい? です」

 多分そういう奴だったはずだ。

「ぎゃあ! 聖騎士極……キラキラしてる……!」
「実物をこんな近くで見たの初めてかも、拝んどこ」

 プレイヤー達の奇怪な行動はフロウライトには理解できないだろうし、理解したくて良い所だ。大人しく拝まれている。

「まあ……大丈夫なら良い。それより、マーク。今日は早く仕事が終わるからどこかで夕飯を食べて帰ろう。ダイヤモンドがいってた店でどうだろうか?」
「ええ、そうしましょう」

 サファイア君が悪くなかったですよ、っていってたから、かなり美味しかったんだろうしね。サファイア君は典型的なツンデレスタイルをダイヤモンドに施している。そしてダイヤモンドもありがたく拝領していて、良いお付き合いをしているようだ。ただ、夜に関してはブツブツと呟いているのを聞いた。

「極怖い、極怖い……」

 ダイヤモンドとの体力の差でいいように弄ばれているのか……わかるぞ、俺も体力お化けと毎晩対戦してるからな……。少しだけ現実逃避しそうになったが、それだけいうとフロウライトは巡回には戻ったし、俺も今日予定している教会なんかを回ろうと思う。

「はわわ……良いもん見た、もうどっちでも良いか」
「性癖は大切にしよう……」

 二人のプレイヤーも和解したようで何より。所でフロマってなんだろう? こういう時スマホが恋しいな。あればすぐ調べられるのに。


 俺の日常はたまに闇暗殺者ギルドから応援というか喝入れを頼まれたりするくらいでマラカイト・凛莉の仕事は殆どない。もしかしたら何か事件が起きれば大きく動くことがあるかもしれないが、今は至って平和だ。
 今日だってあとあと夕方にフロウライトと合流して、例のステーキ店へ行きたらふく肉を食べて帰ってきた。
 フロウライトは勿論だが、俺がかなり食うのを店の人は目を丸くして見てたけど、まあ食うよ、この身体を維持して行くにはタンパク質は必須だし。あと普通に美味しかった! デザートにケーキも出てきたけどそれもペロリと平らげた。


「凛莉……」
「ん……」

 日課でルーティンのように毎夜ベッドに誘われるが、最近は日課だけじゃないって気がついている。

「お前、キラキラしてるってさ」
「君の前では霞むよ」

 少し気障に返されたけれど、自分がそんな軽い八つ当たりめいたことを口にするのに驚いた。昼間、プレイヤーにフロウライトが褒められたことが気に掛かっていたみたいだった。これって?

「嫉妬かな?」
「嬉しい」

 慣れた手つきで服を脱がして行く。凛莉が極会議に着ていくサファイア君渾身の衣装はもたついてしまうがマークの服ならもうお手のものだ。

「器用になったな」
「必死で勉強したからな……君を抱きたくて」
「う……」

 ストレートにいわれると恥ずかしくて照れるな。ついでに最近のこいつはそんな様子の俺をみて喜ぶ余裕すらある、ちくしょう。
 降りてくる唇に、胸の皮膚の上を這う舌先にも毎晩のことだけれど日に日に上手くなっている気がするのがさらに怖い。

「……っんあ」
「可愛い」
「んっ」

 怖いけれど、まあ良いか。他の誰かに知られる訳でもない、多分一生ただ一人だけ。思えば何の了承もしないまま、とんでもない誓約をされられたもんだ。

「……神って怖いな」
「畏れ敬い慕えば、心強い……そして福音をくれる」
「あー……」

 そういえばフロウライトは聖騎士だから、俺より神に愛されているのか? あれ、そう考えるとやっぱり俺ってこいつを働かせるためのエサだったんじゃね?

「凛莉、いいか?」

 おっとっと、エッチしてる最中だった。神様のことはまあ置いておこう……真意なんてそれこそ神のみぞ知るだ。

「うん……ゆっくり、な?」
「ああ」

 大きく息を吐いて迎え入れる準備をする。

「……あ、ん……っ」
「っふ……」

 のし掛かられる圧、割り開かれる不快感や恐怖感は慣れるものじゃないけれど、それを差し引いても受け入れてもいいと思うんだ。
 約束通り、最初はゆっくりゆっくり侵入してくる……偉い偉い。まあ、最後の方は壊れるんじゃないかってくらい突き上げられるんだけどな。

「凛莉……入った」
「ん」

 無事に全部埋め込んでキスをする余裕もあるらしい。成長したものだ。
 

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

こんな異世界望んでません!

アオネコさん
BL
突然異世界に飛ばされてしまった高校生の黒石勇人(くろいしゆうと) ハーレムでキャッキャウフフを目指す勇人だったがこの世界はそんな世界では無かった…(ホラーではありません) 現在不定期更新になっています。(new) 主人公総受けです 色んな攻め要員います 人外いますし人の形してない攻め要員もいます 変態注意報が発令されてます BLですがファンタジー色強めです 女性は少ないですが出てくると思います 注)性描写などのある話には☆マークを付けます 無理矢理などの描写あり 男性の妊娠表現などあるかも グロ表記あり 奴隷表記あり 四肢切断表現あり 内容変更有り 作者は文才をどこかに置いてきてしまったのであしからず…現在捜索中です 誤字脱字など見かけましたら作者にお伝えくださいませ…お願いします 2023.色々修正中

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜

Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、…… 「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」 この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。 流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。 もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。 誤字脱字の指摘ありがとうございます

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

処理中です...