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90 フロマです
しおりを挟む「……マークちゃん、結婚したんだって?」
「あ、はい……」
「フロウライト・アイアンメイデンとだよね?」
「そ、そうです」
こうやって街角で急に呼び止められ、プレイヤーの冒険者と話すのにも慣れて来た。しかし、マークちゃん……ちゃん付けなんだ、俺……。
「新刊はフロマだわ」
「はあ?! マフロでしょ?! あんたとは話し合う必要がありそうね?!」
「はあ?! 今決着つけてやるわ!表出ろ」
こういう会話にも慣れて来た。笑って無言を貫くのが一番だ。そしてゆっくり消えて行く。フェードアウトは得意だからね。
「マーク」
「あ、フロウさん」
間が悪い!アイアンメイデン侯爵が失脚すると、王太子殿下の要請もあり恙無く聖騎士団長に復職したフロウライトが手を上げて近づいてくる。無視して不仲説が広がるのも面倒だし、ヘラッと笑って頭を下げるしかない。
「揉め事か?」
「よくわかりませんが意見の不一致みたい? です」
多分そういう奴だったはずだ。
「ぎゃあ! 聖騎士極……キラキラしてる……!」
「実物をこんな近くで見たの初めてかも、拝んどこ」
プレイヤー達の奇怪な行動はフロウライトには理解できないだろうし、理解したくて良い所だ。大人しく拝まれている。
「まあ……大丈夫なら良い。それより、マーク。今日は早く仕事が終わるからどこかで夕飯を食べて帰ろう。ダイヤモンドがいってた店でどうだろうか?」
「ええ、そうしましょう」
サファイア君が悪くなかったですよ、っていってたから、かなり美味しかったんだろうしね。サファイア君は典型的なツンデレスタイルをダイヤモンドに施している。そしてダイヤモンドもありがたく拝領していて、良いお付き合いをしているようだ。ただ、夜に関してはブツブツと呟いているのを聞いた。
「極怖い、極怖い……」
ダイヤモンドとの体力の差でいいように弄ばれているのか……わかるぞ、俺も体力お化けと毎晩対戦してるからな……。少しだけ現実逃避しそうになったが、それだけいうとフロウライトは巡回には戻ったし、俺も今日予定している教会なんかを回ろうと思う。
「はわわ……良いもん見た、もうどっちでも良いか」
「性癖は大切にしよう……」
二人のプレイヤーも和解したようで何より。所でフロマってなんだろう? こういう時スマホが恋しいな。あればすぐ調べられるのに。
俺の日常はたまに闇暗殺者ギルドから応援というか喝入れを頼まれたりするくらいでマラカイト・凛莉の仕事は殆どない。もしかしたら何か事件が起きれば大きく動くことがあるかもしれないが、今は至って平和だ。
今日だってあとあと夕方にフロウライトと合流して、例のステーキ店へ行きたらふく肉を食べて帰ってきた。
フロウライトは勿論だが、俺がかなり食うのを店の人は目を丸くして見てたけど、まあ食うよ、この身体を維持して行くにはタンパク質は必須だし。あと普通に美味しかった! デザートにケーキも出てきたけどそれもペロリと平らげた。
「凛莉……」
「ん……」
日課でルーティンのように毎夜ベッドに誘われるが、最近は日課だけじゃないって気がついている。
「お前、キラキラしてるってさ」
「君の前では霞むよ」
少し気障に返されたけれど、自分がそんな軽い八つ当たりめいたことを口にするのに驚いた。昼間、プレイヤーにフロウライトが褒められたことが気に掛かっていたみたいだった。これって?
「嫉妬かな?」
「嬉しい」
慣れた手つきで服を脱がして行く。凛莉が極会議に着ていくサファイア君渾身の衣装はもたついてしまうがマークの服ならもうお手のものだ。
「器用になったな」
「必死で勉強したからな……君を抱きたくて」
「う……」
ストレートにいわれると恥ずかしくて照れるな。ついでに最近のこいつはそんな様子の俺をみて喜ぶ余裕すらある、ちくしょう。
降りてくる唇に、胸の皮膚の上を這う舌先にも毎晩のことだけれど日に日に上手くなっている気がするのがさらに怖い。
「……っんあ」
「可愛い」
「んっ」
怖いけれど、まあ良いか。他の誰かに知られる訳でもない、多分一生ただ一人だけ。思えば何の了承もしないまま、とんでもない誓約をされられたもんだ。
「……神って怖いな」
「畏れ敬い慕えば、心強い……そして福音をくれる」
「あー……」
そういえばフロウライトは聖騎士だから、俺より神に愛されているのか? あれ、そう考えるとやっぱり俺ってこいつを働かせるためのエサだったんじゃね?
「凛莉、いいか?」
おっとっと、エッチしてる最中だった。神様のことはまあ置いておこう……真意なんてそれこそ神のみぞ知るだ。
「うん……ゆっくり、な?」
「ああ」
大きく息を吐いて迎え入れる準備をする。
「……あ、ん……っ」
「っふ……」
のし掛かられる圧、割り開かれる不快感や恐怖感は慣れるものじゃないけれど、それを差し引いても受け入れてもいいと思うんだ。
約束通り、最初はゆっくりゆっくり侵入してくる……偉い偉い。まあ、最後の方は壊れるんじゃないかってくらい突き上げられるんだけどな。
「凛莉……入った」
「ん」
無事に全部埋め込んでキスをする余裕もあるらしい。成長したものだ。
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