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55 それは私のせいではないだろうか
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「少しいっておきたい事がある」
こうして付き合って行く以上、俺はフロウライトにいっておかねばならない。俺がマラカイト・凛莉でもマークでもないこと、そして多分元に戻らないこと。こうして密に付き合い出す前に入れ替わったがフロウライトはかなり前からマークを知っていたみたいだし。
ここまで来て嫌われることはないとは思うが、隠し事は少ないに越したことはない。
「な、なんだ? 良くなかったか?」
「そうじゃないんだけど……なあ、私の中身が俺だったらどうする?」
「……難しいな」
そうか難しいか。やっぱり無理な感じか。
「もっとわかりやすく言って欲しい」
そっちだった。ならもったいぶらずにそのまま聞いた方が良いな……。
「お前の知っているマラカイト・凛莉の中身が途中から別人に入れ替わっていたらどう思う?」
「私の知っているマラカイト・凛莉がか? うーん、別人になったら気が付くと思うが別人なのか? いつから?」
「お前と初めて寝た日の少し前から」
「それは気が付かないな……あの時以前はマラカイト・凛莉とは話したことも目を合わせた事もないから」
え、そんくらい没交渉だったのか。ちょっとびっくりしてフロウライトの顔を見ると過去の記憶を探っているようで思案顔だった。
「マラカイト・凛莉と言えばとりあえず極会議には顔を出すが、一言も発せず気配もほとんど消しているかどうかも分からない、空気より透明な存在だった。多分途中で帰っていただろうけれど誰も気が付かなかった」
師匠、ある意味凄すぎだ。あの面子の中でどうやって気づかれず気配消してたんだ?
「そういえばあのあたりから以前よりマラカイト・凛莉が見えるようになったな……」
「……そうか」
そして口を噤んで、眉毛の間に皺を寄せた。何か思い悩んでいるのか、唸り声を上げそうな勢いを感じる。
「いや、それでな」
実は中の人が入れ替わったんだ、とフロウライトに説明する前に奴はとんでもないことを言い出した。
「……もしかしたら、それは私のせいかもしれない」
「え? どういうことだ?」
なんでそこにお前のせいが出てくるのか分からないけれど、とりあえず続きを促した。
「私は神の教えと武を極めることに精一杯生きてきた。それが実を結び、聖騎士・極としてかなりの強さを手に入れた。そこまでは良かったのだが、ある日部下に言われたのだ。もう少し人を愛してみたらどうだろうと」
「愛」
「うむ。人を愛すことは神より与えられた祝福の一つだと思う。そこで誰かを好きになりたいと思った……誰かを好きになり、デートを重ねて受け入れ愛し合う……と、その時に思ったのだ。私を受け入れてくれる大きさの人間はいるのかと」
「あー……」
なんか凄くデカイ下半身に思わず視線を落としてしまう。なんでこんななの? と思う程でかい。華奢なお嬢さんじゃ絶対裂けて死ぬね、殺人事件だ。
「その時ふと思ってしまったのだ。闇暗殺者・極のマラカイト・凛莉レベルなら受け入れて貰えそうだと」
「何故そうなった」
「私の見知った中で一番大丈夫そうだったから」
「……なるほど?」
わからん、どゆこと?多分少し思っていることが顔に出ていたんだと思う。俺はフロウライトの前では結構感情が顔に出ているようだ。
「つまり、神は私の願いを聞き届けてしまったのではないか? 私とマラカイト・凛莉が愛し合えるよう、別の精神と入れ替えてしまった……以前のマラカイト・凛莉であれば絶対に愛し合う事はできないから」
「……そう、なのか?」
「可能性はとても高いと思っている……」
すまない、と小さく呟くフロウライトに謝るな、と伝えてから俺は少し考えこんだ。
こうして付き合って行く以上、俺はフロウライトにいっておかねばならない。俺がマラカイト・凛莉でもマークでもないこと、そして多分元に戻らないこと。こうして密に付き合い出す前に入れ替わったがフロウライトはかなり前からマークを知っていたみたいだし。
ここまで来て嫌われることはないとは思うが、隠し事は少ないに越したことはない。
「な、なんだ? 良くなかったか?」
「そうじゃないんだけど……なあ、私の中身が俺だったらどうする?」
「……難しいな」
そうか難しいか。やっぱり無理な感じか。
「もっとわかりやすく言って欲しい」
そっちだった。ならもったいぶらずにそのまま聞いた方が良いな……。
「お前の知っているマラカイト・凛莉の中身が途中から別人に入れ替わっていたらどう思う?」
「私の知っているマラカイト・凛莉がか? うーん、別人になったら気が付くと思うが別人なのか? いつから?」
「お前と初めて寝た日の少し前から」
「それは気が付かないな……あの時以前はマラカイト・凛莉とは話したことも目を合わせた事もないから」
え、そんくらい没交渉だったのか。ちょっとびっくりしてフロウライトの顔を見ると過去の記憶を探っているようで思案顔だった。
「マラカイト・凛莉と言えばとりあえず極会議には顔を出すが、一言も発せず気配もほとんど消しているかどうかも分からない、空気より透明な存在だった。多分途中で帰っていただろうけれど誰も気が付かなかった」
師匠、ある意味凄すぎだ。あの面子の中でどうやって気づかれず気配消してたんだ?
「そういえばあのあたりから以前よりマラカイト・凛莉が見えるようになったな……」
「……そうか」
そして口を噤んで、眉毛の間に皺を寄せた。何か思い悩んでいるのか、唸り声を上げそうな勢いを感じる。
「いや、それでな」
実は中の人が入れ替わったんだ、とフロウライトに説明する前に奴はとんでもないことを言い出した。
「……もしかしたら、それは私のせいかもしれない」
「え? どういうことだ?」
なんでそこにお前のせいが出てくるのか分からないけれど、とりあえず続きを促した。
「私は神の教えと武を極めることに精一杯生きてきた。それが実を結び、聖騎士・極としてかなりの強さを手に入れた。そこまでは良かったのだが、ある日部下に言われたのだ。もう少し人を愛してみたらどうだろうと」
「愛」
「うむ。人を愛すことは神より与えられた祝福の一つだと思う。そこで誰かを好きになりたいと思った……誰かを好きになり、デートを重ねて受け入れ愛し合う……と、その時に思ったのだ。私を受け入れてくれる大きさの人間はいるのかと」
「あー……」
なんか凄くデカイ下半身に思わず視線を落としてしまう。なんでこんななの? と思う程でかい。華奢なお嬢さんじゃ絶対裂けて死ぬね、殺人事件だ。
「その時ふと思ってしまったのだ。闇暗殺者・極のマラカイト・凛莉レベルなら受け入れて貰えそうだと」
「何故そうなった」
「私の見知った中で一番大丈夫そうだったから」
「……なるほど?」
わからん、どゆこと?多分少し思っていることが顔に出ていたんだと思う。俺はフロウライトの前では結構感情が顔に出ているようだ。
「つまり、神は私の願いを聞き届けてしまったのではないか? 私とマラカイト・凛莉が愛し合えるよう、別の精神と入れ替えてしまった……以前のマラカイト・凛莉であれば絶対に愛し合う事はできないから」
「……そう、なのか?」
「可能性はとても高いと思っている……」
すまない、と小さく呟くフロウライトに謝るな、と伝えてから俺は少し考えこんだ。
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