上 下
120 / 122
番外編

29 樽とダンジョンと俺

しおりを挟む
「カッレリオ様ぁ~」

「ご機嫌だね、リドリー。おはよう、また何かやってお祖父様と殿下に叱られたんだって?」

 学園が休みの土日、カレリオ様はバンドール家に戻って、家の仕事に精を出している。月曜日から金曜日は執事のサミュエルが取り仕切り、土日に決裁などをカレリオ様とアルフォンスが終わらせていた。休みの日まで働いて……真面目かよ!って思ったけれど、カレリオ様は真面目な子だった。あと、それに付き合っているアルフォンスも真面目で真面目でしょうがない。

「二人で出かければいいのに」

 そうアルフォンスに言った事があるけれど

「カレンが外の空気を吸いたいと言ったら散歩に出てますよ?まあ……一緒にいれたらどこでも良いんですけど。ダグラス様に褒められたいって頑張るカレンはとても……可愛い」

 ただ、惚気られただけだった。あの野郎!

「それがですね~」

 と、ダスティン様の愚痴を滔々と語っていたらアルフォンスに咳払いされた。へーへーすいません、邪魔者は消えますよーっと。

「あ、そだ。カレリオ様。樽貸してください」

「樽?良いけど、何かに使うんですか?」

「はい!樽を調教しようかと!」

「樽を……?調教??」

 ダグラス様似の顔をちょいと横に倒して、カレリオ様は考え込んでいる。お、これは分かってない顔だなぁそしてその横でデレッとした顔のアルフォンス。きっと「ああ、悩むカレンは可愛い!はぁはぁ食べちゃいたい」って思ってる。

「カレリオ様、リドリーの言う樽はカナン様の事かと思います」

「え?父上……確かに樽のような体つきをしていらっしゃいますが……樽……我が父が……樽。たる……」

 え、そこにショック受けてるの!?使用人みんな言ってるじゃん。きっとアルフォンスが聞かせたくない事をブロックしてるんだな、この過保護め!!

「樽をちょっと人型に戻してきます!上手に出来たらボーナスください!」

「ボーナス!?よろしくお願いしますね!リドリー!」

「はい!お任せください!」

 ボーナスの約束を取り付けた俺はルンルンとスキップでカレリオ様の執務室を出た。

「ねね!アル!どうだった?今お祖父様っぽくなかった??」

「ええ、そっくりでしたよ、カレン。リドリーにボーナス請求されるなんて大旦那様みたいでしたよ」

「ほんと?ふふ、お祖父様に少し近づけたかなあ~嬉しいなあ~!」

 ……なんか俺が思ったのとちょっと違ったけれど、まあ問題ないな!カレリオ様の大旦那様大好き!も、だいぶ偏ってるけれど、アルフォンスもそれでいいみたいだし。
 そんで肝心の樽はどこだっけ?

「離れに隔離されてるんだっけ~?」

 まあ樽……旦那様も可哀想と言えば可哀想なんだけどね?大旦那様がしゃっきりしてからは現当主というのは名ばかりで、家の事を取り仕切っているのはカレリオ様だし、権力は勿論大旦那様が一番だし、使用人には冷たくされるし。

「あの人は身から出た錆びなんだけどね~」


 スタスタと離れに向かうと叫び声が聞こえて来た。おーやってるやってる。

「もっと食事を持ってこい!こんなもんじゃ腹が膨れん!」

「十分に膨れていらっしゃるから、これ以上は必要ございません」

「メイドの癖に生意気な!お前はクビだ!!」

「カナン様に采配する権利はございません、悪しからず」

「当主は私だーーー!!!」

 ガシャーン、食器でも割った音だろうか。窓でも割ったんだろうか。衛兵に挨拶をして離れの屋敷に入って行くとため息をついたメイドと会った。ちょこっと聞いてみよう。

「樽っていつもああなの?」

「いつも、ああよ。等々食器は全部割れない木製になったわ。子供かって!」

 ご苦労様……俺は労いの言葉をかける。

「大旦那様とカレリオ様はあんなに話の分かる人達なのに、樽はなんでああなのかしら!お二人のお願いで世話はしてるけど、イライラするわ」

「そだよなあ~あ、俺さ、今日からあの樽を調教すっから。人型に戻したらボーナス出るんだ!」

 メイドは目をキラキラさせる。よっぽど鬱憤が溜まってたのかな?

「もうギッタンギッタンにやっちゃって!!!」

「おっけ~任せろ!」

 さくっと樽を捕獲していきますか!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕のお兄様がヤンデレなんて聞いてない

ふわりんしず。
BL
『僕…攻略対象者の弟だ』 気付いた時には犯されていました。 あなたはこの世界を攻略 ▷する  しない hotランキング 8/17→63位!!!から48位獲得!! 8/18→41位!!→33位から28位! 8/19→26位 人気ランキング 8/17→157位!!!から141位獲得しました! 8/18→127位!!!から117位獲得

【完結】【R18BL】異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました

ちゃっぷす
BL
Ωである高戸圭吾はある日ストーカーだったβに殺されてしまう。目覚めたそこはαとβしか存在しない異世界だった。Ωの甘い香りに戸惑う無自覚αに圭吾は襲われる。そこへ駆けつけた貴族の兄弟、βエドガー、αスルトに拾われた圭吾は…。 「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」の本編です。 アカウント移行のため再投稿しました。 ベースそのままに加筆修正入っています。 ※イチャラブ、3P、レイプ、♂×♀など、歪んだ性癖爆発してる作品です※ ※倫理観など一切なし※ ※アホエロ※ ※ひたすら頭悪い※ ※色気のないセックス描写※ ※とんでも展開※ ※それでもOKという許容範囲ガバガバの方はどうぞおいでくださいませ※ 【圭吾シリーズ】 「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」(本編)←イマココ 「極上オメガ、前世の恋人2人に今世も溺愛されています」(転生編) 「極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます」(イベントストーリー編)

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

【R18BL】転生したらドワーフでした【後日談更新中】

明和里苳
BL
◆ 後日談の後日談更新中。まとまったストーリーが書き上がり次第、順次追加更新していきます。 ◆ あらすじ ◆ ある日、前世の記憶を取り戻したコンラートは、今世もモテそうにない貧弱ドワーフであることに絶望する。しかし嘆いていても仕方ない。せっかくだから、なけなしの知識チートで無双でもするかな。と思っていた時代が、俺にもありました。なぜクズ野郎にばかりモテるのか。解せぬ。 ◆ 全編クズ×合法ショタ ◆ コンラート(18)ドワーフ細工師、貧弱合法ショタ ◆ ディルク(24)人間族戦斧使い、ガチムチ残念イケメン ◆ フロル(?)小人族斥候、美ショタ ◆ アールト(約350)エルフ族レンジャー、腹黒麗人 ◆ アイヴァン(17)人間族王太子、ボンクライケメン ◆ バルドゥル(26)人間族神官、一見善人 (ここではネタバレは記載しておりません) ◆ 主人公総受け。攻めは全員クズです。モラルはありません。生温かい目でお楽しみください。 ◆ R18シーンを含む話には※印を付けてあります。結構な割合で付いてますのでご注意ください。 ◆ 他サイトにも掲載しています。 ◆ 表紙はトリュフ先生(X: @trufflechocolat)に描いていただきました。トリュフ先生ありがとうございます!

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

王子の俺が前世に目覚めたら、義兄が外堀をやべえ詰めてきていると気づいたが逃げられない

兎騎かなで
BL
塔野 匡(ただし)はバイトと部活に明け暮れる大学生。だがある日目覚めると、知らない豪奢な部屋で寝ていて、自分は第四王子ユールになっていた。 これはいったいどういうことだ。戻れることなら戻りたいが、それよりなにより義兄ガレルの行動が完璧にユールをロックオンしていることに気づいた匡。 これは、どうにかしないと尻を掘られる! けれど外堀が固められすぎてて逃げられないぞ、どうする!? というようなお話です。 剣と魔法のファンタジー世界ですが、世界観詰めてないので、ふんわりニュアンスでお読みください。 えっちは後半。最初は無理矢理要素ありますが、のちにラブラブになります。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ
BL
夜勤バイト明けに倒れ込んだベッドの上で、スマホ片手に過労死した俺こと煤ヶ谷鍮太郎は、気がつけばきらびやかな七人の騎士サマたちが居並ぶ広間で立ちすくんでいた。 どうやらここは、死ぬ直前にコラボ報酬目当てでダウンロードしたBL恋愛ソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈(ランプ)』の世界のようだ。俺の立ち位置はどうやら主人公に対する悪役ライバル、しかも不人気ゆえ途中でフェードアウトするキャラらしい。 だが、俺は知ってしまった。最初のチュートリアルバトルにて、イケメンに守られチヤホヤされて、優しい言葉をかけてもらえる喜びを。 こんなやさしい世界を目の前にして、前世みたいに隅っこで丸まってるだけのダンゴムシとして生きてくなんてできっこない。過去の陰縁焼き捨てて、コンプラ無視のキラキラ王子を傍らに、同じく転生者の廃課金主人公とバチバチしつつ、俺は俺だけが全力でチヤホヤされる世界を目指す! ※頭の悪いギャグ・ソシャゲあるあると・メタネタ多めです。 ※逆ハー要素もありますがカップリングは固定です。 ※R18は最後にあります。 ※愛され→嫌われ→愛されの要素がちょっとだけ入ります。 ※表紙の背景は祭屋暦様よりお借りしております。 https://www.pixiv.net/artworks/54224680

処理中です...