【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

鏑木 うりこ

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番外編

13 50年位昔の話をしようと思う

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「ケンウッド様……ケニー様……ケニー!」

「ジェスター」

 若くなってもワシの朝は早い。辺境の朝の空気は清々しく、夜中に国境を犯してくる隣国の間者や、魔獣なんかも潜んでおったりしてなかなか楽しい。

「見てくだされ、今日は3名と2匹!大漁ですぞ」

 1匹は美味そうな大猪。これは今日の夕飯が楽しみじゃ。

「ケンウッド様が朝からこんなに働かれては私達国境警備団が鈍ってしまいますよ!」

「ははは、ご謙遜を!」

「しかし相変わらず鮮やかなお手並で」

 電撃の魔法で一気に無力化し、その上で麻痺させてしまう。こうすれば間者どもは生きているから「お話」も聞き出し易いだろう。
 食えぬ魔獣はまあ、武器なんかの材料になるじゃろうから、凍らせて足止めし、脳天をズドン、食える獣も同じくズドンだ。

「久しく魔法など使っておりませなんだが、何とかなるのものですな。まあ、それより若くなったのが大きいでしょうな」

「そうですね……とても、お可愛らしく……」

「はは……元ジジイを捕まえて可愛らしいと仰るのはジェスターくらいですな……いや、セブスト殿下もか」

「間違いありません。皆、元気でしょうね」

 ジェスターはワシの手をそっと握りながら、空を眺める。王都に残ったあやつらの事を思い出しておるのじゃろうな。

 辺境の暮らしも楽しいが、王都もまた刺激の多い暮らしであった。

「懐かしいですな……」

 ワシも50年と少し前、あの鬼畜どもと出会った日を思い出していた。


「ゼフ公爵家、ダスティン」
「バンドール侯爵家、ダグラス」
「グレイス公爵家、ケンウッド」
「ヒルデン伯爵家、レイモンド」

「で、合っているな?」

「御意にて殿下」

 私達はまだ5歳の時に全員初顔合わせをした。そこは第一王子ミカル様のお誕生日会。そこで同い年位の子供達は顔を合わせた。
 貴族の子供は王族の子供の年齢に合わせて我が子を設ける。こう言う顔合わせで「お友達」になるか、学園で「ご友人」になるかして、なんとか繋がりを持ちたい狙いがあるからだ。

「君達が抜きに出て優秀だと聞いている。これからよろしくな!」

「こちらこそよろしくお願いします」

 私達はミカル様のお友達として同世代から一目置かれる存在になった。なったのに……。

「ミカル!ミカルーーーー!」

 なんと第一王子のミカル様は10歳の時に馬車の事故で亡くなってしまったのだ。

 その事で我々は一気にハズレ世代となってしまった。第二王子はまだ小さい。それでも私達は何とか中枢に食い込まねばならない。そう、親からきつく言い渡されていたからだ。
 
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