【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

番外編

12 私は悪役令息をやめました3

　お祖父様が若くなった。瞳の色が少し違うけれど、私とそっくりでびっくりした……そしてセブスト殿下はお祖父様にくっ付いて離れなくなった。孫の私よりくっ付いているのは、少し嫉妬してしまう。私のお祖父様なのに！！お祖父様に優しい声で名前を呼ばれて、頭を撫でられて褒められるのは私の特権だったのに、それを殿下が享受している……やっぱり嫉妬してしまう。

「カレリオ、すまんがダグラスに伝えてくれないか？殿下はご卒業できるだけの単位は揃っておるが……生徒の手本たるべき王族がこう学園に来ないのは些か……」

　ケンウッド学園長に言われ、私はお祖父様にお伝えする。お祖父様を少し私に返してください！

「た、確かに！」

　お祖父様もびっくりしていたので、失念していらしたようだ。完璧なように見えて少しズレていらっしゃるところもチャーミングではないだろうか？

「ありがとう、カレリオ」

　久しぶりにお祖父様が頭を撫でてくれた。もう小さな子供ではないけれど、お祖父様に褒められ、可愛がって貰えるのはやっぱり嬉しい。今は私とそっくりな顔立ちで背格好もよく似ているのに、やはりお祖父様はお祖父様なんだ。

「……もしかして殿下も？」

　小さな頃から王太子として厳しく躾けられて来た殿下。私もそうだったが、殿下もこういう触れ合いや優しさが欲しかったのだろうか。だからあのお祖父様の優しさを大好きになってしまったのだろうか？

「そう、なのかもしれない」

「カレン？」

　不思議そうに聞いてくるアルフォンスに考えを伝えてみる。ふむ、と一つ頷きあるかも知れませんね、と言ってくれた。

「だとしたら、私ではやはりセブスト殿下とは上手くやって行けなかったのかも知れないね」

　少し寂しいけど、そうなんだろう。私ではどうしても殿下を頼りにしてしまう、お祖父様のように全てを認めて優しく包み込んでくれるような度量はない。

「……すみません。それを嬉しいと思ってしまいました……カレンが殿下と婚約を解消したから、こんなに近くに置いてもらえる私としては」

「アル……ふふ、そうだね」

　少しだけアルフォンスに寄りかかる。ずっと殿下の事をお慕いしていたはずなのに、もう何とも思ってないなんて、私も移り気な人間だ。私の事をカレンと呼ぶアルフォンス……アルの隣はとても心地が良い。


「カレン……ちゅーまでならOKだそうです」

　あはは、そういえばお祖父様がそんな事言ってた気がする。アルはお祖父様の言いつけをしっかり守って節度ある態度を崩しはしない。きっとお祖父様が良いと言うまで私に手を出すことはないだろう。

「お祖父様公認なら……良いのでは？」

　そっと目を閉じると、柔らかく唇が触れ合うのが分かる。

「カレン……カレリオ。ずっとお側に居たい」
　
「ずっと隣にいて？アルフォンス……」

「勿論です」

　抱きしめ合う腕が熱い。殿下と一緒にいた時にこんなにドキドキした事は無かった……私はきっとそこまで殿下の事を好きじゃなかったんだね。

「嬉しい……」

　アルといると全然違う。嬉しいし、ドキドキするし……私の愛する人はこの人だったんだ、って分かってしまった。
　
　お祖父様ありがとうございます。私も幸せになれそうです。きっとアルと二人でなら、ずっと一緒に。


　私は悪役令息をやめました【終】