93 / 122
番外編
2 サディーアの受難2
しおりを挟む
「サディーア……ごめん、サディーア……私は……もう無理かもしれない。ああ、可愛い孫なのに……ティムは……」
「メルクリーアお祖父様?!」
メルクリーアは回復する事なく少しづつ弱って行った。何度も何度もサディーアに謝りながら
「メルク!メルク!行くな!私を、私を置いて行く事など許さない!!」
「ダスティン……私の可愛いティム……ごめんなさい……貴方の言う事を聞けない私を許して下さい……ずっと一緒にいたか、った……」
「メルクリーアーーーー!」
暖かな春の日にメルクリーアは天へ召され、ダスティンの魂の一部も一緒に持って行ってしまったようだった。
ダスティンとメルクリーアは確かに愛し合っていたのだ。
「ティム……しっかりせい……とは言えぬな……」
「ああ、ダグラスか……お前も連れ合いを持って行かれたのだったな……」
「うむ…… 酷い病だった……ジジイはジジイらしく引っ込んで余生を過ごすしかあるまい」
「そうだな……」
「ケンウッドやレイモンドのように生き甲斐を見つけるのも難しい」
「そうだな……」
メルクリーアを失ったダスティンはぼんやり過ごす事が多くなり
「はて、何じゃったかのう?」
「お祖父様?!」
一気にぐっと老けこんでしまった。
「ダスティン様、宜しければゼフ家の家督を私にお譲りいただけませんか?」
「そうじゃのう、そうしようかのう~。メルクや、腹が減ったのう、飯はまだかのう」
「お、お祖父様?!」
それまでの厳しさが何かの冗談であったかのように、ダスティンは全てに興味を失って行く。
「メルク、メルク……どこにいったかのう……おお、メルクリーア!早くこっちに来なさい」
「お祖父様!私はサディーアです!」
「おや、そうだったかのう?ではメルクはどこだ?」
「メルクリーアお祖父様は……」
「メルク、お茶を持って来ておくれ」
「ですから私はサディーアです」
「そうだったかのう?」
「父上……お祖父様は、もしや……」
「考えたくない事だが、色々お忘れになっているように感じる。不味いな、家督相続に関わる書類はどこにしまったかダスティン様しかお知りにならない……」
家の者総出で書類を捜すも誰も見つけることは出来なかった。引退した元執事も来てもらったが
「……大旦那様は私にすら教えてはくれませんでした。知っているのは大旦那様のみです……」
とても残念そうに呟く。八方ふさがりとはこのことで、どうしようもなくなったゼフ家の総意はダスティンを若返らせるしかないという事に決まった。
「覚悟は出来ておろうな?サディーア・ゼフ」
サディーアは眼鏡をしっかりとかけ直し、挑むように脅すように呟くダグラスにしっかりと返答を返す。
「勿論です!どんなに苛烈だろうと、お祖父様の扱きに我々は耐えてみせます!」
若い頃のダスティンはそれはそれは厳しい男であったと、あちこちから聞いている。
「……そうか。そこまで言うなら」
ダグラスは若返りの秘薬をサディーアに渡し、相応の金額を貰い受けた。そしてダグラスの懸念は当たってしまうのである。
「氷で出来た刃が眼鏡をかけて歩いているとよく言われた物です」
「裸に眼鏡ですか?」
「……殿下は怖い者知らずでありますなぁ」
「メルクリーアお祖父様?!」
メルクリーアは回復する事なく少しづつ弱って行った。何度も何度もサディーアに謝りながら
「メルク!メルク!行くな!私を、私を置いて行く事など許さない!!」
「ダスティン……私の可愛いティム……ごめんなさい……貴方の言う事を聞けない私を許して下さい……ずっと一緒にいたか、った……」
「メルクリーアーーーー!」
暖かな春の日にメルクリーアは天へ召され、ダスティンの魂の一部も一緒に持って行ってしまったようだった。
ダスティンとメルクリーアは確かに愛し合っていたのだ。
「ティム……しっかりせい……とは言えぬな……」
「ああ、ダグラスか……お前も連れ合いを持って行かれたのだったな……」
「うむ…… 酷い病だった……ジジイはジジイらしく引っ込んで余生を過ごすしかあるまい」
「そうだな……」
「ケンウッドやレイモンドのように生き甲斐を見つけるのも難しい」
「そうだな……」
メルクリーアを失ったダスティンはぼんやり過ごす事が多くなり
「はて、何じゃったかのう?」
「お祖父様?!」
一気にぐっと老けこんでしまった。
「ダスティン様、宜しければゼフ家の家督を私にお譲りいただけませんか?」
「そうじゃのう、そうしようかのう~。メルクや、腹が減ったのう、飯はまだかのう」
「お、お祖父様?!」
それまでの厳しさが何かの冗談であったかのように、ダスティンは全てに興味を失って行く。
「メルク、メルク……どこにいったかのう……おお、メルクリーア!早くこっちに来なさい」
「お祖父様!私はサディーアです!」
「おや、そうだったかのう?ではメルクはどこだ?」
「メルクリーアお祖父様は……」
「メルク、お茶を持って来ておくれ」
「ですから私はサディーアです」
「そうだったかのう?」
「父上……お祖父様は、もしや……」
「考えたくない事だが、色々お忘れになっているように感じる。不味いな、家督相続に関わる書類はどこにしまったかダスティン様しかお知りにならない……」
家の者総出で書類を捜すも誰も見つけることは出来なかった。引退した元執事も来てもらったが
「……大旦那様は私にすら教えてはくれませんでした。知っているのは大旦那様のみです……」
とても残念そうに呟く。八方ふさがりとはこのことで、どうしようもなくなったゼフ家の総意はダスティンを若返らせるしかないという事に決まった。
「覚悟は出来ておろうな?サディーア・ゼフ」
サディーアは眼鏡をしっかりとかけ直し、挑むように脅すように呟くダグラスにしっかりと返答を返す。
「勿論です!どんなに苛烈だろうと、お祖父様の扱きに我々は耐えてみせます!」
若い頃のダスティンはそれはそれは厳しい男であったと、あちこちから聞いている。
「……そうか。そこまで言うなら」
ダグラスは若返りの秘薬をサディーアに渡し、相応の金額を貰い受けた。そしてダグラスの懸念は当たってしまうのである。
「氷で出来た刃が眼鏡をかけて歩いているとよく言われた物です」
「裸に眼鏡ですか?」
「……殿下は怖い者知らずでありますなぁ」
23
お気に入りに追加
2,661
あなたにおすすめの小説
僕のお兄様がヤンデレなんて聞いてない
ふわりんしず。
BL
『僕…攻略対象者の弟だ』
気付いた時には犯されていました。
あなたはこの世界を攻略
▷する
しない
hotランキング
8/17→63位!!!から48位獲得!!
8/18→41位!!→33位から28位!
8/19→26位
人気ランキング
8/17→157位!!!から141位獲得しました!
8/18→127位!!!から117位獲得
【完結】【R18BL】異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました
ちゃっぷす
BL
Ωである高戸圭吾はある日ストーカーだったβに殺されてしまう。目覚めたそこはαとβしか存在しない異世界だった。Ωの甘い香りに戸惑う無自覚αに圭吾は襲われる。そこへ駆けつけた貴族の兄弟、βエドガー、αスルトに拾われた圭吾は…。
「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」の本編です。
アカウント移行のため再投稿しました。
ベースそのままに加筆修正入っています。
※イチャラブ、3P、レイプ、♂×♀など、歪んだ性癖爆発してる作品です※
※倫理観など一切なし※
※アホエロ※
※ひたすら頭悪い※
※色気のないセックス描写※
※とんでも展開※
※それでもOKという許容範囲ガバガバの方はどうぞおいでくださいませ※
【圭吾シリーズ】
「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」(本編)←イマココ
「極上オメガ、前世の恋人2人に今世も溺愛されています」(転生編)
「極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます」(イベントストーリー編)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
俺のスパダリはギャップがすごい 〜いつも爽やかスパダリが豹変すると… 〜
葉月
BL
彼女に振られた夜、何もかも平凡な『佐々木真司』は、何もかも完璧な『立花蓮』に、泥酔していたところを介抱してもらったと言う、最悪な状態で出会った。
真司は蓮に何かお礼がしたいと申し出ると、蓮は「私の手料理を一緒に食べていただけませんか?』と言われ…
平凡なサラリーマンもエリートサラリーマン。住む世界が違う二人が出会い。
二人の関係はどう変わっていくのか…
平凡サラリーマン×スパダリサラリーマンの、濃厚イチャラブストーリー♡
本編(攻め、真司)終了後、受け蓮sideがスタートします。
エロ濃厚な部分は<エロス>と、記載しています。
本編は完結作品です٩(๑´꒳ `๑٩)
他にも何点か投稿しているので、もし宜しければ覗いてやってください(❃´◡`❃)
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?
猫桜
BL
はた迷惑な先の帝のせいで性別の差なく子が残せるそんな国で成人を前に王家から来栖 淡雪(くるす あわゆき)に縁談が届く。なんと嫁ぎ先は世間から鬼元帥とも青髭公とも言われてる西蓮寺家当主。既に3人の花嫁が行方不明となっており、次は自分が犠牲?誰が犠牲になるもんか!実家から共に西蓮寺家へとやってきた侍従と侍女と力を合わせ、速攻、円満離縁で絶対に生きて帰ってやるっ!!
【R18・完結】ショウドウ⁈異世界にさらわれちゃったよー!お兄さんは静かに眠りたい。
カヨワイさつき
BL
20代最後の日、コンビニ帰りに召喚に巻き込まれてしまった、正道晴人(しょうどう はると)と
同時刻、ゲームを買いに来た岡真琴(おか まこと)は神子召喚されてしまった。
2人の神子は不吉とされ、正道は召喚場所から追い出されてしまった。
正道を中心に世界は動き出したかもしれない?!
衝動、正道の異世界物語!
☆予告なしにR 18入る場合入ります。
暴力や無理矢理なのは、なるべくボカした
表現にしてます。
大切なご意見ご感想、毎回うれしいです😆
読んでくださる皆様に感謝を込めて
ありがとうございます❤️
小さな幸せが
たくさん降り注ぎますように❤️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる