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77 大好き師匠(サファイア

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 最近街で見られるようになった光景。街のお人好し初級治癒術師マークさんの家の前に大きな魔獣がのそりと座り込んでいる。

「フィンだー」
「くるる~」

 近所の子供に触られても大人しくご機嫌にしている賢い魔獣。首にゴツい首輪をつけている聖騎士の騎獣。

「だんちょーさん、今日はお寝坊なの?」
「くるっ」
「そうなんだーでもいつもお寝坊じゃない?」

 そうなのだなのだ。

「何か忙しいのかな?」
「くっくる!」
「そうなの?」
「くー」

 そうなのだ忙しいのだ……仕事じゃねぇだろ!

 分かっている事ながら、師匠と団長さんは昨晩もお楽しみだったはずだ。

「怒るよ?」
「はひぃ!!」

 二人で過ごす夜には誰も絶対に近づかない。そりゃそうだろう、誰が恋人との情事を覗かれたいもんか! 好奇心を抑えられたなかった下っ端をボッコボコにするのも俺達の役目だしな。師匠にそう念押しされて俺達賢い部下は絶対に覗いたりしない、賢いし命は惜しいもん。あと師匠に嫌われたくない……いやでもあの顔に冷たい目で見られたら……ゾクゾクしちゃうかも! でも嫌われたくない!

 俺は窓から子供と遊ぶフィンの姿を見ながら俺は真っ黒な布をパンッと伸ばした。

「真っ黒じゃん」
「一番師匠に似合いますから」
「分かる気がするよ」

 仕立て用のトルソーにかなりエッチでスケスケな黒い布で作っている男性用の服がある。あー!絶対師匠に似合う!このベルトであのパッツンパッツンなおっぱいが強調されて……良い!想像しただけで鼻血出そう。先っちょの部分はそうだなあ、レースでちょうど隠れるように……見えそうで見えない、いや見えてる!? それくらいが最高だ。

「ホント、サファイア君はリンリーのこと好きだね」
「今は仕立て屋ですからファイって呼んで下さいよ、ダイさん。あと師匠っていって。師匠のことは大好きですよ最高です」

 元の師匠は俺達部下の生活なんて気にしない人だったから、俺がこんな近くで仕立て屋をしてるなんて知らない。でも今の師匠なら気がつくかな?気がついてもあの師匠なら笑って済ませてくれそうだ。

「まあ、あの体は良いよな。フロウライトが羨ましいよ、毎晩抱いてるんだろ?アレをさぁ」
「毎晩でしょうね。グリフォンがああやって毎日家の前で待ってますもん……朝、起きられないなんて一体何時まで何回してるんだ……!けしからん」
「5回かなぁ、6回かなぁ……」

 ニヤニヤしながらダイさんは想像しているようだけど、違いますよ、多分二桁ですよ? あの人達だもん。しかし、あの師匠を抱き潰すなんて、ホント聖騎士極って怖い。やっぱり俺じゃ勝てないんだなあ……。

「ねーファイ君ー俺らももう一回しよーよー」
「嫌です、今すごく良いイメージが降りて来たんですから!もう少し待って!」
「はぁーい」

 うん、俺はダイさん……技工士極のダイヤモンド・シグクレイをベッドに置き去りにして服の仮縫いをしている。だってしょうがないだろ?! 浮かんできたのを早く掴まなきゃ消えちゃうもん! ダイさんはそんな俺のわがままをニコニコしながら許してくれている。

「あー後でハサミ研いでやるよ、切れ味落ちてんじゃん」
「え?いつも通り怖いくらいよく切れますよ?」
「いや、そんなんじゃ駄目だ。職人は良い道具使わないと駄目」
「分かりました」

 そして職人気質のダイさんは本当にいい道具を作ってくれた。

「俺と付き合ってくれたら良いハサミ作ってやるけど?」
「えっ?!」
「かったい魔獣の皮もスイスイ切れる奴」
「ええっ?!」

 そんなのあったら師匠のブーツ作り放題じゃないですか?! いつも靴やグローブは硬くて硬くて泣きながら切ってるのに、スイスイですと!? 俺はその時、皮がスイスイ切れるかもしれないという奇跡の光に誘われる哀れな虫みたいにダイさんに吸いもせられていったらしい……らしいというのは、覚えていないからだ……おかしいな?

「あと針も作れるよ」
「え?!」
「じゃぁ、一緒に行こうねー」
「本当に魔獣の皮もスイスイ縫える針とか作れるんですか?!」
「作れるよー?ハイハイ、俺んち行こうねー?」
「す、凄い……すごすぎる!!」

 気がついたらダイさんちのベッドの上で美味しく頂かれていた。でも、確かに約束通りスイスイ切れてスイスイ縫えちゃう裁縫道具を作ってくれた。しゅごい。あと頼んでないのに色んなものを作ってくれる……かなり嬉しい。もうサンダルからロングブーツまで何でも作れる。
 あのふくらはぎはむちっと筋肉がついてるのに、足首のところは綺麗にくびれてきゅってしまってる足にピッタリな靴が思い通りに作れるんだ! ホント技工士極の技って凄い!

「俺にもなんか服とか作ってよ」
「師匠のを作った余り布で良いですか?」
「うー……良いよ、それでもぉ~」

 ぶーっと頬を膨らませているけれど、ダイさんに黒は似合わない。とっておきの赤い皮で何か作ってあげよう、ダイさんには赤がよく似合うから。

「ファイくーん! 早く戻って来てーエッチの続きしよー早く、早くー」
「少し黙ってて!」

 同じ極なのに師匠もダイさんもフロウライトさんも全然タイプが違う。もっと偉そうにしてていいと思うけれど、ダイさんはいつでもこんな風に気さくだし、とても軽い。でもその軽さが心地よいことに最近気が付いてしまった。

「触ってもただただ硬いだけなのになぁ~。師匠みたいにぷりってしてないし、ゴツゴツしてるのになあ」
「ファイ君は意外と柔らかいよ~。あーその辺、職特性なんじゃない?俺ら技工士は硬くてナンボってとこあるし。闇暗殺者はなんていうか体つきがエロいよ、最高です」
「うーん、そうなんですかねえ?自分じゃよくわかりませんよ」

 話しながらでも次の師匠に着てもらう服の原案は出来上がった! 最近寒いから毛皮とか使っちゃお。師匠なら絶対素敵に着こなしてくれるはず。

「ファイくーん、俺のファイくーん。えっちなおっぱいの俺のファイくーん」
「誰がえっちなおっぱいですか! 俺のおっぱいは普通です!」
「えっちだよ? リンリーのはちょっと大きすぎるからファイ君くらいがちょうどいい~俺の大好きなおっぱい~早く戻って来て~」
「何言ってんですか!」
「えへへ、ぜーったい逃がさないから、ずーっと仲良くしよーねー」
「うへ……」

 軽い口調の中にたまに怖さを忍ばせてくるから、この人が技工士極なんだなあって思い出してしまう……どうしよ、俺、逃げられないのかなぁ……?諦めとくべきだろうか……?

「はいはい、今戻りますよー」
「わぁい! 続き、続きー」

 モノに釣られたとはいえ、ダイさんは優しいし、職人として尊敬できるし大事に扱ってくれる。それに俺が馬鹿みたいに師匠に傾倒してることを許してくれる。

「師匠大好きな俺でいて良いなら、良いですよ」
「いいとも! ファイ君のそれは君の一部だからね。辞めさせたら君が君でなくなることくらい分かってるよー」

 がお!とわざとらしく声を上げてから押し倒された。やだなー俺のこと、よく理解されてるよー。ホント極って怖ーい。

「あはは、お手柔らかに」
「任せとけ」

 俺は俺で上手くやっていけそうです、師匠!





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