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90 ワシら、普通じゃよ?

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 その国に化け物がいるという。

 何やらその化け物は4体ほどいて、齢はとうに100を超え未だ頑強であるらしい。化け物がいる限りその国は難攻不落ゆえ、手を出してはならぬと……。

「たるんどるーー!町の衛士だからと言ってさぼるとはこのワシがゆるさぬ!!」

「ヒイイイイ!なんで俺達まで扱かれるんだああああ!」

「決まっておる!午前の訓練で騎士共が全員へばって役に立たんからじゃ!」

「ヒイイイイイ!だ、誰だ!鬼を市中に放ったのはああああああ!」

「鬼ではありませんよ!楽しい特訓の時間です!さあ、皆さん。剣を持って!」

「鬼がーー!鬼が2体もいるーーーーー!!!」



「は?我が国にこの税率を通せ?ふむ、貴国の言い分はよくわかった。良きに計らっておこう」

(あ、怒ってる……あの国死んだな……)(こないだダグラス様が書いた偽書類の3枚目を使うんだな。可哀想)
(あの使者、国に帰れないだろうな……帰っても殺されるよ、あれは……)



「辺境とは楽しい場所ですなあ。中央でこのような大規模魔法を使おうとすると皆に叱られましてな?」

「い、いやしかし!この規模で「雷帝召喚」など!辺り一面黒焦げになってしまうではありませんか!?」

「仕方なかろう~?我が国に攻め入ろうと準備しておる軍を見つけてしまったのじゃからぁ……ホレ、雲より雷が落ちるぞ。皆耳を塞げー」

「うわああああああ!」



「書類!書類!書類!どうして現役時代より書類が積み重なっておるんじゃ!」

「分かりません、分かりません!ダグラス様!どうして私がこんな国賓依頼リストまで手掛けなきゃならいんですか!これは父上かクインの仕事でしょう!?」

「ワシにも分かりません!侍従殿、何故ですかの!?」

「こっちに回した方が早くて正確だからだそうです」

「イヤーーーー!」

 ワシと殿下は何故か仕事に励んでおる。

「大体ダスティンのサインが入った書類が多すぎる!しかもなんだ、王のサインなしで勝手に何かしておるぞ!?おかしい!おかしい!」

 それでもカリカリと書類を書く手は止まらない。止まったらそれだけ遅くなるじゃろうが!

「大旦那様!このリドリー、最高級インクと最高級羽ペンのお使いから戻りましたー!」

「おお、早く寄越せ。はやり安物では書き味が悪いし、掠れるわ!効率が悪い!」

「そう言うものですかね?」

「そういうもんじゃ」

 やはり発色とペンの滑りが違う。これならまだまだスピードがあがるぞい。

「あと、おやつの高級チョコレートもいっぱい買ってきましたよ~早く食べたいなー!」

「ふむ。適度な休憩も効率には必要じゃ。休憩にしよう、お茶を頼むぞ」

「頼んできまっす!」
 
 ぴっとリドリーは立ち上がり、メイドに伝えに行った。打てば響くようなリドリーの素早さはやはり使い勝手が良い。

「つ、疲れました~~~!」

「はは、お疲れ様です」

 仕事用の机から離れ、ソファに腰を下ろすと隣に殿下が飛んできてぴったり詰めて座る。

「書類仕事は苦手です……外回りの方が気が楽です」

「殿下はそうでしょうなあ……それにしてもまだまだ改善点は出てくるものですなあ」

 ワシらが1回目の現役の頃、色々なものを改善して労働環境を整えたはずなのにこの2回目の現役(?)でもまだ見直す事が多すぎて仕事が一向に減らぬ!ワシらが呑気な老人をやっていた頃、若いもんは何をしとったんじゃ!許せん、仕事回そ。

「どうして!どうして有能なはずのダグラス様が上にいるのに、仕事が増えてるんだ!?」「おかしい!おかしいです!ウギャアアアア!」「あの人の書類処理能力に私達がついて行けるはずないんですよ!」「わざと書きにくいペンを支給してたのにぃいいいい!」



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