【完結】今度こそもふり倒す人生になれなかった平民の男の話〜俺の幸せどこ行った？

1 自慢できるほど完璧な腹黒公爵の失脚

　名前と国は、思い出したくもないので省略させて貰う。俺、ジュードには前世の記憶がある。

　俺の前世のおじさんは38歳の時に失脚した。娘を王子に嫁がせようと暗躍。様々な汚い手を使い……全部バレる。
　しかも王子は運命の出会いなどとほざき聖女を連れてくるもんだから、俺の血をよく引いた娘は、やらかしまくっており断罪。煽りを食らって我が家は没落。

　爵位も領地も取り上げられて、小さな新領地に封じられた。

　そこで俺はもふもふと出会ったのだ！

　こんな薄汚いおじさんを純心な目で見る犬。素っ気ないのに優しい猫。餌に釣られて来たのに歌まで歌ってくれる鳥。うさぎ、りす……俺は癒されまくった。それまで溜まった膿が全部出てしまった。

　しかも領地もほぼ獣人しか住んでいない。ふわふわでもふもふの気のいい奴らばかり。

「ご主人様、おはようございます！」

「アネットさん、やめてくださいよ」

　俺が赴任初日にかましたクソ発言をずーっとネタに揶揄われる。なんて嫌な人間なんだろうって皆んな思ったよな！来るなり

「お前ら動物のご主人様が来てやったぞ！ありがたく思え！」

　だもんなー最低だよ！もふもふと暮らして行くうちに何でもできるようになったし、小さいながら領地だ。獣人達は蔑まされているようで、元中央に君臨した腹黒手腕で平和ももぎ取り、このままもふもふに囲まれて死んで行こうと思った。

　そしたらさ、何人いたか知らない妾の子だよ。もうそいつもいい大人だったんだけどね？

「金持ってんだろ！出せ！出せよ！」

「ある訳ないだろう？こんな辺境の領地に」

　本当はあった。腹黒は常に隠し財産を複数持つ。でもこれはこれからの獣人ともふもふが何かあったときに使うモノだ。俺の自由にしていい金じゃないし。
　妾達は俺の失脚した途端、家財を奪って子供も連れて逃げたじゃないか？あの時のお金はどうしたの？一生遊んで暮らせるだけあったよね？？

「吐け！これ以上痛い目に遭いたくなかったらな！」

「ううっ！」

「ごしゅじんたまぁ……！」

　俺の体の下に狼と獅子の獣人の子がいる。俺の家に文字を習いに来ていたのだ。運悪く巻き込まれしまった。

「早く吐け！」

「ないものはない！！」

　子供達を庇い、殴る蹴る。思い出したくもない拷問の末、俺は死んだ。38年の腹黒の清算ならば納得できる結果だったと思う。俺は受け入れて死んだ。


「もふりたいですか？」

「お願いします！」


　そして俺は女神様の敬虔な信者になった。

　女神様の名前は畏れ多いから、もふ神様と呼んでいる。もふ神様は「毛皮を持つ全ての生き物を守護する者」だそうで、

「爬虫類はカバーしておりません」

「もふもふしませんからね……」

「もふ襟巻きを持つドラゴンは私の範疇ですね」

「神がいた！」

　そうして俺はもふもふを知らなかった38年間を取り戻す為に、もう一度この地に帰ってきたのだ！

　うわーい！今度は0歳からもふれますよー！やったー！