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91 さても、暫しは甘やかな時。
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「昼間っからイチャイチャしてるんですか?殿下」
「うん」
しとらんし。護衛の癖にメイドにお茶を頼んで戻って来て、しっかりソファに座ってチョコレートの箱を開けておる。なにしとるんじゃリドリー。お前はワシの後ろに立っておれ!
「いやぁ~しかし殿下は「甘えたい男」だったんですねぇ。最近多いらしいですね、長男で重い責任を持たせられちゃった男性が奥さんにべったり甘えちゃうの」
ひょいぱく、ひょいぱく、という効果音がまさにしっくりくる勢いでリドリーはチョコレートをつまんで食うておる。確かに好きなだけ買って来いと金を渡したが、一体どれだけ買って来たんだ……10……箱?は見えておるんじゃんが……?
「……悪いか」
「いーえ!とんでもございません」
一箱空にしおった。お茶も届いておらんのにようやるわ。その後すぐに届いたお茶を飲みながら
「あ、これ殿下とダグラス様からの差し入れ。皆で食べてって」
「えっこんな高級品……ありがとうございます!」
と、メイドにチョコレートの箱を渡すあたり、良くできた護衛じゃの……。
「な、なんですか!?もしかして俺が全部一人で食うとでも思ってらしたんですか!?さすがに一回じゃ無理ですよ!?」
「……数回に分ければ食うてしまうのか?」
「余裕ッス!」
バチーンとウィンクをしてくるが、食い過ぎだろうリドリー。自分の懐が痛まぬ甘味だからと言って食い過ぎては腹を壊すだろうに……。
「まあこんな「甘えたさん」な殿下じゃカレリオ様とは合わなかったんでしょうね。カレリオ様中身は結構男前な所もありますが、外見は完全に甘える方ですもんね」
「……そうじゃのう……」
ゲームのパッケージでも、ゲーム内でもセブスト殿下は俺様気味な攻略対象者だったのに、今じゃ懐いたゴールデンレトリバーみたいに膝の上に顎を乗せて口を開けておる。なんじゃ……チョコでも突っ込んでほしいのか……知らんわ。
「いや、埃ばかり口に入りますから、ちゃんと餌をやってくださいよ、大旦那様はつれないなあ」
「黙れ、リドリー!チョコレート代金分くらいしっかり働け!」
「へえい。おっと侍従殿にもチョコ配ってきますね。ごゆっくり~!」
ぱっとチョコレートの箱を掴んで消えてしまう。賄賂使いも上手くなったものじゃな……。そして膝の上からの熱い視線に耐えきれなくなり、ぽっかり空けたままの口の中にナッツの乗ったチョコレートを一つ摘まんで入れてやる。本当にいつまでも口を開けているから困ったものだ。
「美味しいです」
そりゃ何より……しかし勢い余ってワシの指まで咥えるのは非常にいただけない。
「お礼に私も食べさせてあげますよ」
「いや、結構です。ワシはチョコレートはあまり好きではないので」
「……では何故リドリーに買ってくるように言いつけたのですか?」
それは……
「たまたまですよ」
「ふぅん……てっきり私の好物だから買ってきてくれたのかと思っていましたが」
……うん、知ってる。だってキャラ設定にそう書いてあったもん。高級スイーツ店で照れながらチョコレートを食べるスチルがあったのを、古いワタシの記憶が思い出したんだ。だからリドリーについでに買ってくるように言った。ペンとインクのついでだ、ついで。
「でも、味見くらいしてみては?」
数ある宝石のように彩られたチョコレートの中から、特に甘そうなのを一つ摘んで唇に押し当てられた。
「とても甘くて、美味しいですよ」
要らんと言うておるのに……はあ、お付き合いせねばならんでしょうなあ。我が旦那様は甘やかな対応をお求めだ。そっと目を閉じればチョコレートの代わりが落ちてくる。
「どうですか?」
「いや、まあ……嫌いではないですよ」
「良かった!」
ただ、ワンコのようであれば良いのに、日々どこから学んで来るのか小賢しい悪戯をして来おる。
そう遠くないうちにワシが手玉に取られるかもしれんなぁ。
「もう一回!」
尖らせて寄ってくる口にチョコレートを突っ込んでやる。
「まだ書類が残っております故」
「終わってからなら良いですか?!」
まあ、餌をぶら下げた時のやる気は桁違いじゃからのう。
「そうですね」
「すぐ終わらせます!」
勢いよく立ち上がって、続きに取り掛かっておる。本当にやる気を出せば優秀なお方だ。
「ワシももうひと頑張りしますかのう」
余ったチョコレートはきっとリドリーが綺麗に食うてしまうじゃろ。
「夜に一緒に食べましょう?」
「はは……」
さても暫しは、甘やかな時。
悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ。
終わり
「うん」
しとらんし。護衛の癖にメイドにお茶を頼んで戻って来て、しっかりソファに座ってチョコレートの箱を開けておる。なにしとるんじゃリドリー。お前はワシの後ろに立っておれ!
「いやぁ~しかし殿下は「甘えたい男」だったんですねぇ。最近多いらしいですね、長男で重い責任を持たせられちゃった男性が奥さんにべったり甘えちゃうの」
ひょいぱく、ひょいぱく、という効果音がまさにしっくりくる勢いでリドリーはチョコレートをつまんで食うておる。確かに好きなだけ買って来いと金を渡したが、一体どれだけ買って来たんだ……10……箱?は見えておるんじゃんが……?
「……悪いか」
「いーえ!とんでもございません」
一箱空にしおった。お茶も届いておらんのにようやるわ。その後すぐに届いたお茶を飲みながら
「あ、これ殿下とダグラス様からの差し入れ。皆で食べてって」
「えっこんな高級品……ありがとうございます!」
と、メイドにチョコレートの箱を渡すあたり、良くできた護衛じゃの……。
「な、なんですか!?もしかして俺が全部一人で食うとでも思ってらしたんですか!?さすがに一回じゃ無理ですよ!?」
「……数回に分ければ食うてしまうのか?」
「余裕ッス!」
バチーンとウィンクをしてくるが、食い過ぎだろうリドリー。自分の懐が痛まぬ甘味だからと言って食い過ぎては腹を壊すだろうに……。
「まあこんな「甘えたさん」な殿下じゃカレリオ様とは合わなかったんでしょうね。カレリオ様中身は結構男前な所もありますが、外見は完全に甘える方ですもんね」
「……そうじゃのう……」
ゲームのパッケージでも、ゲーム内でもセブスト殿下は俺様気味な攻略対象者だったのに、今じゃ懐いたゴールデンレトリバーみたいに膝の上に顎を乗せて口を開けておる。なんじゃ……チョコでも突っ込んでほしいのか……知らんわ。
「いや、埃ばかり口に入りますから、ちゃんと餌をやってくださいよ、大旦那様はつれないなあ」
「黙れ、リドリー!チョコレート代金分くらいしっかり働け!」
「へえい。おっと侍従殿にもチョコ配ってきますね。ごゆっくり~!」
ぱっとチョコレートの箱を掴んで消えてしまう。賄賂使いも上手くなったものじゃな……。そして膝の上からの熱い視線に耐えきれなくなり、ぽっかり空けたままの口の中にナッツの乗ったチョコレートを一つ摘まんで入れてやる。本当にいつまでも口を開けているから困ったものだ。
「美味しいです」
そりゃ何より……しかし勢い余ってワシの指まで咥えるのは非常にいただけない。
「お礼に私も食べさせてあげますよ」
「いや、結構です。ワシはチョコレートはあまり好きではないので」
「……では何故リドリーに買ってくるように言いつけたのですか?」
それは……
「たまたまですよ」
「ふぅん……てっきり私の好物だから買ってきてくれたのかと思っていましたが」
……うん、知ってる。だってキャラ設定にそう書いてあったもん。高級スイーツ店で照れながらチョコレートを食べるスチルがあったのを、古いワタシの記憶が思い出したんだ。だからリドリーについでに買ってくるように言った。ペンとインクのついでだ、ついで。
「でも、味見くらいしてみては?」
数ある宝石のように彩られたチョコレートの中から、特に甘そうなのを一つ摘んで唇に押し当てられた。
「とても甘くて、美味しいですよ」
要らんと言うておるのに……はあ、お付き合いせねばならんでしょうなあ。我が旦那様は甘やかな対応をお求めだ。そっと目を閉じればチョコレートの代わりが落ちてくる。
「どうですか?」
「いや、まあ……嫌いではないですよ」
「良かった!」
ただ、ワンコのようであれば良いのに、日々どこから学んで来るのか小賢しい悪戯をして来おる。
そう遠くないうちにワシが手玉に取られるかもしれんなぁ。
「もう一回!」
尖らせて寄ってくる口にチョコレートを突っ込んでやる。
「まだ書類が残っております故」
「終わってからなら良いですか?!」
まあ、餌をぶら下げた時のやる気は桁違いじゃからのう。
「そうですね」
「すぐ終わらせます!」
勢いよく立ち上がって、続きに取り掛かっておる。本当にやる気を出せば優秀なお方だ。
「ワシももうひと頑張りしますかのう」
余ったチョコレートはきっとリドリーが綺麗に食うてしまうじゃろ。
「夜に一緒に食べましょう?」
「はは……」
さても暫しは、甘やかな時。
悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ。
終わり
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