91 / 122
91 さても、暫しは甘やかな時。
しおりを挟む
「昼間っからイチャイチャしてるんですか?殿下」
「うん」
しとらんし。護衛の癖にメイドにお茶を頼んで戻って来て、しっかりソファに座ってチョコレートの箱を開けておる。なにしとるんじゃリドリー。お前はワシの後ろに立っておれ!
「いやぁ~しかし殿下は「甘えたい男」だったんですねぇ。最近多いらしいですね、長男で重い責任を持たせられちゃった男性が奥さんにべったり甘えちゃうの」
ひょいぱく、ひょいぱく、という効果音がまさにしっくりくる勢いでリドリーはチョコレートをつまんで食うておる。確かに好きなだけ買って来いと金を渡したが、一体どれだけ買って来たんだ……10……箱?は見えておるんじゃんが……?
「……悪いか」
「いーえ!とんでもございません」
一箱空にしおった。お茶も届いておらんのにようやるわ。その後すぐに届いたお茶を飲みながら
「あ、これ殿下とダグラス様からの差し入れ。皆で食べてって」
「えっこんな高級品……ありがとうございます!」
と、メイドにチョコレートの箱を渡すあたり、良くできた護衛じゃの……。
「な、なんですか!?もしかして俺が全部一人で食うとでも思ってらしたんですか!?さすがに一回じゃ無理ですよ!?」
「……数回に分ければ食うてしまうのか?」
「余裕ッス!」
バチーンとウィンクをしてくるが、食い過ぎだろうリドリー。自分の懐が痛まぬ甘味だからと言って食い過ぎては腹を壊すだろうに……。
「まあこんな「甘えたさん」な殿下じゃカレリオ様とは合わなかったんでしょうね。カレリオ様中身は結構男前な所もありますが、外見は完全に甘える方ですもんね」
「……そうじゃのう……」
ゲームのパッケージでも、ゲーム内でもセブスト殿下は俺様気味な攻略対象者だったのに、今じゃ懐いたゴールデンレトリバーみたいに膝の上に顎を乗せて口を開けておる。なんじゃ……チョコでも突っ込んでほしいのか……知らんわ。
「いや、埃ばかり口に入りますから、ちゃんと餌をやってくださいよ、大旦那様はつれないなあ」
「黙れ、リドリー!チョコレート代金分くらいしっかり働け!」
「へえい。おっと侍従殿にもチョコ配ってきますね。ごゆっくり~!」
ぱっとチョコレートの箱を掴んで消えてしまう。賄賂使いも上手くなったものじゃな……。そして膝の上からの熱い視線に耐えきれなくなり、ぽっかり空けたままの口の中にナッツの乗ったチョコレートを一つ摘まんで入れてやる。本当にいつまでも口を開けているから困ったものだ。
「美味しいです」
そりゃ何より……しかし勢い余ってワシの指まで咥えるのは非常にいただけない。
「お礼に私も食べさせてあげますよ」
「いや、結構です。ワシはチョコレートはあまり好きではないので」
「……では何故リドリーに買ってくるように言いつけたのですか?」
それは……
「たまたまですよ」
「ふぅん……てっきり私の好物だから買ってきてくれたのかと思っていましたが」
……うん、知ってる。だってキャラ設定にそう書いてあったもん。高級スイーツ店で照れながらチョコレートを食べるスチルがあったのを、古いワタシの記憶が思い出したんだ。だからリドリーについでに買ってくるように言った。ペンとインクのついでだ、ついで。
「でも、味見くらいしてみては?」
数ある宝石のように彩られたチョコレートの中から、特に甘そうなのを一つ摘んで唇に押し当てられた。
「とても甘くて、美味しいですよ」
要らんと言うておるのに……はあ、お付き合いせねばならんでしょうなあ。我が旦那様は甘やかな対応をお求めだ。そっと目を閉じればチョコレートの代わりが落ちてくる。
「どうですか?」
「いや、まあ……嫌いではないですよ」
「良かった!」
ただ、ワンコのようであれば良いのに、日々どこから学んで来るのか小賢しい悪戯をして来おる。
そう遠くないうちにワシが手玉に取られるかもしれんなぁ。
「もう一回!」
尖らせて寄ってくる口にチョコレートを突っ込んでやる。
「まだ書類が残っております故」
「終わってからなら良いですか?!」
まあ、餌をぶら下げた時のやる気は桁違いじゃからのう。
「そうですね」
「すぐ終わらせます!」
勢いよく立ち上がって、続きに取り掛かっておる。本当にやる気を出せば優秀なお方だ。
「ワシももうひと頑張りしますかのう」
余ったチョコレートはきっとリドリーが綺麗に食うてしまうじゃろ。
「夜に一緒に食べましょう?」
「はは……」
さても暫しは、甘やかな時。
悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ。
終わり
「うん」
しとらんし。護衛の癖にメイドにお茶を頼んで戻って来て、しっかりソファに座ってチョコレートの箱を開けておる。なにしとるんじゃリドリー。お前はワシの後ろに立っておれ!
「いやぁ~しかし殿下は「甘えたい男」だったんですねぇ。最近多いらしいですね、長男で重い責任を持たせられちゃった男性が奥さんにべったり甘えちゃうの」
ひょいぱく、ひょいぱく、という効果音がまさにしっくりくる勢いでリドリーはチョコレートをつまんで食うておる。確かに好きなだけ買って来いと金を渡したが、一体どれだけ買って来たんだ……10……箱?は見えておるんじゃんが……?
「……悪いか」
「いーえ!とんでもございません」
一箱空にしおった。お茶も届いておらんのにようやるわ。その後すぐに届いたお茶を飲みながら
「あ、これ殿下とダグラス様からの差し入れ。皆で食べてって」
「えっこんな高級品……ありがとうございます!」
と、メイドにチョコレートの箱を渡すあたり、良くできた護衛じゃの……。
「な、なんですか!?もしかして俺が全部一人で食うとでも思ってらしたんですか!?さすがに一回じゃ無理ですよ!?」
「……数回に分ければ食うてしまうのか?」
「余裕ッス!」
バチーンとウィンクをしてくるが、食い過ぎだろうリドリー。自分の懐が痛まぬ甘味だからと言って食い過ぎては腹を壊すだろうに……。
「まあこんな「甘えたさん」な殿下じゃカレリオ様とは合わなかったんでしょうね。カレリオ様中身は結構男前な所もありますが、外見は完全に甘える方ですもんね」
「……そうじゃのう……」
ゲームのパッケージでも、ゲーム内でもセブスト殿下は俺様気味な攻略対象者だったのに、今じゃ懐いたゴールデンレトリバーみたいに膝の上に顎を乗せて口を開けておる。なんじゃ……チョコでも突っ込んでほしいのか……知らんわ。
「いや、埃ばかり口に入りますから、ちゃんと餌をやってくださいよ、大旦那様はつれないなあ」
「黙れ、リドリー!チョコレート代金分くらいしっかり働け!」
「へえい。おっと侍従殿にもチョコ配ってきますね。ごゆっくり~!」
ぱっとチョコレートの箱を掴んで消えてしまう。賄賂使いも上手くなったものじゃな……。そして膝の上からの熱い視線に耐えきれなくなり、ぽっかり空けたままの口の中にナッツの乗ったチョコレートを一つ摘まんで入れてやる。本当にいつまでも口を開けているから困ったものだ。
「美味しいです」
そりゃ何より……しかし勢い余ってワシの指まで咥えるのは非常にいただけない。
「お礼に私も食べさせてあげますよ」
「いや、結構です。ワシはチョコレートはあまり好きではないので」
「……では何故リドリーに買ってくるように言いつけたのですか?」
それは……
「たまたまですよ」
「ふぅん……てっきり私の好物だから買ってきてくれたのかと思っていましたが」
……うん、知ってる。だってキャラ設定にそう書いてあったもん。高級スイーツ店で照れながらチョコレートを食べるスチルがあったのを、古いワタシの記憶が思い出したんだ。だからリドリーについでに買ってくるように言った。ペンとインクのついでだ、ついで。
「でも、味見くらいしてみては?」
数ある宝石のように彩られたチョコレートの中から、特に甘そうなのを一つ摘んで唇に押し当てられた。
「とても甘くて、美味しいですよ」
要らんと言うておるのに……はあ、お付き合いせねばならんでしょうなあ。我が旦那様は甘やかな対応をお求めだ。そっと目を閉じればチョコレートの代わりが落ちてくる。
「どうですか?」
「いや、まあ……嫌いではないですよ」
「良かった!」
ただ、ワンコのようであれば良いのに、日々どこから学んで来るのか小賢しい悪戯をして来おる。
そう遠くないうちにワシが手玉に取られるかもしれんなぁ。
「もう一回!」
尖らせて寄ってくる口にチョコレートを突っ込んでやる。
「まだ書類が残っております故」
「終わってからなら良いですか?!」
まあ、餌をぶら下げた時のやる気は桁違いじゃからのう。
「そうですね」
「すぐ終わらせます!」
勢いよく立ち上がって、続きに取り掛かっておる。本当にやる気を出せば優秀なお方だ。
「ワシももうひと頑張りしますかのう」
余ったチョコレートはきっとリドリーが綺麗に食うてしまうじゃろ。
「夜に一緒に食べましょう?」
「はは……」
さても暫しは、甘やかな時。
悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ。
終わり
76
お気に入りに追加
2,678
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる