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社畜と入れ替わった闇暗殺者の私と同期の話
3 マジマの秘密
しおりを挟む巨大でも清潔な病院で、割とすぐに診断書とやらは出して貰えて、私はマジマに案内されてタニグチ……ナルミの働いていた会社についていった。見上げても上が見えないくらい大きな建物……圧倒されつつも、マジマに促され中に入る、気持ちが悪い。
「マジマ、さん。なんだか気分が重くて沈みます……」
「はは、確かにいつも谷口は会社の前で溜息をついてたな……」
「いつも? いつも見てたんですか?」
「え?いや、はは! た、たまたま、かな??」
マジマはまた嘘をついた。マジマの嘘は分かりやすい。目が左右に振れてから下を向く。何かやましいと感じているんだろう。何故?
マジマがタニグチナルミを毎日見るのはやましいのか?それとも何か理由があるのだろうか……情報が足りない。私はマジマをよく観察することにした。暗殺でもなんでも相手を知ることは成功に繋がるだろう。
案内されて会社の中に入るとますます気が重くなり、もう家に帰りたくなった。ナルミは朝からこんな気持ちで過ごしてたのか……少し可哀想だ。
こんな明るくてきれいな職場なのにナルミは嫌だったんだなぁ……。
「ですから、ここは穏便に……谷口が労基に駆け込んだらそっちの方が不味いのでは? 診断書も出ましたし」
「うむむ……確かに……分かった。それで間島君、谷口君のことなんだが君が少し様子をみてくれるか?」
「社命とあらば」
「頼りにしてるよ、間島君。君がいないと我が社としては売り上げが落ちるが……労基は不味い」
「分かります」
ナルミの体は鍛えている訳ではないし、小さな頃からの訓練がある訳でもない。ただ、遠くのものを聞き取る聞き耳技能のコツを知っている私なら精度は落ちても部長とマジマの会話を聞くことができた。私に聞かせたくないならもっと遠くでそして小さな声で話して欲しい。
少し離れた応接セットで待たされながらため息をつくのを堪える。
「谷口さん……記憶が混乱してるって本当ですか?」
知らない女性に話しかけられた。いや、薄ぼんやり見たことがあるような、ないような……名前は分からない。
「ええと……ごめんなさい、お名前分からなくて。すみません」
困った笑顔を向けると、驚きと哀れみと……何だろう、親愛?どうして頬を少し赤らめる??
「谷口さん……って意外とかっこいいんですね」
「??」
分からない……いや、この女性はナルミにあまり良い印象を持っていなかった。でも礼儀正しく応対したから、見直した?ナルミのことを。
ナルミは周囲にあまり気を使わないタイプだった?表面だけでも取り繕えば色々楽になるのに。結構下手くそな人間だったんだな。
「ありがとう、お名前を教えて貰っても良いですか?私は……タニグチナルミみたいなんですけど、今はリンって呼んで……」
「谷口っ!!」
「あ、マジマさん?」
「行くぞ、話はついた!」
「え?あ、はい。お話ししてくれてありがとうございます、失礼します」
「え?間島さんが大声出すなんて……え?え?」
私はマジマに手を引かれ、強引に連れ出され、女性は混乱していた……そして分かった。
マジマは今、あの女性に嫉妬した。つまりマジマはタニグチナルミに特別な感情を抱いているんだと気がついてしまった。
マジマはナルミのことが好きなんだ!
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