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33 第三の
しおりを挟むなんとか逃げ出そうと隙を探す俺を邪魔する呪いのような言葉が浮かんでは消えてゆく。
「本物は……気持ち良いですよ」
くっ、凛莉師匠っあなたの言葉が頭をぐるぐる回りますっ! ちょっと申し訳なさそうで、でも幸せそうに微笑む俺の顔の凛莉師匠が更に逃げる邪魔をする!
「凛莉」
「うっ」
フロウライトの顔は好きだ。ついでに言えば声も良い。そいつに正しい名前の発音を仕込んだのは間違いだった。ヤバい、こいつの声は腹の奥に響くようだ。逃げなければという思考に邪魔なモヤがかかりまくる。
「凛莉……」
「やっ」
やめろ、呼ぶな!そうして呪いの言葉がやってくる。オモチャと違う、気持ち良い……一体どんな感じがするんだろう。生?ナマ……体温があってそれでいて硬くて……。自分のモノなら知っているが他の人のはよく分からない。それをぶち込まれたら気持ち良いのか?人は誰しも作り物の偽物より本物を好む傾向にあるしな?!
もし、俺がフロウライトに抱かれても問題はなさそうな気がする。マークで誰かに抱かれようものならイった瞬間に何かやらかして裏の顔がバレたら大変だ。その点、フロウライトはもう裏の顔であるマラカイト・凛莉を知っている……問題ない。
そして、間違えて暗殺術を無意識で使ってしまった場合。フロウライトなら死なないだろう……ある意味最適な相手ではないのか?!
そんなことが頭をチラチラ過ぎるものだから逃げ損ね続けている……いや、俺はちょっと期待してるのかもしれない。どれだけ本物を腹の中に入れたら気持ちいいのかと。思わず気持ちが傾きかけた瞬間、それを吹き飛ばす事実が目の前にぶら下がった。
「凛莉……」
「ひっ?!」
ずるりとズボンを下ろしてこんにちはしたフロウライトのフロウライトを見て俺は悲鳴をあげてしまった。な、何これデカいっ! アレっていうより腕じゃないか?! 嘘だろこんなの股間にぶら下げてるんじゃないっ! こんなの入る訳ないっ!
「凛莉、お前を愛させてくれ」
「無理だ! それは無理っ! 裂ける、死ぬっ!」
「お前ほど百戦錬磨なら大丈夫だ、受け入れられる」
「いや、無理だし! そんな第三の腕みたいの無理だし!! 誰がそんなでたらめいってんだ!」
俺から凛莉師匠の皮がペロンと剥がれて素の谷口ナルミが久しぶりに出て来た。それくらい衝撃的な逸物なんだもん!
「シトリンが凛莉なら大丈夫だって」
「大丈夫じゃねーよ! シトリンが俺の尻事情に詳しい訳ないだろう!!」
あいつ面白がってフロウライトに何吹き込んでんだよ! 信じられない!
「もし、無理だって言ったらこれを使えって」
「な、何……」
フロウライトは右手に小瓶を持っている……くそっ、シトリンの薬かどんなヤバいもんを渡されて……。なんだか紫色の粘度がある液体がトロリと揺れて……待て、瓶のラベルにドクロのマークが書いてあるじゃねぇか、それ毒だろ?! 毒だよな?!
俺達、闇暗殺者は大抵の毒に耐性がある。でもあまりに強い毒だと無毒化するのに時間がかかったりする。シトリンの合成毒は暗殺術とは違う系統だろうから解毒に絶対時間がかかるだろう。その毒が効いている間にあーだこーだされるとまずいんだが?!
後そんなの使ってフロウライトだって影響が出るだろう?? でもこいつの場合は無限の体力で多少毒化しても平気な顔してそうだけど。
いや待って?!駄目だ、駄目だろっ!!た、助けて! 凛莉師匠ーー!
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