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85 こんな時に眼鏡の三つ編み美少女??

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「お祝いのフラワーボールよぉ!マークちゃあん!」
「はっ?! 殺気未満の何か!」

 フロウライトの顔に手を伸ばしかけたときに何かが飛んできた。俺達に害意を持って投げつけられたものではないけれど、不穏な何か。でも祝いと聞こえてしまったのが悪かった。叩き壊すのを躊躇ってしまったのが敗因だ。

「た、玉? 花の? うわっ」

 きれいな花で覆われたバレーボール大の玉。カラフルな花で飾られ、祝いの席に確かに相応しいかもしれないけれど、そいつがパカリと割れたのだ。

「っ! 吸うな、何か含まれている!」

 花びらと共に白い煙が舞い上がる。毒ではないが、普通ではない何かが含まれている煙だ。一体誰がこんなもの投げ込んだ?
 飛んで来た方向をみると、背の小さい眼鏡の女性が笑っている。

「えへっ」
「お前……その背格好、シトリンだな?」
「あったりー!普段は街の可愛いお薬屋さんの看板娘! 眼鏡で三つ編みソバカスのシトリンちゃんだよぉっ!結婚おめでとうなの!凛莉ちゃん? マークちゃん? ま、どっちでも良いかなっ私からの祝福だし」
「お前、祝福って……うっ」

 まずい、視界が揺れて立っていられない。ニヤニヤ笑うシトリンが三人に見えて、霞んでくる。相当強い薬だ、これ。

「おーやっぱり効くねぇ! 流石私、流石の神配合!」
「シトリン、おみゃえ……」

 口が回らない、一体何を吸わされたんだ? 俺がこんなんじゃフロウライトは相当酷い症状に……?!

「本当に君はシトリンなのか?」
「そだよ、フロウライト。でも内緒にしといてよ?」
「内緒は分かったが君は一体何をしたんだ?」

 あ、あれ? フロウライトは平気なの、か? 俺は熱も上がって来たし、息も苦しくなってきたのに。

「凛莉ちゃん達ってさ、毒を嗅ぎ分けるのに訓練積んでるでしょ? だからそういうのに敏感なんだよね。敏感なもんだからすぐ効いてくる、そういうことなんだけど。あ、私は対抗薬飲んできた」
「だから、一体何を嗅がせたんだ?」
「そりゃ新婚ほやほやの二人の楽しい夜を演出する凄くエッチになるお薬を少々……いや中中?大大?ごめん、やっぱ特盛で入れときました!」

 は? シトリンにゃにをゆっとる?あ、思考がふにゃふにゃしてきちゃ……まじゅい、膝から力がぬけ……あうう。

「早く帰った方がいいよ?フロウライトにも効くんだから。時間差でね?一週間くらいイチャイチャしなよ、頑張って~」
「急いで帰った方がいいのだな?」
「うん。その辺で始めたくないなら家まで帰りなよー」
「……り……いやマークは元に戻るんだな?」
「もちろん! いやぁこんなに効くとは思わなかったー薄めて売ろうっと」
「……失礼する」

 フロウライトとシトリンの会話は聞こえていた。くそ、シトリンめぇ! 後で覚えてろにょ。元に戻っひゃらほっぺを赤くなるまでつまみ上げてひゃる……

「り、マーク。掴まれるか?」
「らいりょう、う……ひゃ、ない……みらい……あうぅ」

 もう一人で立っていられなくてフロウライトに寄り掛かっている始末だ。流石錬金術師極の薬は悔しいがよく効く……油断ひちゃあ……あわわ……。

「すぐ帰る」
「うにょ……」

 もう素直に抱き上げられるしかない。ああ、もうどうでも良い。早く帰りたい……ぐったりぐんにゃり、大人しく抱き上げられる。

「うにゃ……」
「シトリン、シトリン? これ、何だって??」
「えーと、誰?」
「俺俺、鍛冶屋のダイ……ってあー、ダイヤモンドなんだけど、これ何?ファイ君がふにゃふにゃになっちゃってるんだけと??」
「あれ? いたの?」
「いたよ! 俺らもリンリーちゃんを茶化しに違ったお祝いしに来たんだけどさ。どしてファイ君がもうめちゃくちゃに抱いてっみたいな顔になってるの??」
「そりゃめちゃくちゃに抱いてってなるお薬を盛り盛りの盛りにしてぶちまけたからだけど、あちゃー被弾したのかぁ!ごめんごめん。早く帰ったら?」

 なんだか二次被害が起こっているようだ……。

「え?マジで!良いの?」
「うんうん、リンリーちゃん用にちょっと盛ったけど、まあ死なないから大丈夫でしょ」
「お、俺……エッチ特盛のファイ君とくんずほぐれす一週間? きゃっほー! シトリン、ありがとー!今度なんか作ってやるよ!バイバーイ!」
「あー、リンリーちゃんの部下のサファイア君ね。なるほどなるほど!ダイヤモンドちゃん頑張ってねー」
「うん!頑張るー!」

 良い仕事した、とシトリンは笑顔で家路に着いたらしいけど、当然一週間後俺とサファイア君からめちゃくちゃ怒られる運命なんだぞ!首以外も全身洗って待ってろーー……うにゃ……。





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