104 / 122
番外編
13 50年位昔の話をしようと思う
しおりを挟む
「ケンウッド様……ケニー様……ケニー!」
「ジェスター」
若くなってもワシの朝は早い。辺境の朝の空気は清々しく、夜中に国境を犯してくる隣国の間者や、魔獣なんかも潜んでおったりしてなかなか楽しい。
「見てくだされ、今日は3名と2匹!大漁ですぞ」
1匹は美味そうな大猪。これは今日の夕飯が楽しみじゃ。
「ケンウッド様が朝からこんなに働かれては私達国境警備団が鈍ってしまいますよ!」
「ははは、ご謙遜を!」
「しかし相変わらず鮮やかなお手並で」
電撃の魔法で一気に無力化し、その上で麻痺させてしまう。こうすれば間者どもは生きているから「お話」も聞き出し易いだろう。
食えぬ魔獣はまあ、武器なんかの材料になるじゃろうから、凍らせて足止めし、脳天をズドン、食える獣も同じくズドンだ。
「久しく魔法など使っておりませなんだが、何とかなるのものですな。まあ、それより若くなったのが大きいでしょうな」
「そうですね……とても、お可愛らしく……」
「はは……元ジジイを捕まえて可愛らしいと仰るのはジェスターくらいですな……いや、セブスト殿下もか」
「間違いありません。皆、元気でしょうね」
ジェスターはワシの手をそっと握りながら、空を眺める。王都に残ったあやつらの事を思い出しておるのじゃろうな。
辺境の暮らしも楽しいが、王都もまた刺激の多い暮らしであった。
「懐かしいですな……」
ワシも50年と少し前、あの鬼畜どもと出会った日を思い出していた。
「ゼフ公爵家、ダスティン」
「バンドール侯爵家、ダグラス」
「グレイス公爵家、ケンウッド」
「ヒルデン伯爵家、レイモンド」
「で、合っているな?」
「御意にて殿下」
私達はまだ5歳の時に全員初顔合わせをした。そこは第一王子ミカル様のお誕生日会。そこで同い年位の子供達は顔を合わせた。
貴族の子供は王族の子供の年齢に合わせて我が子を設ける。こう言う顔合わせで「お友達」になるか、学園で「ご友人」になるかして、なんとか繋がりを持ちたい狙いがあるからだ。
「君達が抜きに出て優秀だと聞いている。これからよろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします」
私達はミカル様のお友達として同世代から一目置かれる存在になった。なったのに……。
「ミカル!ミカルーーーー!」
なんと第一王子のミカル様は10歳の時に馬車の事故で亡くなってしまったのだ。
その事で我々は一気にハズレ世代となってしまった。第二王子はまだ小さい。それでも私達は何とか中枢に食い込まねばならない。そう、親からきつく言い渡されていたからだ。
「ジェスター」
若くなってもワシの朝は早い。辺境の朝の空気は清々しく、夜中に国境を犯してくる隣国の間者や、魔獣なんかも潜んでおったりしてなかなか楽しい。
「見てくだされ、今日は3名と2匹!大漁ですぞ」
1匹は美味そうな大猪。これは今日の夕飯が楽しみじゃ。
「ケンウッド様が朝からこんなに働かれては私達国境警備団が鈍ってしまいますよ!」
「ははは、ご謙遜を!」
「しかし相変わらず鮮やかなお手並で」
電撃の魔法で一気に無力化し、その上で麻痺させてしまう。こうすれば間者どもは生きているから「お話」も聞き出し易いだろう。
食えぬ魔獣はまあ、武器なんかの材料になるじゃろうから、凍らせて足止めし、脳天をズドン、食える獣も同じくズドンだ。
「久しく魔法など使っておりませなんだが、何とかなるのものですな。まあ、それより若くなったのが大きいでしょうな」
「そうですね……とても、お可愛らしく……」
「はは……元ジジイを捕まえて可愛らしいと仰るのはジェスターくらいですな……いや、セブスト殿下もか」
「間違いありません。皆、元気でしょうね」
ジェスターはワシの手をそっと握りながら、空を眺める。王都に残ったあやつらの事を思い出しておるのじゃろうな。
辺境の暮らしも楽しいが、王都もまた刺激の多い暮らしであった。
「懐かしいですな……」
ワシも50年と少し前、あの鬼畜どもと出会った日を思い出していた。
「ゼフ公爵家、ダスティン」
「バンドール侯爵家、ダグラス」
「グレイス公爵家、ケンウッド」
「ヒルデン伯爵家、レイモンド」
「で、合っているな?」
「御意にて殿下」
私達はまだ5歳の時に全員初顔合わせをした。そこは第一王子ミカル様のお誕生日会。そこで同い年位の子供達は顔を合わせた。
貴族の子供は王族の子供の年齢に合わせて我が子を設ける。こう言う顔合わせで「お友達」になるか、学園で「ご友人」になるかして、なんとか繋がりを持ちたい狙いがあるからだ。
「君達が抜きに出て優秀だと聞いている。これからよろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします」
私達はミカル様のお友達として同世代から一目置かれる存在になった。なったのに……。
「ミカル!ミカルーーーー!」
なんと第一王子のミカル様は10歳の時に馬車の事故で亡くなってしまったのだ。
その事で我々は一気にハズレ世代となってしまった。第二王子はまだ小さい。それでも私達は何とか中枢に食い込まねばならない。そう、親からきつく言い渡されていたからだ。
42
お気に入りに追加
2,679
あなたにおすすめの小説

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!


最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる