【完結】闇暗殺者と入れ替わった社畜の俺を聖騎士様が離さない

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
45 / 117

45 俺、夜会に出ちゃう

しおりを挟む

「あなたがフロウライト様の婚約者?!こんな背だけ高くて冴えない男が?信じられない」
「まったくだわ! しかも平民のくせに!」
「あり得ないわ!」

 俺は六人の令嬢に囲まれてモテモテである。そう、フロウライトに頼まれて夜会に参加中なのである、しかも王城の。もちろん針の筵なんだけれど、そんなものは大したことない。所詮貴族の囁きだ。命を失うことは危険などないのに何を恐れれば良いのか分からない。

「聞いてるの?!」

 聞いてはいるけれど、さっきからフロウライトと別れろとしか言われてないから飽きただけだ。正直マークとして来てなきゃ即家に帰っている所だ。平民が頑張って用意しました感のあるちょっときれいめな服をなるべく体形が目立たないように着て、ひょこひょことついて来た。
 もちろん吊し上げられるのは承知の上だけれど、周りの周知と……もしかして誰か賛成してくれるかも?という淡い期待をフロウライトが持ったからだ。
 そんな酔狂な人物いないとは思うけれど、試してみたいなら試したら良いと思ったんだ。案の定いなかった。

「あの……そういうことは、私一人では決められません……」
「あははっ! アイアンメイデン家のご当主様はわたくし達に賛成してくださっているわ!もう決まっているのも同然よ」

 ああ、そういえばそうだったな。そういう後ろ盾があるから強いんだっけ。まあどうでも良い。派手な化粧と派手なドレスで高笑いする年若い令嬢……よく見るとあんまり可愛くないかも。あっちの子はお鼻が大きい。こっちの子はお口が大きい。こっちの子は……あらあらニキビがいっぱいだ。化粧品が合ってない……?いや、誰かに恨まれて薄い毒を混ぜられてるなぁ、怖い怖い!

「はあ……」

 初級治癒術師のマークと別れろとアイアンメイデン家当主、まあフロウライトの父親に言われた時、あいつは即断った。

「嫌です、絶対に」
「お前をアイアンメイデン家から追放するぞ!」
「お好きに」

 フロウライトがそう宣言し、当主の執務室から出て行って会話は終了したが、歩み寄りはなかった。

 フロウライトは実力で聖騎士団団長になった男だし、完全に聖騎士の中で一番強い。そんなフロウライトを追放なんて出来るのかな?まあ知らんけど、興味ない。
 俺はそれを天井裏からチョコレートを食べながら聞いていた。寛いでてごめん。アイアンメイデン家の天井裏は広くて歩きやす過ぎるぞっと。

「話を聞きなさいっ!」

 一番手前の令嬢が扇を振りかぶって殴りつけて来た。あ、そうだそうだ、令嬢に囲まれてたんだ。えーと、マークなら殴られなきゃな、ハイハイどーぞ

〈ひいーーっ!なんてことを!〉

 差し迫った声はあちらこちらの木陰や暗闇から聞こえてくる。お前ら何してんだ、盗賊からやり直しさせるぞ。
 息を呑んだのは王家に仕える王家の影と呼ばれている闇のエキスパート達だ。王族を影から守護したり、情報を収集したり、ある時は暗殺を請け負うこともある……全部凛莉師匠の弟子だけど。

〈師匠が、殴られる!〉
〈だめだ!今は表の姿で来ていらっしゃる!〉
〈そうだ、殴られるしかない!〉
〈あのきれいな顔を殴るなんて!オイニス・テラコッサめ、あとでテラコッサ家にゲシゲシ虫を500匹投げ込んでやる!〉

 わぁ、テラコッサ家の人可哀想。ぺひん、とおかしな音がして叩かれた……らしい。避けないように我慢するのが大変だったし、殴られたふりをして、更に赤い化粧を一瞬で塗るのも面倒くさいがやるしかない。

「あっ!」
「話を聞きなさいっ平民の癖にっ」

 本当に面倒くさいなぁ。あと王家の影に就職した奴ら、修行し直せ。いっぱい課題を送り付けてやる!
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

処理中です...