【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

番外編

24 可哀想な平民なんていない3

「お、お祖父様の課題は難しい……」

「こちらの事例など、どうでしょう？カレリオ様」

「……あ！良いね。助かるよ、アルフォンス」

　私はカレリオ・バンドールを誤解していたと言わざるを得なかった。いつも静かに本を読んでいるのは必死で王宮の王子妃教育の予習と復習をしていたからだった。しかも学校の成績もトップクラスにいる必要もあると思っていたらしく、本当に一生懸命勉強していたのだ。
　使用人への態度はやはり冷たい物だったが、大旦那様に諭されて皆を慈しむ優しさ、感謝を伝えることを始めてくれた。少しぎこちなさもあるが、

「ありがとう」

　と、美貌の銀髪に微笑まれて、悪い気がする人間はいなかった。そして大旦那様は優しいが厳しい方で、なんと旦那様とカレリオ様にバンドール家の立て直しを命じられたのだ。旦那様は……カレリオ様と違って使用人に対する高圧的な態度は改めようとはしてくださらなかったし、真面目に立て直すつもりもないのか、何の仕事もしていないように見られた。
　カレリオ様が一人で頭を悩ませ、不正や借金を片付けようと奮闘している、そんな感じであったのです。

「難しい……ごめんね、アルフォンス。ここはどう思う？」

「このままバンドール家に落とし込むことは出来なさそうですが……銀行への交渉には使えるかと」

「そう……だね」

　私とカレリオ様は頭を突き合わせ、色々な立て直しの方法を考える。驚いたことにカレリオ様は相当な頑張り屋さんで、短時間に色々な事を学び、吸収していく頭の良い方だった。

「えっと……こっち……わっ」

「カレリオ様！」

　その頑張りは弊害も産み、寝ずに勉強をしているらしく、ふらつくことが増えて来た。バランスを崩して倒れる所を慌てて支えれば

「ご、ごめん、ありがとうアルフォンス」

　至近距離で笑う顔に疲れとクマが酷い。

「今日はもうおしまいにして寝てください。根を詰めすぎて体を壊してはそれこそ大旦那様に叱られますよ」

「……お祖父様には……叱られたくない……」

「ならば今日はお休みください。目の下にクマが出来ています」

　そう指摘すると慌てて「え？ほんと？やだぁ」なんて言うのがとても可愛らしい。メイドに頼んで熱いタオルを持って来てもらい目に当てて上げる。

「とれたかな？」

「駄目ですね、休憩しないと」

　他愛ない会話を繰り返しながら、私達は少しづつ仲良くなっていった。意地悪な侯爵家の息子に虐められる可哀想な平民出の護衛なんて最初からいなかったのだ。

「ねえ、アルフォンス。アルって呼んでも良い？」

「ええ、勿論ですよ。カレリオ様」

　満足そうに微笑むカレリオ様。

「じゃあ、私の事はカレ……ううん、もう少し後からにしよっかなぁ」

　少しいたずら気味に笑う主人を大切にしようと心に誓った。