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74 ボッチだな?

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 ふと、寂しくなる時がある。こっちで過ごしている時間より元の世界で生きてきた時間が圧倒的に長いんだから、当たり前かもしれない。こっちの世界に家族はいない。凛莉師匠は気が付いた時には貧民街に一人でいたみたいだから血縁もまったくわからない。知り合いといってもマークの姿でいる時の顔見知りは闇暗殺者の顔を見せていないから深い仲とは言い難い。サファイア君は全部知っているが……彼は部下だ。部下は友達ではない。血縁もなく、友達もいない。

 どうしよ、俺ってばかなり寂しい奴だ。

「くるるー!」
「あっ、フィンは友達かもしれん!」
「くるっ」

 マークの家のすぐ隣の家を結局フロウライトは買い取ってしまった。

「騎士団で働いていて、給料も貰っているが使い道がなくてな。金はある」
「お、おう……」

 フィンは相変わらずとても賢くて、街の人達を怖がらせることもなくあっさり受け入れられた……というかどれだけ帰れといってもすぐうちのそばにきてしまい家の前に座り込んでしまうので仕方がなく隣の空き家を改装してフィンの家にしたんだ。

「仕方がないんですよ、ハンス氏はそりゃ盛大にフィンに嫌われましたから」
「だろうな」

 フィンのための家なのに何故か聖騎士団の派出所ができていて、聖騎士達が書類仕事をしたり、街の人と話をしてたりしている……なんで俺んちの横で?俺が眼鏡をしっかりかけてフィンの頭をなでなでしてる横でフロウライトは聖騎士達に次々の指示を出している。

「西の一つ飛んだ国の情勢が不穏だ、そちら方面に誰か派遣して情報を集めて欲しい。2週間ほどいける奴で」
「4班辺りが良いでしょう、手配します」
「うむ。あとこれから寒くなるから薬の在庫を見ておくように。去年の物で使えるものは孤児院に下ろしておけ」
「1班と2班から人員を出します」
「頼んだぞ、あと経費は早目に出すように。今のゴタゴタで紛失してはかなわん」
「了解です」

 あれ?団長はクビになったのでは……?

「くるるー?」
「フロウライトは聖騎士団長をクビになったのに、どうして聖騎士団長の仕事をしているのかなって不思議に思ったんですよ、フィン」
「くるっくるっ!」

 ついフィンに話しかけると、なにか当然といわんばかりの答えが返ってきたようだ。「仕方がないでしょ?フロウライトしかできないんだし」といっているように聞こえたし、きっとそういったんだろうな。

「くるる~くるる~」
「それは、ナイショ」

 多分、手を使わないで空中で回転して飛び乗れって……暫くフィンの厩舎に住み込みをしていた時によく遊んでいた乗り方をしろっていってるんだけど、それは断った。今やったら皆に色々バレちゃうでしょ。フィンは不思議そうに首を傾げてから、分かったと納得してくれたようだ……ほんとに賢い。

「いやあ、マークさんにはあんなに懐いているのに、ハンス氏はなぜあんなにフィンに嫌われているんでしょうね」
「ハンスは私の弟ながら、嘘つきで小狡い恥ずかしい男だからだ。フィンが懐く訳がない、あと弱い」
「ええ~強さでいったらマークさんはそれより下じゃないですか?」

 笑う聖騎士にフロウライトは一瞬口を噤み……コラッ!

「そうだな……マークは、治癒術師だからな。名前だけでも騎士のハンスより……よわ……弱い、な?」

 疑問形にするんじゃない!俺はか弱い初級治癒術師なんだから!

「くるっ!」
「ですよね、フィン」
「くるるっ」

 やっぱりフィンの方がフロウライトより賢いんじゃないだろうか?? マークがマラカイト・凛莉だってバレるのも時間の問題じゃないのか……? 次の極会議で何か良い方法がないか誰かに聞いた方がいいんじゃないかな?

「くるぅ……」
「困ったねぇ、フィン」
「くぅ」


 寂しさがよぎる時もあるが、何かと気にかけてくれる存在もいる。俺はここでやっていく、あの世界の師匠もなんとかやっていって欲しいと切に思う。



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