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26 その反応は間違っていますよ

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「マラカイト・リンリー。私はお前にそんな風に見られる理由がないのだが」

 まだ部屋に残っていたフロウライトが真面目を絵に描いたような顔で向かって来た。見たといっても数回顔を見ただけだろうよ。フロウライトの顔が好みだと分かってから何回か見ただけなのに。まあ以前と比べれば増えた事は確かだし、ゼロが5になれば気になるな。

「気にするな」

 アメジストに掴み上げられたままだがフロウライトの質問に答える。アメジストは面倒だしスルーしよ。

「気になる」
「では見ないようにしよう」
「そうではなくて、何故かが知りたい」

 フロウライトはホントに真面目でガチガチ、融通が利かない。そんなに俺と喋りたいなら、まずアメジストを何とかして欲しいんだが?
 襟首掴まれて吊られてる野郎に普通に話しかけないで欲しい。吊られても平然としている方も変だって? いやいや、そんなことないぞ、アメジストは普通に強いからね?純粋な力勝負をしたら負けると思うし。

「アメジスト・アレイン。私はマラカイト・リンリーと話したい。手を離せ」
「離してやんなよぉアメジストぉ~傍目から見てもアンタがリンリーちゃんを虐めてるよーにしか見えんくて不快ぃ」
「……チッ」

 シトリンが楽しそうにツッコミを入れてくれてアメジストは離してくれた。何か問題があった訳じゃないけど、掴まれているという事実はあまり歓迎はできないからなぁ。
 あとフロウライトとシトリン両方を敵に回すのは避けたかったんだと思う。俺も入れて三体一じゃさしものアメジストにも勝機はない。ニヤニヤ笑ってるダイヤモンドもこの流れなら俺に味方するだろうし。
 盛大に口を曲げながらもアメジストは手を離してくれた。でもその後、首元の服が透けてるのをまじまじと凝視しないで欲しい。それはサファイア君の趣味だから……。

「マラカイト・リンリー、何故か? 私とお前は接点などない。私が関わる噂は街の治癒術師くらいなのに、何故か」

 気づいてないのか、フロウライト。仕方がない、俺から教えてやらないとこいつは一生何故かと付き纏う気がするな。

「その治癒術師が私だからだ」
「違う。マラカイト・リンリーと治癒術師マークは別人だ」
「違わない。骨格、筋肉のつき方、目鼻の配置場所。全部同じだ」
「……」

 いつもと変わらない真面目そうな顔がしっかり正面から俺の顔をみている。表情はまったくからわないけれど、澄んだ青い瞳が少し揺れているから、動揺しているらしい。
 両手が伸びて来て両頬を包まれた。むにむにとほっぺを揉まれたが好きにさせておいた。闇暗殺者・極のマラカイト・凛莉の顔をむにむにする命知らずはお前だけだぞ、フロウライト・アイアンメイデン。

「あっはっ!! リンリーちゃんがむにられてらーー! アタシもやりたーい」

 シトリンがまた大口を開けて馬鹿笑いしている。いや、やらせてやらんけど。
 フロウライトは暫くむにむにしていたが、両手をそのまま肩に這わせて来る。ちょっと、いやかなりセクハラ気味なんだけど、フロウライト的には筋肉や骨格を確かめているんだろうな。
 肩を触って腕を触って、それから脇腹まで触って来るのはちょっとセクハラがすぎる。でもいやらしい気持ちがまったくないフロウライトは真剣そのもの。

「……マラカイト・リンリー。お前のいう通りだし、確かに骨格も治癒術師と一緒なのだが、私はどうも一緒だと理解出来ない」
「これなら分かるか?」

 隠しポケットからあの眼鏡を取り出してゆっくりかける。フロウライトの瞳に映った俺の目が赤から青に変わり、冷たく剣呑な闇暗殺者の雰囲気が柔らかく優しい治癒術師の物に変化していく。

「なんと」

 フロウライトの両手はまだ俺の両肩に置かれたままだったから、マラカイト・凛莉がマークと同一人物である事は疑いようもないだろう?

「聖騎士団団長様は素敵ですね」

 にこっと笑いながらマークの顔で微笑めば完全に納得してくれた。

「うっ! あ、ああ……成程、理解、した……」
「?」

 ただ、ちょっと耳まで赤くして目を逸らしたのは何故かな……フロウライト・アイアンメイデンよ……。
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