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 フロウライトと一緒に家から出ると街の人にわあっと囲まれた。

「良かったねぇ、マークさん! おめでとう!」
「え、あ、はい??」
「団長様、マークさんをよろしくお願いします!」
「うむ」
「マークさん、おめでとう! はい、お花よ」
「え、あ、ありがとうございます?」

 ああ、街の人の純粋な祝いの言葉が痛い。打算から始まって、成り行きと引っ込みが付かなくなった間違いと若干の無理矢理まで含んでこうなってしまったのに。それでもマークの表情はにこにこ嬉しそう以外は作ることができない。だってマークだもん。

「あ、あの……遅れますから行ってください。団長様」
「え?いや……ふむ、そう、だな。すまないが失礼しますよ」

 少し残念そうな顔で見送る。マークならこうするだろう? 自分より他人を優先するお人好しの青年。多分凛莉師匠の本当の性格。

「マークさん! もうちょっとわがままになっても良いんじゃないの?!」
「でも、お忙しい方ですから」
「でも、でも~~」
「重荷にはなりたくないので……」
「うーっ! 歯がゆいっ」

 俺はマークらしく振る舞う。街の人達には違和感なく受け入れられているな……良かった。

「なあなあ!昨日の晩もだったんだろ?!」
「昨日さ、出てこなかったのって一日中しっぽりしてたのか?!」
「やっぱり団長様のアレってなのか!?」

 まあ、当然聞かれるよな。このゲーム、結婚システムもあって更に同性婚も普通にある。だから全体的に同性のパートナーは不思議でも珍しくもない。その辺は突っ込まれないが、相手が聖騎士団長だからなぁ……聞きたくなるよな。

「その、えーと……言えませんよぉ」
「惚気か?!」
「いえ、その……」
「で? 実際どうなの? やっぱり凄いのか?!」
「えー……あはは……」
「やっぱり凄いんだな?!」

 一日中、質問だらけだし、あちこちで花を貰って全身花だらけになった。

「、っ、マーク!」
「団長様」

 今日も巡回があったのか、街でフロウライトに会った。一瞬だけ口の形が「り」になったけれど、音は出さずにちゃんとマークの名前を呼べた。えらいぞ。

「……凄いな」
「……はい」

 俺は恥ずかしそうに俯けば良い。一緒に巡回警備にあたっていた聖騎士がニヤニヤと笑っているからこれで正解なんだ。

「今日は君の家に行けない」
「……はい」

 ちょっと、往来で何言ってんの?!信じられん。皆が聞いてるのに個人情報を堂々と発表するんじゃないっ!

「屋敷に帰るようにと言われて」
「……はい……」

 黙れ、そのでかい口を閉じろ。誰も理由は聞いてない。ていうか実家から呼び出しを食らわないようにちゃんとしろ!馬鹿野郎!

「すまない」
「……いえ……」

 踏みたい、このごっつい鋼の足鎧に包まれた大馬鹿の足の甲を思いっきり踏んで黙らせたい。
 闇暗殺者の技術を持ってすれば鎧の上からでも衝撃波で中の骨を砕くことができるし、効率的に激痛を与えることができる。

「……すまない」
「だ、大丈夫です」

 もう良い!やめろ!なんでお前の部下の前でこんな恥ずかしい会話をしなきゃいけないんだ!いいか?! 俺が俯いているのは寂しさや悲しみ、身分の差とかそういうのを悔しく思ってるからじゃない。
 あったまに来てお前の足の甲を踏み砕くのを必死で堪えているからだからな!ふざけんなよ!

 恥ずかしすぎるっ!!



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