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番外編
29 樽とダンジョンと俺
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「カッレリオ様ぁ~」
「ご機嫌だね、リドリー。おはよう、また何かやってお祖父様と殿下に叱られたんだって?」
学園が休みの土日、カレリオ様はバンドール家に戻って、家の仕事に精を出している。月曜日から金曜日は執事のサミュエルが取り仕切り、土日に決裁などをカレリオ様とアルフォンスが終わらせていた。休みの日まで働いて……真面目かよ!って思ったけれど、カレリオ様は真面目な子だった。あと、それに付き合っているアルフォンスも真面目で真面目でしょうがない。
「二人で出かければいいのに」
そうアルフォンスに言った事があるけれど
「カレンが外の空気を吸いたいと言ったら散歩に出てますよ?まあ……一緒にいれたらどこでも良いんですけど。ダグラス様に褒められたいって頑張るカレンはとても……可愛い」
ただ、惚気られただけだった。あの野郎!
「それがですね~」
と、ダスティン様の愚痴を滔々と語っていたらアルフォンスに咳払いされた。へーへーすいません、邪魔者は消えますよーっと。
「あ、そだ。カレリオ様。樽貸してください」
「樽?良いけど、何かに使うんですか?」
「はい!樽を調教しようかと!」
「樽を……?調教??」
ダグラス様似の顔をちょいと横に倒して、カレリオ様は考え込んでいる。お、これは分かってない顔だなぁそしてその横でデレッとした顔のアルフォンス。きっと「ああ、悩むカレンは可愛い!はぁはぁ食べちゃいたい」って思ってる。
「カレリオ様、リドリーの言う樽はカナン様の事かと思います」
「え?父上……確かに樽のような体つきをしていらっしゃいますが……樽……我が父が……樽。たる……」
え、そこにショック受けてるの!?使用人みんな言ってるじゃん。きっとアルフォンスが聞かせたくない事をブロックしてるんだな、この過保護め!!
「樽をちょっと人型に戻してきます!上手に出来たらボーナスください!」
「ボーナス!?よろしくお願いしますね!リドリー!」
「はい!お任せください!」
ボーナスの約束を取り付けた俺はルンルンとスキップでカレリオ様の執務室を出た。
「ねね!アル!どうだった?今お祖父様っぽくなかった??」
「ええ、そっくりでしたよ、カレン。リドリーにボーナス請求されるなんて大旦那様みたいでしたよ」
「ほんと?ふふ、お祖父様に少し近づけたかなあ~嬉しいなあ~!」
……なんか俺が思ったのとちょっと違ったけれど、まあ問題ないな!カレリオ様の大旦那様大好き!も、だいぶ偏ってるけれど、アルフォンスもそれでいいみたいだし。
そんで肝心の樽はどこだっけ?
「離れに隔離されてるんだっけ~?」
まあ樽……旦那様も可哀想と言えば可哀想なんだけどね?大旦那様がしゃっきりしてからは現当主というのは名ばかりで、家の事を取り仕切っているのはカレリオ様だし、権力は勿論大旦那様が一番だし、使用人には冷たくされるし。
「あの人は身から出た錆びなんだけどね~」
スタスタと離れに向かうと叫び声が聞こえて来た。おーやってるやってる。
「もっと食事を持ってこい!こんなもんじゃ腹が膨れん!」
「十分に膨れていらっしゃるから、これ以上は必要ございません」
「メイドの癖に生意気な!お前はクビだ!!」
「カナン様に采配する権利はございません、悪しからず」
「当主は私だーーー!!!」
ガシャーン、食器でも割った音だろうか。窓でも割ったんだろうか。衛兵に挨拶をして離れの屋敷に入って行くとため息をついたメイドと会った。ちょこっと聞いてみよう。
「樽っていつもああなの?」
「いつも、ああよ。等々食器は全部割れない木製になったわ。子供かって!」
ご苦労様……俺は労いの言葉をかける。
「大旦那様とカレリオ様はあんなに話の分かる人達なのに、樽はなんでああなのかしら!お二人のお願いで世話はしてるけど、イライラするわ」
「そだよなあ~あ、俺さ、今日からあの樽を調教すっから。人型に戻したらボーナス出るんだ!」
メイドは目をキラキラさせる。よっぽど鬱憤が溜まってたのかな?
「もうギッタンギッタンにやっちゃって!!!」
「おっけ~任せろ!」
さくっと樽を捕獲していきますか!
「ご機嫌だね、リドリー。おはよう、また何かやってお祖父様と殿下に叱られたんだって?」
学園が休みの土日、カレリオ様はバンドール家に戻って、家の仕事に精を出している。月曜日から金曜日は執事のサミュエルが取り仕切り、土日に決裁などをカレリオ様とアルフォンスが終わらせていた。休みの日まで働いて……真面目かよ!って思ったけれど、カレリオ様は真面目な子だった。あと、それに付き合っているアルフォンスも真面目で真面目でしょうがない。
「二人で出かければいいのに」
そうアルフォンスに言った事があるけれど
「カレンが外の空気を吸いたいと言ったら散歩に出てますよ?まあ……一緒にいれたらどこでも良いんですけど。ダグラス様に褒められたいって頑張るカレンはとても……可愛い」
ただ、惚気られただけだった。あの野郎!
「それがですね~」
と、ダスティン様の愚痴を滔々と語っていたらアルフォンスに咳払いされた。へーへーすいません、邪魔者は消えますよーっと。
「あ、そだ。カレリオ様。樽貸してください」
「樽?良いけど、何かに使うんですか?」
「はい!樽を調教しようかと!」
「樽を……?調教??」
ダグラス様似の顔をちょいと横に倒して、カレリオ様は考え込んでいる。お、これは分かってない顔だなぁそしてその横でデレッとした顔のアルフォンス。きっと「ああ、悩むカレンは可愛い!はぁはぁ食べちゃいたい」って思ってる。
「カレリオ様、リドリーの言う樽はカナン様の事かと思います」
「え?父上……確かに樽のような体つきをしていらっしゃいますが……樽……我が父が……樽。たる……」
え、そこにショック受けてるの!?使用人みんな言ってるじゃん。きっとアルフォンスが聞かせたくない事をブロックしてるんだな、この過保護め!!
「樽をちょっと人型に戻してきます!上手に出来たらボーナスください!」
「ボーナス!?よろしくお願いしますね!リドリー!」
「はい!お任せください!」
ボーナスの約束を取り付けた俺はルンルンとスキップでカレリオ様の執務室を出た。
「ねね!アル!どうだった?今お祖父様っぽくなかった??」
「ええ、そっくりでしたよ、カレン。リドリーにボーナス請求されるなんて大旦那様みたいでしたよ」
「ほんと?ふふ、お祖父様に少し近づけたかなあ~嬉しいなあ~!」
……なんか俺が思ったのとちょっと違ったけれど、まあ問題ないな!カレリオ様の大旦那様大好き!も、だいぶ偏ってるけれど、アルフォンスもそれでいいみたいだし。
そんで肝心の樽はどこだっけ?
「離れに隔離されてるんだっけ~?」
まあ樽……旦那様も可哀想と言えば可哀想なんだけどね?大旦那様がしゃっきりしてからは現当主というのは名ばかりで、家の事を取り仕切っているのはカレリオ様だし、権力は勿論大旦那様が一番だし、使用人には冷たくされるし。
「あの人は身から出た錆びなんだけどね~」
スタスタと離れに向かうと叫び声が聞こえて来た。おーやってるやってる。
「もっと食事を持ってこい!こんなもんじゃ腹が膨れん!」
「十分に膨れていらっしゃるから、これ以上は必要ございません」
「メイドの癖に生意気な!お前はクビだ!!」
「カナン様に采配する権利はございません、悪しからず」
「当主は私だーーー!!!」
ガシャーン、食器でも割った音だろうか。窓でも割ったんだろうか。衛兵に挨拶をして離れの屋敷に入って行くとため息をついたメイドと会った。ちょこっと聞いてみよう。
「樽っていつもああなの?」
「いつも、ああよ。等々食器は全部割れない木製になったわ。子供かって!」
ご苦労様……俺は労いの言葉をかける。
「大旦那様とカレリオ様はあんなに話の分かる人達なのに、樽はなんでああなのかしら!お二人のお願いで世話はしてるけど、イライラするわ」
「そだよなあ~あ、俺さ、今日からあの樽を調教すっから。人型に戻したらボーナス出るんだ!」
メイドは目をキラキラさせる。よっぽど鬱憤が溜まってたのかな?
「もうギッタンギッタンにやっちゃって!!!」
「おっけ~任せろ!」
さくっと樽を捕獲していきますか!
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