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71 それは、なに?
しおりを挟む「マークさん!お帰り」
「良かった~心配したのよ」
「ご迷惑をおかけしまして……すみません」
現在無職中のフロウライトと街へ出るといつも顔を合わせている街の人達から一斉に声をかけられた。
「ま、ケンカするほど仲が良いっていうし」
「そうだねえ、たまにケンカもいいかもしれないよね」
「団長さん口下手だしなあ、しゃあないか」
「心配かけて、も、申し訳ない、な」
フロウライトも真面目に返しているが俺達のケンカの件はこれで一件落着ということにできそうだった。
「本当にいつも通り街を回るのか?」
「回る予定ですけど……ダメですか?」
きちんと眼鏡をかけて、マークとして歩いている。どこからどう見ても立派なお人好し初級治癒術師だ。
「でも、その……君は、服の下が……」
「その件は黙ってて」
ごくごく小さな声でフロウライトと話し、誰にも聞かれていないか辺りの気配を探る……まあ問題なさそだ。ちょっと家を出る前にアクシデントがあったからなあ。
けだるい体でなんとか上着に袖を通し、タンスを覗いて思わず小さく声を上げてしまった。
「どうした? なにかあったのか?」
「あったというか、なかったというか……」
「何がなかったんだ……ん……え?あ、う」
小物を入れているタンスの中を覗いてフロウライトは絶句して後ろにひっくり返りそうになっている。ああ、これはある意味彼からの報復なのだろうか?
「な、な、な、な……な、んだ、これは」
「多分、パンツかな?」
フロウライトが持ち上げたひも状のナニカ。どこに足を通すのか分からないが、多分、パンツ。
「こ、これは……?」
「多分、それもパンツ」
なにかフリルがいっぱいついてヒラヒラ、ヒラヒラな何か。
「これは流石に違うだろう?」
「多分それもパンツ」
一応パンツの形をしているけれど、めちゃくちゃ小さい。凄く伸びるのかな??
「私の知っている下着と形状がまったく違うのだが……」
「半分はまともなの入れておくように言ってたんだけど、全部コレ系か……どうやって穿くんだろう?流石に何も穿かない訳に行かないし」
「穿くのか!?」
「穿くけど……」
意外とちゃんと穿けるんだよ、透けていても。サファイア君の裁縫の腕は確かだからね……だからといって全部差し替えて行かなくてもいいだろうに。仕方がなしにパンツの形状を保っている総レースのものにした、これなら穿けるぞ。
「み、みえ……見える、んだが……」
「この上にちゃんとズボンを穿くから大丈夫だよ」
「何が大丈夫なのかまったく分からない!」
意外と履き心地は悪くないし、涼しいよ?
「き、君が! 隣でそんなセクシーな下着を身につけていると知った私は一体どうすれば良いのだ?!」
「普通の顔してりゃ良いだろう」
「無理だ!」
そんなことがあったので、フロウライトはなんだか挙動がおかしいのだ。
「やはりすぐ帰ろう! 気が気ではない」
「定期巡回コースくらい回りますよ、皆さんに心配かけてしまいましたし」
「で、ではもっと私の側に」
「歩きにくいです」
「いやでも!」
この程度どうってことないのに、なんで赤くなったり青くなったり忙しいことになっているんだ? 変な奴。
「どこかに寄って極一般的な下着を購入しよう……私の身が持たない」
「そうか? 似合ってない?」
だから履き心地は良いんだって。
「に! 似合いすぎているから困るんだろう! 」
「なら良いじゃないか」
「不埒な考えばかりが頭を占める!」
「ははっ……それは、夜に」
「やはりすぐ帰るべきだ!」
「帰らないって」
頬を寄せ合って内緒話をする。多分色々な人が見ているだろうけれど、大丈夫。見られたって困ることなんか一つもないんだから。
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