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25 チラチラ見ただけです

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「マラカイト・リンリー、何か?」
「何もない」
「そうか」

 会議中何度か視線が合うからかフロウライトはそんな言葉を投げかけて来る。冷静に見てもフロウライトの顔は好みだな。黒っぽい凛莉師匠の隣にキラキラしてるフロウライト、ビジュアル的にも悪くない……。多分俺の顔は冷静で真面目に話を聞いているような気もするし、面倒で何も聞いていないように見えるだろうけど、頭の中ではどうしようもないことを考えていた。
 そう、意外とフロウライトカッコよくね? って。
 この会議で凛莉師匠は大抵誰とも目を合わせない。本物だった凛莉師匠がそうしていたからなんだけれど、実はそれがおっかないから目を伏せていただけなんて誰が気づくかっていうの。絶対つまらない会議だから不機嫌になっているとしか見られてなかったんだろうな。まあ俺もそれに習ってつまらない無駄な時間を過ごさせられているという態度を崩してはいないんだけれど、今日からは何度かフロウライトを見ている。それだけで十分だった。

「チッ」

 聞えよがしく、アメジストが舌打ちをしている。だからといってアメジストに視線を投げることはない。ぶっちゃけどうでもいい、視界にも入れる必要もない。
 ジロリとフロウライトはアメジストを睨み、アメジストはそっぽを向いたまま。ダイヤモンドは俺の気を引きたいのか手を振ったり投げキッスをしたり忙しい……オールスルーだが。それをみてシトリンはゲラゲラ笑ってるし、天使のホワイトパールは我関せず、天魔のオニキスも我関せずで出された紅茶を優雅に飲んでいる。残りは良く分からないけれど、知りたくなったらその時に顔でも確認することにする。極同士の繋がりなんてそれくらい希薄な物なんだ。強さ故の孤高さなのか、面倒だからそうなっているのか……面倒だからかな?凛莉師匠みたいに他の人が怖いから近づかない訳ではなさそう。
 今日の会議で俺がすることはたまにフロウライトの顔を見る、それだけ。そうすれば噂をしたい奴が勝手に噂を広めていくだろうし、アメジストは勝手に嫉妬してフロウライトを逆恨みすればいい。

 ただの定期報告になった会議はすぐに解散になり、それぞれに席を立つ。凛莉師匠は基本的にすぐ立ち、すぐ消える派だったけれど、少しだけ立つのを遅らせる。アメジストが詰め寄ろうと待っているし、隙あらばダイヤモンドが割り込もうとしているのが分かっている。更にその修羅場を見学しようとシトリンが期待を込めた眼差しでこっちを見ている。
 俺はこの会場内にまだフロウライトがいるから、少しだけ時間をずらす。あいつがいれば何かと便利だろう。聖騎士様の盾はさぞ分厚かろう! ふーははは!

「リンリーッ!」
「……」

 アメジストに胸倉をつかまれて釣りあげられた。ちょっと苦しいが取り乱すほどじゃない。実は避けようと思えば避けれたけど、それも面倒だなぁって思ったんだ。だってもうサファイア君いないし……彼は医務室へ運ばれて行ってパンツ片手に命の灯火を守ったようだし。

「お前、そんなにフロウライトのことが気に入ってんのかッ」
「答える義務はない」

 イエスともノーとも言わない、これが良いのだ。さあ、誤解しろ誤解しろ! 矛先をあっちに向けたまえ!

「よく考えろ、フロウライトだぞ? 頭ガチガチの堅物なんかとじゃ楽しくねぇだろ。俺にしとけって」
「……」

 本当に答える義務がない。いや、好みじゃないアメジストの顔を見るより好みのフロウライトの顔を見る方が良いんだからそっちの方が楽しいじゃないか。
 多分だがアメジストは自分が必ず好かれるイケメンだと信じて疑ってないんだろうな。蓼食う虫も好き好き、人の好みは千差万別。自分が好かれてないことがあるなんて思ったことがないのかな?こいつは。
 そんな自意識過剰な所も好きじゃないんだよなぁ。
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