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70 ワシ、邪魔したい
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「んまあ、良かったじゃないですか。仲良くなれたでしょ?」
「ぐぬぬ……」
あれから殿下の束縛(?)がちょっと緩くなった。思い出したくもない5日間の記憶の中でワシはまあ……そのなんじゃ可愛らしく「おねだり」などしたらしく、殿下がものすごくご機嫌なのだ。ああ、忘れたいっ!
「大体ですねー大旦那様。あんまりにもつれなさすぎなんですよー流石にちょっと可哀想じゃないですか。殿下はあんなに好き好き言ってるのに、ちーっとも返してあげないでしょう?」
ワシの後ろに立つリドリーはちょっと不機嫌そうな声をしている。顔を見なくても分かるぞ、ワシ責められておる。
「仕方がないじゃろ……。ワシにとって殿下はカレリオの婚約者だった方だ。孫みたいなもんじゃよ?そんな方に好きです、愛していますと言われても「はいはい分かりました」としか言えんじゃろう」
目の前のテーブルの上にあるお茶を少し。視線は修練場でトレヴァーと打ち合う殿下を見ている。
「はぁ。その辺りは殿下に同情しますね。ま、早めに諦めてイチャイチャした方が良いですよ。殿下はしつこいし、大旦那様の事を絶対手放さないと思います。あの人の秘薬を手に入れる時のしつこさと言ったら私でも引きましたからね」
「……人は変わるもんじゃよ、リドリー。ワシはもう殿下の邪魔はしたくないんじゃ」
「変わる……かなあ……?」
変わるさ、お小さい頃の殿下はそれはそれはカレリオと仲良くしておった。しかしカズハと言うカレリオより魅力的な者が現れたらカレリオは捨てられた。そのカズハさえ、ワシというおかしなものに執着して捨てた。そういう取捨選択を責める訳ではない。若さ、人生いろいろな事があっての選択だっただろう。
だから、ワシを最後まで選ぶ事などないだろう。ワシは殿下の邪魔はもうしたくない。だが邪魔したい奴は他にいる。あいつだ、トレヴァー・ファルマン!ワシ、まだ恨んでおるぞ!どうしてやろうか……!
「バンドール、よもやであるなあ!」
「む……ヒルデン!レイモンド・ヒルデンか!」
「確かにその顔、学園時代の若かったお主の顔よ!はは、あの頃はようモテたものじゃが、今ほど大物は引っ掛けられなんだな!上手くやりおったのう」
「馬鹿を言うな、ヒルデン。これは殿下のお遊びじゃよ」
ワシが座っている席の向かい側にやってきたのはレイモンド・ヒルデン前伯爵。学園時代の同期であり、友人の一人の元騎士団長だ。あまり頭の良い方ではなかったが、剣の腕は立つ男で話も合う。
「お遊びにしては相当お熱のようじゃが?お前も満更ではないのではないか?」
「馬鹿も休み休み言えっ!」
この野郎、他人事だと思ってニヤニヤ笑っていやがる!
「ほぉら、殿下がいやーな目でこっちを睨んでおるわい。おー怖いのう!」
確かに殿下がトレヴァーとの打ち合いの合間にこっちをチラチラ見ているな……おやおや危ないですぞ?
「怖い?あの鬼のヒルデンが怖いなど!明日は空から何が降るか分かったものではないな!」
ワシは知っておるぞ、今でも騎士団の若いもんをボッコボコに打ちのめしておるじゃろう?お主ッ!しかしレイモンドは深くなった眉間の皺を更に深くしながら残念そうに呟く。
「……ワシとて寄る年波には勝てぬわ……。あのクソ小生意気なトレヴァー坊主に負けるなど……ああ、ワシもお主のように若くあればあの小坊主になど絶対に負けぬものをっ!」
そうじゃの……やはり筋力は衰えるし、持久力がどうしてもな……いや、待てよ。
「……そうか、若くあればあのトレヴァーの小坊主には負けぬか」
「負けるわけがなかろう?あの程度のレベルなどすぐに追い抜いて見せるわ。あの小坊主のレベルは高くとも技量はまだまだ。すぐにでもワシの足元に這いつくばらせてやる」
ほう!言うたな?レイモンド・ヒルデン。レイモンドは政治は今一つであったが、剣に関しては天才的じゃった。ならば……。
「お主も耳に挟んだことがあろうが、ワシはあの小坊主にちょっとばかり思うところがあってのう」
「おお。骨ボッキボキ事件じゃろ。後ろの護衛も災難であったな」
知ってたか。まあいい。
「リドリー、アレをヒルデンに」
「えーと……あっ!はいっ」
一瞬何のことか分からなかったようだが、すぐに察してがざがさとリドリーはいつも携帯している小さな鞄を漁り、ことりと小瓶を一つ出す。
「どうじゃ?ヒルデン。試してみんか?」
「ほう……これは、噂の……」
そう、ワシが殿下から頂いた小瓶と同じもの、若返りの秘薬だ。
「一切の責任は持たん。が、死ぬ事はなかろう?」
「ふ、試してみるか」
レイモンド・ヒルデンはいっそ清々しく、小瓶を一気に飲み干した。
「ぐぬぬ……」
あれから殿下の束縛(?)がちょっと緩くなった。思い出したくもない5日間の記憶の中でワシはまあ……そのなんじゃ可愛らしく「おねだり」などしたらしく、殿下がものすごくご機嫌なのだ。ああ、忘れたいっ!
「大体ですねー大旦那様。あんまりにもつれなさすぎなんですよー流石にちょっと可哀想じゃないですか。殿下はあんなに好き好き言ってるのに、ちーっとも返してあげないでしょう?」
ワシの後ろに立つリドリーはちょっと不機嫌そうな声をしている。顔を見なくても分かるぞ、ワシ責められておる。
「仕方がないじゃろ……。ワシにとって殿下はカレリオの婚約者だった方だ。孫みたいなもんじゃよ?そんな方に好きです、愛していますと言われても「はいはい分かりました」としか言えんじゃろう」
目の前のテーブルの上にあるお茶を少し。視線は修練場でトレヴァーと打ち合う殿下を見ている。
「はぁ。その辺りは殿下に同情しますね。ま、早めに諦めてイチャイチャした方が良いですよ。殿下はしつこいし、大旦那様の事を絶対手放さないと思います。あの人の秘薬を手に入れる時のしつこさと言ったら私でも引きましたからね」
「……人は変わるもんじゃよ、リドリー。ワシはもう殿下の邪魔はしたくないんじゃ」
「変わる……かなあ……?」
変わるさ、お小さい頃の殿下はそれはそれはカレリオと仲良くしておった。しかしカズハと言うカレリオより魅力的な者が現れたらカレリオは捨てられた。そのカズハさえ、ワシというおかしなものに執着して捨てた。そういう取捨選択を責める訳ではない。若さ、人生いろいろな事があっての選択だっただろう。
だから、ワシを最後まで選ぶ事などないだろう。ワシは殿下の邪魔はもうしたくない。だが邪魔したい奴は他にいる。あいつだ、トレヴァー・ファルマン!ワシ、まだ恨んでおるぞ!どうしてやろうか……!
「バンドール、よもやであるなあ!」
「む……ヒルデン!レイモンド・ヒルデンか!」
「確かにその顔、学園時代の若かったお主の顔よ!はは、あの頃はようモテたものじゃが、今ほど大物は引っ掛けられなんだな!上手くやりおったのう」
「馬鹿を言うな、ヒルデン。これは殿下のお遊びじゃよ」
ワシが座っている席の向かい側にやってきたのはレイモンド・ヒルデン前伯爵。学園時代の同期であり、友人の一人の元騎士団長だ。あまり頭の良い方ではなかったが、剣の腕は立つ男で話も合う。
「お遊びにしては相当お熱のようじゃが?お前も満更ではないのではないか?」
「馬鹿も休み休み言えっ!」
この野郎、他人事だと思ってニヤニヤ笑っていやがる!
「ほぉら、殿下がいやーな目でこっちを睨んでおるわい。おー怖いのう!」
確かに殿下がトレヴァーとの打ち合いの合間にこっちをチラチラ見ているな……おやおや危ないですぞ?
「怖い?あの鬼のヒルデンが怖いなど!明日は空から何が降るか分かったものではないな!」
ワシは知っておるぞ、今でも騎士団の若いもんをボッコボコに打ちのめしておるじゃろう?お主ッ!しかしレイモンドは深くなった眉間の皺を更に深くしながら残念そうに呟く。
「……ワシとて寄る年波には勝てぬわ……。あのクソ小生意気なトレヴァー坊主に負けるなど……ああ、ワシもお主のように若くあればあの小坊主になど絶対に負けぬものをっ!」
そうじゃの……やはり筋力は衰えるし、持久力がどうしてもな……いや、待てよ。
「……そうか、若くあればあのトレヴァーの小坊主には負けぬか」
「負けるわけがなかろう?あの程度のレベルなどすぐに追い抜いて見せるわ。あの小坊主のレベルは高くとも技量はまだまだ。すぐにでもワシの足元に這いつくばらせてやる」
ほう!言うたな?レイモンド・ヒルデン。レイモンドは政治は今一つであったが、剣に関しては天才的じゃった。ならば……。
「お主も耳に挟んだことがあろうが、ワシはあの小坊主にちょっとばかり思うところがあってのう」
「おお。骨ボッキボキ事件じゃろ。後ろの護衛も災難であったな」
知ってたか。まあいい。
「リドリー、アレをヒルデンに」
「えーと……あっ!はいっ」
一瞬何のことか分からなかったようだが、すぐに察してがざがさとリドリーはいつも携帯している小さな鞄を漁り、ことりと小瓶を一つ出す。
「どうじゃ?ヒルデン。試してみんか?」
「ほう……これは、噂の……」
そう、ワシが殿下から頂いた小瓶と同じもの、若返りの秘薬だ。
「一切の責任は持たん。が、死ぬ事はなかろう?」
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レイモンド・ヒルデンはいっそ清々しく、小瓶を一気に飲み干した。
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