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番外編

3 サディーアの受難3

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「……これは」

「お祖父様、若返りの秘薬と言うものです。魔王のダンジョンから稀にドロップするもので、これでダグラス様も若返っておられます」

「……そうか、ダグラスがな」

 70とは思えぬほど老け込んでいたダスティンは秘薬を飲むなり、まるで人生を巻き戻すようにサディーア達の目の前で若返った。20歳前後の様相になったダスティンは

「眼鏡を」

 と、老人用ではない眼鏡を求める。そこには色々な悪名で呼ばれた辣腕の男がいたが、残念ながらサディーアはそれは噂でしか聞いたことがない。

「察するに、家督相続の書類か。こっちだすぐに渡そう。アーノルドついて来なさい」

「ありがとうございます、ダスティン様!」

 きっと秘密の隠し場所なんだろう、家長のみが知れば良い事だとサディーアは判断し、まずはゼフ家のお取り潰しと言う最悪の事態から免れた事に安堵した。

 そのダスティンとアーノルドが隠し部屋の中でどんな話をしたのかを知らないのは幸運なのか不幸なのか。その話をされたアーノルドは間違いなく否定しただろう。しかし相手が悪かった。何をやっても勝つことが絶対に不可能だと長年思い知らされてきた相手だ。未だに「お義父様」と呼ぶことが出来ずに名前で呼んでしまうほど、魂の底から服従している相手に

「サディーアを寄越せ」

 と言われて、否定することが出来なかった。めまいがし、呼吸が浅く早く途切れ途切れで、顔色は真っ白になり、手足は震え冷や汗をかく。それでも目の前のダスティン・ゼフの言葉を否定することをアーノルド・ゼフは出来なかったのである。

「わ、わ、わ、わかり……ま、した……。サ、サディーアを……よろしく、お、お願い致します……ダスティン……様……」

 絞り出せた声はそれだけだった。ダスティンはやはり誰も気が付いていなかった隠し金庫から書類一式を取り出す。全てのサインも完成した家督相続書、財産相続に関する全て書類でアーノルドの胸にポンと叩いた。

「しかと受け取った」

 ゾッと背筋が凍るような死神めいた美しい笑みをアーノルドは生涯忘れることはなく、暫くの間は夢で何度も繰り返し見て、叫び声と共に飛び起きる生活をしていたという。

「サディーア……サディーアすまん……わ、私はどうしても……ダスティン様には……逆らえぬ……ううう……」

 一人咽び泣くアーノルドの姿は誰も見ることがなく、ダスティンは自分の思い描いたモノを一つ残らず実行していくのであった。



「うう……なんじゃろ……この近年まれにみる薄ら寒さは……」

「ダグラス様?大丈夫ですか??ささ、こちらへ。温めて差し上げましょう!」

「いやいや、大丈夫じゃ……ぶぇっくしょーーーい!」



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