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9 吐き気がする程の実力者揃い

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「30秒の遅刻だ、マラカイト・リンリー」

 聖騎士・極。名前をフロウライト・アイアンメイデンという。淡く光を放つような金の髪に、真っ青に抜ける昼の空の瞳。神より下賜されたという白銀の燐光を放つ分厚い聖騎士鎧を身に纏ったどこからどう見ても聖騎士の男。歳は凛莉師匠の一つ上の27歳だったか。?動画で見た。頭はその馬鹿みたいな防御力と同じくらいかちこちに硬くて闇ギルドとは相容れない。
 ただ、実力がある者は素直に認める所もあり、この極会議に名を連ねる者を見下したりはしなかった。

「……」

 名前を呼ばれても答えてやる義理はない。というか極力口を開かないことにした。ここに集っているのは吐き気がするほどの実力者揃い。マラカイト・凛莉が万全ではない姿を見せて良い事なんて何一つない。

「良いじゃん、それくらいー。リンリーちゃんは今日も美人だね、ねえ、俺と寝ない?」
「……」

 俺の隣に音も気配もなくやってきたのは竜騎士・極、アメジスト・アレイン。

「ほっぺ平気? 殴られたっしょ、ちょっと前にさぁ」

 流れるように、ヒョイっと顎を掬い持たれて、アメジストの方を向かされる。こいつ街での出来事を見てたのか、一体どこでと思ったら……こいつ門番だ。門番のアミ君で、毎日挨拶している。
 くそっあっちからはこっちの偽装を見破られたのにこっちから気づけないなんて……悔し過ぎ!

 でも俺の内心はまったく顔に出ない。そういう風に訓練されているから、この程度では気配すら崩れることはない。多分このままキスされて舌を突っ込まれて口の中をベロベロ舐めまわされても平気な顔をしてられるだろう。
 そういう風に訓練されているんだから。

「やめてやんなよ、リンリーちゃん嫌がってるじゃん」
「うっさいな、鍛冶屋は黙っててよ。これは俺とリンリーちゃんの秘め事なんだから」
「秘めてねーし、てか一方通行じゃん。リンリーちゃん、お前のことガン無視してんじゃん」
「あっーそれ言っちゃう? 言っちゃうの?! マジムカつくー! ちょっと表出てよ」
「お前が表に出ればいいだろ? ま、扉締めて鍵かけっけどな」
「鍛冶屋ぁー!」
「アメジスト・アレイン! ダイヤモンド・シグクレイ! やめて席につけ!」
「ちぇーフーちゃんは頭もカッチコチだもんなー」

 竜騎士・極のアメジスト・アレインは名残惜しそうに俺のほっぺたを撫でて唇に軽くキスして行った。

ひ、ひえええええーーーー!? な、なんてことおーー! こんな人がいっぱいいる前でちゅーされたんですけど?!

 後ろで警護よろしく立っているサファイア君がドス黒い殺気を放っているけれど、アメジストはまったく意に介さず上機嫌で自分の席に戻って行った。

「殺す」

 そんな事を呟いてもサファイア君は実行しないし出来ない。サファイア君の実力ではアメジストに勝てない所か無惨に捕まって、俺にアメジストから手紙が着くくらいだろう。「お前んとこのガキンチョが悪さしたんだけど? どう責任取ってくれんの?」って。それくらい二人の差は大きいし、「極」と認められた者はそれほど強いんだ。



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