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13 疑惑の箱
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「よし」
いつものルーティンで朝ご飯を食べ、街へ行く。
「あ、マークだ!」
「こんにちは、冒険者の皆さん」
「治癒ありがとうー! このクッキー美味しかったから上げるね」
「ありがとうございます、お昼にいただきますね」
「うんー」
こういう気持ちのいいプレイヤーもたくさんいる。というかこういう人の方が多くて、そんなに悪くない日常なのだが。
「マークってさ、意外と良いよね」
「分かるー! こないだマーク総受けの絵師みっけて滾ったわー」
お姉さん二人組が怖い話をしてるけど、なんのことか分からない顔で首を傾げておく。こういう感が鋭くて眼鏡の効果が薄くなる人が一定数いるから、困ったものだ。
もし、俺が元に戻れてもそんな絵師は探さないと心に誓った、絶対にだ。
「あ、マークさん!」
「こんにちは、皆さん」
「おーい、おめぇら治癒術師様が来てくださったぞー」
「お、マジすか親方ぁ!」
今日は巡回ルートを少し変えて職人街に足を伸ばした。この辺は生活用品を作る鍛冶屋なんかが工房を構える場所。
まあ、鍛冶屋のダイが本当にダイヤモンド・シグクレイが確かめに来たんだけど。
「すいません、結構大きめにやっちまいまして」
「鍛冶屋に火傷はつきものですもんね」
大抵は火傷の薬を塗り込んで終わるけれど、大きい火傷は治癒術をかけた方が早くきれいに治る。だから、たまに回っているけれど……いた、ダイだ。
「マーク、俺にも一応掛けてくれる?」
「構いませんよ」
「助かる~」
雰囲気はまったく違う。鍛冶屋のダイは真面目で真っ当な鍛冶屋だ。人を茶化して喜ぶようなふざけた奴ではないけれど、二人は同一人物ではないか? と疑問に持ち、よくよく注意して見れば気づくことができた。顔の大きさ、骨格、手のひらの大きさ、ハンマーを握った時にできたであろうタコの位置や大きさが一致する……間違いない、こいつは技工士極のダイヤモンド・シグクレイだ。
「ありがとう、なんだか肩凝りが取れたかも」
「火傷じゃなくて肩凝りですか? 何か肩の凝るようなことがあったので?」
「うん、ちょっとねー」
昨日の会議のことかもしれないけれど、それ以上匂わせては来なかった。ダイヤモンドはマークがマラカイト・凛莉だって気がついていないんだろう。ならそのままにしておくべきだ。
「そういえばだいぶ前に作った宝箱使ってる? 結構良い出来だったっしょ」
「宝箱……」
俺の頭の中に凛莉師匠が発注して作ってもらった長さが30センチくらいの宝箱の存在がポンと浮かんできた。
うん、作ってもらった、俺じゃなくて凛莉師匠がここの鍛治工房に依頼して鍵がかかる箱を作って貰った。
「ええ、使わせて貰ってます。ありがとうございました」
「壊れてなきゃ良いんだ。またなんかあったら言ってね、いつもマークの治癒に助けられてっから」
「いえいえ」
世間話を繰り返し、おかしくない所で切り上げ、俺は今日のルーティンを変更して足早に家路についた。なんてことだ、あの宝箱のことを思い出しもしなかったなんて。いや、凛莉師匠もアレは深層意識の深いところに沈めて、普段は絶対表面に浮かんでこないように徹底管理していたんだ。
アレはまずい。人に絶対知られてはならない。サファイア君のような部下として仕えている奴らは勿論のこと、プレイヤーも街の人も全員に絶対に秘密にしなければならないものが入っている。
まさか、まさか……そんな。嘘であって欲しい。でも確認しなくては。そのために一目散にマークの家を目指したのだった。
いつものルーティンで朝ご飯を食べ、街へ行く。
「あ、マークだ!」
「こんにちは、冒険者の皆さん」
「治癒ありがとうー! このクッキー美味しかったから上げるね」
「ありがとうございます、お昼にいただきますね」
「うんー」
こういう気持ちのいいプレイヤーもたくさんいる。というかこういう人の方が多くて、そんなに悪くない日常なのだが。
「マークってさ、意外と良いよね」
「分かるー! こないだマーク総受けの絵師みっけて滾ったわー」
お姉さん二人組が怖い話をしてるけど、なんのことか分からない顔で首を傾げておく。こういう感が鋭くて眼鏡の効果が薄くなる人が一定数いるから、困ったものだ。
もし、俺が元に戻れてもそんな絵師は探さないと心に誓った、絶対にだ。
「あ、マークさん!」
「こんにちは、皆さん」
「おーい、おめぇら治癒術師様が来てくださったぞー」
「お、マジすか親方ぁ!」
今日は巡回ルートを少し変えて職人街に足を伸ばした。この辺は生活用品を作る鍛冶屋なんかが工房を構える場所。
まあ、鍛冶屋のダイが本当にダイヤモンド・シグクレイが確かめに来たんだけど。
「すいません、結構大きめにやっちまいまして」
「鍛冶屋に火傷はつきものですもんね」
大抵は火傷の薬を塗り込んで終わるけれど、大きい火傷は治癒術をかけた方が早くきれいに治る。だから、たまに回っているけれど……いた、ダイだ。
「マーク、俺にも一応掛けてくれる?」
「構いませんよ」
「助かる~」
雰囲気はまったく違う。鍛冶屋のダイは真面目で真っ当な鍛冶屋だ。人を茶化して喜ぶようなふざけた奴ではないけれど、二人は同一人物ではないか? と疑問に持ち、よくよく注意して見れば気づくことができた。顔の大きさ、骨格、手のひらの大きさ、ハンマーを握った時にできたであろうタコの位置や大きさが一致する……間違いない、こいつは技工士極のダイヤモンド・シグクレイだ。
「ありがとう、なんだか肩凝りが取れたかも」
「火傷じゃなくて肩凝りですか? 何か肩の凝るようなことがあったので?」
「うん、ちょっとねー」
昨日の会議のことかもしれないけれど、それ以上匂わせては来なかった。ダイヤモンドはマークがマラカイト・凛莉だって気がついていないんだろう。ならそのままにしておくべきだ。
「そういえばだいぶ前に作った宝箱使ってる? 結構良い出来だったっしょ」
「宝箱……」
俺の頭の中に凛莉師匠が発注して作ってもらった長さが30センチくらいの宝箱の存在がポンと浮かんできた。
うん、作ってもらった、俺じゃなくて凛莉師匠がここの鍛治工房に依頼して鍵がかかる箱を作って貰った。
「ええ、使わせて貰ってます。ありがとうございました」
「壊れてなきゃ良いんだ。またなんかあったら言ってね、いつもマークの治癒に助けられてっから」
「いえいえ」
世間話を繰り返し、おかしくない所で切り上げ、俺は今日のルーティンを変更して足早に家路についた。なんてことだ、あの宝箱のことを思い出しもしなかったなんて。いや、凛莉師匠もアレは深層意識の深いところに沈めて、普段は絶対表面に浮かんでこないように徹底管理していたんだ。
アレはまずい。人に絶対知られてはならない。サファイア君のような部下として仕えている奴らは勿論のこと、プレイヤーも街の人も全員に絶対に秘密にしなければならないものが入っている。
まさか、まさか……そんな。嘘であって欲しい。でも確認しなくては。そのために一目散にマークの家を目指したのだった。
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